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如縣 遼太
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千導 渉
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千導 渉
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11月7日、早朝。松田陣平は自宅の机に突っ伏していた。どうやら寝落ちしてしまったらしい。少し肩が重い気がする。
机の上には、携帯電話、写真立て、ドライバー、ボールペン、サングラス⋯。
不意に携帯電話の画面が光った。一瞬、萩原かと頭をよぎった。そんなわけはない。萩は⋯萩は4年前に爆発しちまったんだ。自嘲気味な笑みを浮かべ、スマホの通知を確認する。
「⋯佐藤からか。」
メッセージの内容を簡潔にまとめると、今日の仕事内容だった。
短く返信した松田は、周りを見渡した。
カレンダー、11月7日。
今日は萩原の命日だ。改めて松田は自覚した。4年前。鼻を掠めた火薬と硝煙の匂い。遠くからでも感じる熱。爆発するビル。あの時、萩は「仇を取ってくれ」と言った。俺はまだその約束を果たせていない。
壁に貼られた数枚の写真。小学生の卒業式の、スーツを着て照れ顔の松田といじる萩原。港南高校の文化祭で、ふざけたメイド服を完璧に着こなした萩原と、ウサギの着ぐるみを着せられた松田の2ショット。花火大会で、千速の隣でカッコつける松田と、微笑ましく見ている萩原。そして、警察学校の卒業式の、笑顔の同期たち。爆処に入った初日の、初々しい綺麗な制服の2人の写真。
どんなにくだらなくても、全てが懐かしい思い出だった。俺の隣にはいつも萩原がいて、いつも笑っていて。
⋯⋯なのに、急にいなくなるなんて。
松田はいつも通りに顔を洗い、着替え、朝食を食べて警視庁に向かった。
俺は今、杯戸ショッピングモール上の観覧車、72番のゴンドラに乗っている。
遊びに来たのではない。爆弾解体に来たのだ。
この爆弾は何型か。どう解体すればいいか。爆弾を観察する。
その時。
松田陣平の目に、爆弾の液晶に流れるメッセージが目に入った。
「爆発、3秒前に次のありかのヒントが⋯?」
サングラス越しの松田の目が、大きく見開かれた。
俺が今ここでこの爆弾を解体して生還したら、次の爆弾の場所がわからない。
でも、解体せずにヒントが出るまで待ったら⋯、大勢の命が救える。
なら、俺が選ぶべきは。いや、“あいつ”ならきっと。
選ぶ道は、もう決まっていた。
佐藤への電話を終えて、不意に煙草が吸いたくなった。
煙草を取り出し、火をつける。萩もよく、吸ってたよな。
直後、「禁煙」という看板が目に入ったが、無視をする。今日ぐらい。
「ハッ、今日くらい、多めに見てくれよな⋯」
誰に向けたわけでもない、独り言だった。その言葉は誰の耳に届くこともなく、たちまち風に流され、空へ溶けていく。
萩原がいたら、笑い飛ばして止めてくれただろうか。
考えても意味はない。
松田は空を仰いだ。雲ひとつない快晴で、皮肉なほどに晴れている。お出かけ日和、と言うものか。
⋯萩原。
松田は、刻一刻と減っていく爆弾のタイマーが見えていないかのようにリラックスしている。
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ピッ、ピッ、ピ。スマホの操作音。送信。
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「悪いな萩原、どうやらお前との約束は⋯」
果たせなかったみたいだ。
大きな爆発音が響く。灼熱が体を貫く。
光の先に、泣いている萩原が見えた気がした。
コメント
4件
切なすぎる… 最高… わたし、ほんとに「今日くらい多めに見てくれよな」の、あの表情が大好きで…!! 読んだ瞬間死にました、はい わたしも松田陣平という尊き爆弾に爆破され今日が命日になりました(? あとフォロー失礼!
うわっ…11月7日…松田さんの話か。映画で何度も見た光景だけど、こうやってじっくり心情を描かれるとまた違うな。寝落ちしてる朝の机の上の品々とか、写真立ての中の思い出の走馬灯とか、彼の人生の重みがぎゅっと詰まってる感じがした。「あいつならきっと」って考えるところ、松田さんらしい選択だよな…ラスト、光の先に泣いてる萩原が見えたってところで泣きそうになったわ。本当にお疲れ様でした、松田さん。素敵な作品をありがとうございます!