TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

25話 「特別市への招待」


三日後の昼、俺たちは依頼帰りに《赤獅子》へ立ち寄った。

入口をくぐると、カウンターの奥で例の情報屋が手招きしている。

「来たか。例の件、場所がわかった」

男は小さな封筒を俺に滑らせる。

開くと、そこには地図と、奇妙な紋章入りの招待状が入っていた。


「明日の夜、王都の北外れの廃倉庫。表向きは貴族向けの骨董市だが、奥で“別口”をやってる」

情報屋は声を潜め、唇の端を吊り上げる。

「招待状があれば中には入れる。ただし、買い手としてだ」


ミリアが腕を組み、眉をひそめる。

「……つまり、私たちが“客”を装って潜り込むってことね」

「そういうこった。武器は隠せ。見つかれば即追放だ」


俺たちは酒場を出て、北区の宿へ戻った。

夕食の席で、ルーラが静かに聞いてくる。

「……明日、危ないことをするの?」

俺は笑ってごまかした。

「ただの見学だよ。ちょっと珍しい市があってな」

だが、彼女の視線は何かを見透かすように鋭かった。


翌日――

夜の王都は霧が濃く、灯りがぼんやりと滲んでいる。

俺とミリアは質素な外套を羽織り、隠し武器を身に着けて北区へ向かった。


廃倉庫の前には、馬車や豪奢な衣装の商人が集まっていた。

招待状を門番に渡すと、何の確認もなく中へ通される。

内部は仮設の照明と絨毯で飾られ、骨董品や宝飾品が並ぶ“表”の市が広がっていた。

だが、奥の幕の向こうからは、低いざわめきと金属の軋む音が聞こえる。


「……あっちが本命ね」ミリアが囁く。

俺たちは骨董を眺めるふりをしながら、幕の裏へ足を踏み入れた。


そこは小さな競売場だった。

檻や台座に並べられたのは――魔獣、希少素材、そして人。

貴族たちが値を叫び、札を上げる。

その光景に、背筋が冷たくなる。


やがて、司会役の男が声を張り上げた。

「お待ちかね! 本日の目玉――“銀月の娘”だ!」

奥から引き出される檻の中、鎖に繋がれた少女が座っていた。

月明かりを思わせる銀髪、怯えと反抗を同時に宿した瞳――昼間見たあの子だ。


ミリアが拳を握りしめる。

「……やっぱり」

俺は深く息を吸い、作戦を巡らせた。

ここで正面から戦えば、周囲の全員を敵に回す。

だが――

放って帰れるはずがない。



『世界最強だけど昼寝がしたい』

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

30

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚