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24話 「情報屋の影」
路地裏で手に入れた銀色の布を握りしめ、俺たちは表通りへ戻った。
このまま闇雲に探しても、檻の行き先なんて見つからない。
「……情報を買おう」
「買う?」とミリアが首を傾げる。
「王都には何でも知ってる“耳”がいる。金さえ払えば、衛兵より早く動く」
俺たちが向かったのは、王都南区の酒場《赤獅子》。
昼間は普通の飲み屋だが、夜になると裏社会の情報屋が顔を出す。
奥の席に腰を下ろすと、しばらくして黒いベストを着た男がやってきた。
痩せた体に油断のない目つき――間違いなく情報屋だ。
「……珍しい顔だな。冒険者がこんな時間に何の用だ?」
俺は銀色の布を卓上に置く。
「これを持っていた連中の行き先を知りたい。黒外套、荷車、檻付きだ」
男は布を手に取り、光にかざす。
「ふむ……高級品だな。普通の奴隷じゃねぇ」
彼は声を潜めて続ける。
「噂だが、近く“特別市”が開かれるらしい。場所はまだ不明だが、買い手は貴族筋だ」
ミリアが小さく息を呑む。
「……つまり、あの子はそこに出される」
「確証はねぇ。ただ、そう遠くはない日だろうな」
男はそう言って立ち上がった。
「詳しい場所が分かったら知らせてやる。ただし、安くはないぞ」
取引を終え、店を出た俺たちは夜の風を浴びる。
「どうする?」ミリアが尋ねる。
「待つしかない。だが、こっちも動ける準備はしておく」
その帰り道――
俺たちの背後で、何者かの足音がぴたりと止まった。
振り向いた瞬間、暗がりから短剣が飛んでくる。
「下がれ!」俺は刃を弾き返す。
襲ってきたのは二人組の男。顔を布で覆い、無言で迫ってくる。
短いが鋭い斬り合いが続く。ミリアが一人を蹴り倒し、もう一人は俺が柄で顎を打って沈めた。
奴らの懐から見つかったのは、銀色の糸が描かれた紋章入りの紙片。
「……これは?」
「恐らく、あの布と同じ出所だな」俺は紙を握りしめた。
裏通りの闇が、少しずつ形を現し始めている。