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💚🩷パロ
この作品はnmmn二大禁です
登場する人物や場所など全てフィクションであり、実在する方々や団体などと一切関係しておりません。
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年齢操作有
片方人外
全年齢
あべさく
ルールを守って楽しんで頂けると嬉しいです。
side 💚
秋の夕方。紅葉が漂う小さな公園で、本を読んでいた。
田舎の学校で、今年で小学四年生になった俺……阿部亮平は、新しいクラスや教師と上手く馴染んだ。
とはいえ教室よりも図書室の方が、俺は好きだ。ずいぶん静かだけど、外を見れば色鮮やかな景色が俺を出迎えてくれる。 ……そんな図書室から借りた本が、風でブワッと飛ばされた。
「っあ、待って……!」
借り物な為、無くしてはいけない。
ページがパラパラと踊り舞うように、本は風に飛ばされていく。
本の質量ですぐに地面に落ちると思っていたのに、何処からか飛び出してきた白猫が本を咥えてどこかへ走っていく。
「!!」
「ニャア……」
猫は俺から逃げるように本を咥えて逃走していく。
急いで追いかけるが、普段本ばかり読んでいる俺に猫ほどの体力は毛頭ない。
猫が行く先は人の気がない神社で、阿部も足を踏み入れたことはなかった。
知らない所に一人で行くのは怖いが、本がある為仕方ない。そう思い、阿部は恐る恐る敷地内の階段を上り始めた。
「はあ、はあっ…っは…あー……疲れた……」
ようやっと長い階段を登り追えると、そこには先程の白猫はいなく、ぽつんと地面に借り物の本が置いてあった。
急いで走り、本を拾う。
かなりぼろぼろになってしまったが……まあ、土などを払い落とせばいいだろう。
空を見上げると、さっきよりも深い赤が俺を凝視しているようだった。
「……早く帰ろ」
振り返り、登ってきた階段を降りようとする。
ガサッ…
「…っ猫?」
すると先程の白猫が、草むらから阿部の足元にするりとやってきた。ンナァ、と鳴くその姿はまるで、阿部に帰るなと言っているようだった。
屈んで、不器用に猫の頭を撫でる。
「どうしたの?おまえ、さっきは本を盗んでいったのに」
ふる、と首を傾げる白猫。
白猫は阿部の足元から離れ、少ししたところで「ナァ」と鳴いて歩いていった。
「え、どこいくの?そんな暗いところに行っちゃ危ないでしょっ…」
一匹で暗闇へと消えていく白猫が心配で、思わず奥へ奥へと白猫を追う。
…シャン…シャン……
どこからともなく、遠い鈴の音が聞こえてくる。
「…え」
一際大きい鈴が鳴った後、白猫を追いかけた少年は、その場から忽然と姿を消した。
「……あれぇ、なんでここに人間が……」
誰かの独り言で目が覚める。
意識が起きてすぐに木の匂いがしたから、ここが木造建築の建物の中だと分かる。
「…ぅ……こ、こは…」
「あっ起きた?おはよう!」
「……えっ?!…だ、誰?」
ばっと声の主を見ると、そこに居たのは、まるでこの世にある美を体現したかのような、とても綺麗な人だった。本当に、綺麗で──
しかし人と言ったけれど、人ではないオーラを感じる。そう、まるで……
「…かみ、さま?……綺麗だ」
「おお!正解、よくわかったね!俺は猫の神様なんだよ!綺麗でしょ、ふふ」
「ああ……いや、神様がなんでここに…?っていうか、俺本を拾いに来ただけでっ……」
戸惑いが隠せない俺に、綺麗な”神様”はいつの間にか出した自身のしっぽをゆらゆらと動かした。
「まあまあ、落ち着いてよ。それより、自己紹介しない?」
「自己、紹介……」
「そう!俺の名前は……そうだなぁ、サクマとでも呼んでよ」
「…サクマ?」
「そうそう!気軽に呼んでね。で、君の名前は?」
「あ、えっと……」
つられて名前を言おうとした瞬間、以前読んだ小説に、神様に名前を言ってはいけないと書いてあったことを思い出す。確か理由は、連れ去られてしまうから。
「…え、っと……」
「もしかして、神様に名前を言うのは…とか考えてる?」
「えっ。あ、はい」
「安心してよ、そういうのは作り物の中だけの話だから。まあでも言いたくないならいいよ」
「あ……はい…」
そうなのか。本に書いてあるものが絶対真実ではないのか……。
思いもよらないタイミングで、少し衝撃を覚える。しかしそれよりも気になることがある。
「俺、帰りたいんですけど」
「ああそっか、君人間だもんね!っていうか、どうやってここ来たの?」
「えっと……神社で白猫を追いかけてたら、いつの間にか…」
「あぁー……確かに、今日珍しく夕方誰かが入ってきた感覚がしたんだよなあ。あれは君か!」
「多分、そうです……?」
一体何の話をしているのか俺には想像がつかないが、さっき俺しか神社にはいなかったからきっと合っているだろう。
サクマはご機嫌な様子で、今もしっぽを揺らしている……と思ったら、しっぽが二本に増えていた。
「しっぽ……」
「ああこれ?俺、猫の神様だからさ!増やせちゃうんだよねぇ」
「もふもふそう……」
「でしょでしょ?触ってもいいよ!」
「えっ、ほんと?」
「ほんとほんと!どうぞ?」
なんてことだ、神様のしっぽを触れるなんて……
阿部は好奇心に負け、ちょんちょんと遠慮気味に触った後、思い切って両手でしっぽを包んだ。
「んふ〜、触り方いいねえ」
「めっちゃもふもふ…すご……」
「君にも生やせるよ?」
「えっ、ほんと?」
キラキラと目を輝かせる阿部。
それを見てサクマは、残念そうな顔で告げた。
「んーでも、俺信仰がぜぇんぜんないからさ。今は無理!」
「ええ……じゃあ、どうすればいいの?」
「君が毎日ここに来てくれたら、俺の信仰も満たされるよ〜」
「そうなの?」
「そうなの!」
いつの間にか、サクマに毎日会えるのも嬉しかった。
本当に綺麗で可愛くて、きっと男の神様……なんだろうけど、声も体つきも、小四の俺が分かるぐらいには中性的なのだ。
「……なら、毎日会いに行く」
「えっほんとぉ?嬉しいなぁ。でもそれはおすすめしないよ」
「なんで?」
「次君がここに来ちゃったら、俺が君を貰っちゃうから」
「……?」
よく分からなかったが、サクマ曰く、「信仰が足りない俺が君と多く絡んだら、本能で君のことを奪っちゃうから」らしい……
「じゃあもう会えないの?」
「うん、会えない。でも大丈夫、俺は君のこと忘れないよ」
「……分かった。俺もサクマのこと忘れない」
「……うん。じゃあ、ばいばい!もう来るなよ!」
「またね」
サクマは俺の目に手をかざして、にゃあと鳴いた。
目が覚めると俺は、誰もいない夜の神社に本を抱えて倒れてた。
神社の本殿を見る。人の気配がまるでしない。白猫もいないし、中にはサクマのサの字もなかった。
「……夢だったのかな」
到底夢とは思えないほど、リアルだった。
春。小学五年生になる頃には、俺はあの時のことをすっかり忘れていた。否、思い出せなくなった。
……でも、一つだけどうしても覚えていたことがあった。
『ばいばい!もう来るなよ!』
「…誰に、言われたんだっけな」
その声だけがずっと、俺の脳にこびりついていた。声の主の姿も、どんな場所だったのかも、全部全部思い出せないのに。
ただどうしても、その声が優しくて、好きでたまらなかった。
ある意味モヤモヤだった。しかしそんなのは知らないと言うように、俺は中学にあがり、高校にあがり……まるでその声を無視するように、人生を送っていた。
──11年後。22歳になった俺は、上京して大学に通っていた。
新年のため実家に帰ろうと懐かしい道を歩いている。すると、見覚えのある階段があった。
「……ここ…」
瞬間、あの声が頭の中で響く。
“ばいばい!もう来るなよ!”
いつか俺にそう言った誰かが、階段を登った先にいる気がして。
昔寄りもしなかった神社に、俺は 初めて 足を踏み入れた。
長い長い階段を登り終え、膝に手をついて呼吸をする。
「こんな長かったんだ、ここの階段……」
きょろきょろと辺りを見渡すも、周りに阿部以外の人はいない。
「普段直感で動くことないのに……はあ、降りよ…」
時間の無駄になってしまった感。諦めて降りようとしたところに、にゃあと白猫が草むらから出てきた。
「……あれ?お前どこかで見たこと……」
走っていく白猫を、衝動で追いかけた。
side 🩷
ピクッ
久しぶりに、頭の耳がビクつく。
「っ誰?なんか近づいて……って、あの子!?」
──11年前、知らない少年が俺の家に入ってきたことがあった。何も知らないようだったし、すこーし遊んだ後すぐに帰らせたのだ。
あの時の俺は信仰に飢えていて、早くあの子を帰らせないと、すぐにあの子を隠してしまいそうだったから。
「まあ信仰に飢えてるのは今もだけど……って違う!なんであの子今になってここ来てんの!?」
あの子の俺に関しての記憶は根こそぎ眠らせたはずだ。あの時の俺が頑張って理性を保って、守ったはずなのに。
「なのになんで、ここに……」
あの時の俺の気配はあの子についている。 次に会ったらきっと、俺を思い出してしまうだろう……信仰が足りない神の力は弱いのだ。
「いっいやでも、俺が名前さえ聞かなければ大丈夫」
昔あの子には、嘘をついた。
神に名前を言ったら駄目なのは作り物の中だけの設定だ、と。 しかしそんなものは真っ赤な嘘で、実際に俺があの子の名前……真名を知ってしまったら、俺はあの子を好き放題できてしまうのだ。
だからこそ、俺はあの時まずあの子の名前を聞き出そうとした。どうしても、人が恋しくて。俺の物になって欲しくて。
「何とか堪えて、あん時は俺偉かったなぁ……」
長話をしたが、実際はこんなことを言っている場合ではない。まじで、なんでまた俺の家に来てんの!?
あっやばい。この音は……此処に誰かが来た時の音だ。現代風に言うと、インターホン…的な。
急いで振り返ると、すぐそこに、成長したあの子が眠っていた。
昔もかわいいと思っていたけど、随分と顔整いに育ったなぁ。サクマさん嬉しい。
「時すでに遅し、ってことね……」
昔と同じ場所で、俺と出会う。そんな事になったらいよいよ記憶が戻る。この子には、普通の人生を歩んで欲しいのに。
……せめて、俺は庭に出ていよう。その後、この子がどんな行動をするかによって、俺がどうするべきか決まる。
「……ん”…」
あっ起きた!あの子が起きた、頼む〜庭には来るな!
「……ここ、やっぱり…見覚えが……ある」
うっそ、見覚えあるレベルなの?この子記憶力良すぎじゃない?てか俺の封印が弱すぎるだけか……
「白猫はどこに…外かな」
あーまずい。まずいまずいまずい!サクマさんびっくり!!ドンピシャで庭に来る気だ!!
ギシッ…
「!誰かいるんですか?」
「やっべ……」
普通に木の音を立ててしまった。俺のバカ!
ついにあの子と、顔を合わせてしまった。急いでしっぽや耳はしまったけれど、バレてないだろうか?
「……」
「…や、やあ……こんにちは!」
「……サクマ」
「っ……」
やっぱり、思い出しちゃった。
思い出したところで、なにか分かりやすいほどの弊害がすぐにあるかと聞かれればそうではない。
ただ、思い出してしまったら……もうこの子は、神様に認知された子になるのだ。そうなると……遅かれ早かれ、普通じゃいられなくなる。
諦めて、頑張ってしまっていた耳やしっぽを出す。こんな時でもゆらゆらと揺れる俺のしっぽに、我ながら苛立った。
「思い、出しちゃった?」
「……”ばいばい、もう来るなよ”って言ったのは…サクマだったんだね」
「その言葉、覚えてたの?」
「うん。その言葉だけが、ずっと俺の中に残ってた」
「そ、っかぁ……」
この子の声音はなんだか嬉しそうで、複雑な気持ちになる。お前が思い出しちゃったら、俺はもうどうしようもできないんだ。
「ねえ、サクマ」
「……なに?」
「俺の名前。言ってなかったよね 」
「!!それだけはやめて!」
「なんで?言っても問題ないんじゃなかったの?」
「あれは嘘だったの、俺の醜い嘘だったの!だから、言わないで。俺の名前覚えてもらえるだけで、いいから」
君を守るためなの、俺が君をどうかしちゃわないためなの。わかってほしいんだ。
「……サクマ、こっち見て」
「なに?名前は教えないで、ね……」
君を見た瞬間、視界が暗くなって、すぐに感覚がしたのは唇。
フルっとしっぽが震えて、たった一瞬の接吻なのに、感覚が抜けなくて。
「……ぁ、いま…なにして…」
「俺の名前。阿部亮平って言います」
ドクンと、胸が高鳴る。
「……あべ、りょうへい」
「そう。ふふ、教えちゃったね」
「……ばかじゃん…!神様相手に接吻して、名前まで、教えちゃって…!」
「ねえ、サクマ」
「……なに」
ぶっきらぼうに答える。すると君……阿部は、俺の目を見て、照れた笑いでこう言った。
「俺を貰ってくれますか」
この子は……昔俺に出会った時から俺に魅入ってしまったのだろう。そして奇しくも、俺もこの子に魅入ってしまった。
「……いいよ」
「…!本当に?」
「ほんと。でも……俺、お前のこと離せなくなる」
「いいよ、俺はサクマから離れていかない」
「俺のこと忘れない?」
「うん。二度と忘れない」
俺の問いに力強く答える、俺より身長が高くなってしまった君。
優しい目で見つめられて、優しい声音で真っ直ぐに喋る君を……俺はもう、手放せる気がしない。
「言ったからな。絶対、俺から離れないでよ」
「離れないよ、サクマ」
──終わり。
💚「俺を貰ってくれますか」
10歳の時にサクマと出会う。魂がサクマに惚れ込んでた為、サクマの最後の一言だけを覚えていた。
大学生 になってサクマと再会し、サクマが施した記憶の封印を自力で解く。
サクマが好き。
🩷「絶対、俺から離れないでよ」
12年前に少年の阿部と出会う。この子は幸せになって欲しいと思い、阿部に自分に関する記憶の封印を施したけど、信仰が足りなくて封印し切れなかった。
阿部には普通の幸せを掴んで欲しかったけど、真名教えられちゃったら流石に我慢できず。
阿部に本気で惚れ込むまで後……