短編詰め合わせ

翔太の部屋で過ごしている時に、スマホが鳴る。

💙「また行くのかよ」

ソファから不機嫌な声がした。

最近、後輩から恋愛相談でよく呼び出される。

だんだんと頻度が増えてきて、最初は『行って来い』と送り出していた翔太も最近は呼び出しの多さに辟易している様子だ。

ただ、俺が普段からよく面倒をみている子だと知っているし、俺が頼られるのは仕方ないと想っている部分もあるようで渋々ながら送り出してくれていた。

だが、今日は様子が少し違った。

💙「行くの」

💛「え？」

💙「行くのかって」

確認されるなんて思っていなくて、思わず聞き返す。

💛「ごめんな、すぐ戻るから」

💙「…知らん」

そんな気分なんだろうかとブランケットを被った翔太を撫でると払いのけられ、そのまま頭まで被って大福になってしまった。

💛「あんまり呼ぶなって言ってくるから」

と声をかけたけど、返事はなかった。

散々な思いで帰路に着く。

失恋したらしい後輩はすごいペースで飲んだ挙げ句『本当に好きなのは岩本くんだったって気付いちゃって』と泣きながら告白され、1回でいいから抱いてくれと迫られた。

断ったけど酔っているからしつこくて、タクシーに乗せるまで大騒ぎだった。

翔太のもとに戻り、大福の中身を確認すると目元と鼻の頭を赤くして泣き疲れたかのように眠っていた。

💛「ただいま」

💙「ん……」

目を開けて俺を確認すると、仏頂面になり、またブランケットをかぶろうとした。

💛「ごめんな、もう二度と行かないから」

そう告げると、翔太は大福のまま

💙「今日、行かないで欲しかった」

なんて言う。

なんで？と聞けば、『なんかイヤだった』と返ってくる。

💛「そっか、行かなかったら良かったな。でも、もう本当に行かないから」

💙「ん……」

どうやら、この大福は野生の勘を持っているらしい。

同時に、いつもと違うなと思いながら結局放ったらかしてしまった事を反省した。

終