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「玉緑様~、これお願いしますね~!」と後宮管理人の部屋から元気な声が聞こえてくる。
後宮管理人の玉緑は頭を抱える。先程部下の仙が木簡を持って来たと思ったら後宮妃についての問題だった。木簡を見て玉緑は木簡を睨む。
「、、、なんで仕事を増やすの、、妃達よ覚えておけ、、。」
「玉緑様、怖い顔しないでくださいね。」と背後から現れたのは月色だ。声は男の様に少し低いが女の子という雰囲気が安息香の少し甘く落ち着く匂いからはっきりとわかる。
「すみませんでした。」と玉緑は営業笑顔をして言う。
(私も使おうかな安息香。)
そういう此処は後宮だ。後宮は美しい牡丹のような女子が「うふふ。」と笑い合う場所ではない。月色なんていつも営業笑顔だから裏でどう思われているかなんてわからない。だが、その愛想の良さが意外と人気。もちろん此処は後宮だから女子と宦官しかいない。つまりは女子から人気のだ。
(女子同士が愛し合うなんて気が知れない、、。でも此処では皇帝のお通りがない妃は侍女や宦官などを愛人にしているんだよね、、。はっきり言って私は面倒くさい事になるからやめて欲しいけど。)
「、、疲れた。妃の所に行ってくる。」
玉緑は疲れた様子で立ち上がる。
「行ってらっしゃいませ~。」木簡の山を大事な内容かどうか見分けていた仙はどうやら居残るらしい。
「玉緑様、顔気をつけてくださいよ?」月色は玉緑の顔を覗く。
玉緑は1歩前に進む。月色に顔をじっと見られるのはなんだか心地悪かったからだ。
(美形な顔が怒ると怖いだろうな。)
玉緑はまだ月色の怒った顔を見た事がないが。
「わかっておりますよ。月色。」と後ろを振り返って笑顔を見せながら言った。仕事柄表情作りは得意分野なのだ。
「そうでしたね。」月色は微笑んだ。
・・・
貴妃の宮、紅玉宮
「失礼します。」玉緑と月色は紅玉宮の主──銀朱を見る。
銀朱はにこにこして「待ってました。」と声を弾ませた。
貴妃、銀朱は名のある家の当主の娘で現在、皇帝から寵愛を貰っている。少し茶色かかった髪と赤い目は当主の妻───銀朱の母が西の生まれだったからと言われている。貴妃とだけあって美しく賢い。愛想のある笑みをいつもして優しく接しているが相手の情報をよく調べる。その為、侍女は親戚が多い。多いと言っても、10人しかいなく、他の妃と比べて少ないのだが。
侍女が茶と菓子を持って来ると手を合わせて嬉しそうな表情で言った。
「今日は街で有名な月餅を取り寄せました。是非食べてください。」
銀朱妃がいい終えると毒見がひと切れ口に運ぶ。
(いつもこの時が何かと緊張する。きっと大丈夫だと思うけど。)
「大丈夫です。」毒見は毒見終えると後ろに下がった。
「では、頂きます。」玉緑は口に月餅を運ばせる。
(お、美味しい♡穀物と白餡がいい感じに組み合わさって美味しい♡)
「お口に合いましたか。」
「はい。穀物と白餡がお互いに美味しさを高め合う様な感じで美味しいです。」
「ふふ。喜んで貰えてよかったです。さて、最近は貴方の噂が此処で広まっているのですよ。気になります?」
銀朱妃は意地悪そうな笑みをしている。
(そちらが言い出した事だろうに。食えない妃だ。)
「気になります。」玉緑は営業笑顔をして応える。
「そうですよね。そして内容は”後宮管理人には秘密があってそれは政治的に影響を与える程の秘密があるらしい”という噂です。その噂が私は気になって仕方がないのです。まあ、噂程度ですけど。」
銀朱妃は言い疲れたのか茶を飲む。
(秘密、、。私が私でない事はいつ知られるのだろうか。)
「ところで銀朱妃は秘密の内容が気にならないのですか?」
(銀朱妃は先程、噂がと言ったが秘密の具体的な内容が普通気になるだろう。政治的にとなっては銀朱妃にも影響が出るかも、という心配があると思うが。)
「ふふ。私も此処にいる侍女達にも誰にだって秘密くらいありますよ。」と微笑んでいる。
「ね、侍女頭の肉紅。最近ぼ一っとしていて誰かの事を考えているものね。」
銀朱妃が横にいた侍女頭に向かって言うとだんだん侍女頭の顔が赤くなる。その初心な反応に銀朱妃は「うふふ。」と笑っている。
(いい性格だな。でもそれくらいの性格だから寵愛を受けられているのだろう。)
「銀朱妃、私はそろそろ部屋に戻ります。生憎、仕事が溜まっておりまして。」
「まあ!でもその仕事の半分以上は此処の事ですよね。ご迷惑おかけしてます。」困ったとでも言うような顔をする。
「いえ、滅相もありません。では失礼しました。」
「ああ、玉緑様良かったら残りの月餅を差し上げますがいかがなさいます?」
「せっかくなので貰います。」
「そういうことなら。肉紅、月餅を詰めてくれないかしら。」
「わかりました。」
侍女頭が手際よく月餅を包み箱に詰め込む。
「ありがとうございました。」
・・・
玉緑と月色が廊下を歩く。
「玉緑様、月餅食べれて良かったですね。」
「はい、良かったです。」
不意に月色は横を見る。
玉緑は月色が見ている方向を見る。
そこには女官達がこそこそと話していた。
「見て、あれ例の管理人だわ。」
「ええ、この前までは愛想いい優しい人だと思っていたけどまさか先帝の隠し子とはねえ。」
「うん、驚いたわあ。」
(先帝の隠し子か。まあ実際はそれに近いけど。でも噂好きが此処では多いな。)
「玉緑様、不敬罪として処刑されたいです。」
月色が珍しく怒りに満ちている。
(怖い。怖いからそこの女官達よ話を止めて!)
「月色、今は違うでしょう。」
「そうでしたね。すみませんでした。」
「いえ、さっさと徳妃の宮に行きましょう。」
(ここまでにしますね。)