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ライラ からぴち・シクフォニ♡
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「……たまにはええでしょ? いっつも独り占めしてるんやから」「はあ? 俺、彼氏だし当たり前でしょ。それより、彼氏の前でイチャつくあんたらもどうかと思うけど?!」
「……まぁまぁ」
本当に嬉しそうな顔をして、止める気なんてさらさらないいつきくんの「まぁまぁ」で我に返る。そうや、日曜はこいつがおらんから、もっともっとイチャイチャできるんや……!
「じゃあ、また行きたい店の詳細も送るし、なんならその後のデートコースも考えとくわ」
横で何か言いたげな「狐」を無視して、いつきくんに手を振る。
あー、もう最高!いつきくんとは、 りゅうせいくんと3人で買い物に行ったことはあるけど、それ以外はフットサルかバイト先に遊びに行くくらいしかなかった。
何着て行こう。いつきくんの服装を聞いて、なんちゃってペアルックにするのもええかも……!
♢♢♢
……なんて、幸せな想像で頭がいっぱいやったのが木曜日の話。
はぁ? なんなんこれ。こんな展開、予想もしてへんかった。
「あ、これ、似合いそう。いいかも」
「これ? じゃあ、お揃いにする? ゆうたも似合いそう」
カフェの後に入った服屋で繰り広げられるのは、いつきくんとゆうたの公然イチャイチャ。
……なんですか、これは。公開処刑ですか? 鏡を見るまでもない。今の自分の顔、誰にも見せられたもんやない。
「ねぇしゅうと、これ、どう思う?」
鏡越しにゆうたに話しかけられて、思わず視線を逸らした。あかん、嫉妬してるのがバレてまう。
「……いつきくんに聞いたらええんちゃう?」
「ん? いいと思うよ。よく似合ってる」
いつきくんもいつきくんや。あの狐がおらんからって、そんな蕩けるような笑顔で。帰ったらあいつに全部言いつけてやる。一生喧嘩でもしてればいい。
「……じゃあ、俺帰るわ。あとはお二人でゆっくりどうぞ」
いたたまれなくなって店を出た俺に、ゆうたの声が追いかけてくる。
「え、待って。俺もバイトだから、もう帰る」
「……え?」
そんなん聞いてない。何時に終わるかわからんこんな日に、なんでピンポイントでバイトなんか入れるん?
「……そう? じゃあ、俺もいっちゃん待ってるから」
おいおい、いつきくんまで用事あり?
なんや。俺、こんな忙しい日に無理やり二人を連れ回して、迷惑かけてただけなんか。
楽しみにしてたの、俺だけやったんか。
「……じゃっ」
謝ろうかと思ったけれど、やめた。言葉にした瞬間に、喉の奥に溜まったものが溢れてしまいそうやったから。
できるだけ早足で、その場から逃げ出す。
……なんや、結局俺は一人やんか。
入学式の日から、何も変わってへん。ずっと、ずっとひとりぼっち。
明日からまた、ヘッドホンを深く被って世界を閉ざそう。
あと数ヶ月やしこの寂しさも、全部まとめて我慢できる。もう我慢するしかないんや。
「しゅうちゃんおはよう。日曜、なんで俺っちにも声かけてくれなかったの?」
家に帰ってから、一晩中ゆっくり考えた。
あれはきっと「狐」の策略に違いない。いつきくんに『俺と仲良くしたらブチ殺す』とか『後でゆうたに聞くからな』とか、何か汚い手を使って脅したに違いない。
「ん? 忘れててん。楽しみすぎて、そんなこと浮かびもせんかった」
「しゅうちゃあん!」
大袈裟に泣きついてこようとするりゅうせいくんをひらりとかわし、自分の席に座る。
さあ、どうしようか。きっといつきくんは、もうすぐあの狐と現れる。とりあえず狐を睨みつけて、喧嘩でも売られたら、チャームポイントの関西弁で捲し立ててビビらせたろか。
「おはよ、しゅうと」
「おう、しゅうと。日曜は楽しかったか?」
神様の声がしたかと思えば、斜め後ろから狐がニヤニヤとこちらを見下ろしていた。
マジで、こいつ。今度の試合、わざと顔面にボールぶち当てたるからな。というか、お前いつから呼び捨てになってん。
「……おかげさまで。終始いつきくんとイチャイチャでしたわ」
「……そう。そりゃ楽しそうでなにより」
不敵に笑う狐の横で、いつきくんが目に見えて動揺し始めた。
「え、いや、そんな……してないよね? しゅうと? 俺たち、普通に友達として接してたよね?」
この焦りよう。俺の予想は的中やな。
「俺と、やなくて。ゆうたといつきくん、見てて腹立つくらいイッチャイチャしてたで? 俺のことなんか見えてへんかったみたいやし。俺が帰った後、二人でホテルでも行ったんちゃうかな?」
「はあ!? 何言ってんの!? しゅうと、何言ってんの!?」
いつきくん、よくそんなことが言えるな。何が『友達として接してた』や。
俺とほとんど目も合わせず、ゆうたにべったり。二人でお揃いの服を選んで笑い合って……。俺がいつきくんを好きなこと知ってるくせに、友達以下の扱いをしたんはどっちや。
隣で、狐も絶句している。ざまぁみろ。俺の味わった惨めな気持ち、少しは理解すればええねん。
「わぁ、しゅうちゃん修羅場作っちゃったじゃん。悪いこぉ」
りゅうせいくん、そんな爽やかな笑顔でこっちを見んといて。
自分でもわかってる。嫉妬して八つ当たりして、最低なことをやってしまったのは。
でも、許せへんねん。俺の気持ちを知っててデートの誘いを受けたのに、結局は狐の言いなりになって、俺を透明人間みたいに扱ったって事が。
「……なんで?」
低く、絞り出すような声がした。
やから、お前のせいやろ、お前が。
「俺、しゅうとに優しくしてやれって言ったじゃん! 自分の気持ち押さえて友達続けるなんて、苦しいに決まってんのに……! さらに傷増やしてどうすんだよ!」
「ごめ、いっちゃん、ちがっ……」
……は?
なんやこれ。俺が思ってた修羅場と、全然違う。
なんなん? 何言うてんの?
狐は、俺の敵やなかったん……?