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いやもうみんな、本人すぎない??
「……もうちょい詳しく聞かせてもらおうかな?」
ふっかさんにそう促されて、グラスを握りしめる。
(言うしかない……)
今ここで逃げたら、また同じことの繰り返しになる。
大きく息を吸い、震える声を押し殺しながら、ゆっくりと口を開いた。
「……俺が好きな人は……」
ふっかさんは静かに待ってくれている。
一度目を閉じ、そして、意を決して言った。
「……岩本くんなんです」
その瞬間、ふっかさんの箸がピタッと止まった。
「…………」
「…………」
沈黙。
じわじわと、ふっかさんの顔に動揺の色が広がっていく。
「え……え? えっ?」
「……はい」
「え、ちょ、待って、岩本くん!? え? 照!? えっ? えっ?」
「そんなに驚く?」
「いやいやいやいや!! だってめめ……えっ? マジ? いや、マジってことはわかるんだけど……えっ?」
ふっかさんは明らかに混乱して、手元のグラスを持ったり置いたり、箸を握ったり離したりしている。
その必死な様子があまりにも可笑しくて、思わず吹き出してしまった。
「ははっ……! なに、その反応……」
「いやいやいや!! いや、お前、さっきまでめっちゃ真剣な顔してたのに、いきなりそんな爆弾投げてくる!? 俺、心の準備できてなかったんだけど!?」
「ふっかさんが聞いてきたんじゃん……」
「聞いたけど!! いや、そりゃ聞いたけど!! まさか照とは思わねぇじゃん!!」
ふっかさんの動揺っぷりがあまりにもおかしくて、肩を震わせて笑い続ける。
さっきまでの緊張が嘘みたいに、心が軽くなっていた。
「……笑いすぎだろ、めめ……」
「だってふっかさんが面白いから……」
「俺は今、めちゃくちゃ焦ってんの!!」
「なんでそんなに焦るの?……」
「そりゃ焦るだろ!! だってお前、照だぞ!? リーダーだぞ!? えっ!? え、ちょ、どうしよ、これ、俺だけで抱えきれるかな……いや、無理かも……」
そう言って、ふっかさんは頭を抱えた。
「他の人に相談したほうがよかったんじゃない?」
「いや、ふっかさんに聞いてほしかったんですよ」
「それが一番の間違いだったかもしれない……!」
「ひどいなぁ……」
クスクスと笑いながら、またグラスを傾ける。
ふっかさんは大げさに頭を抱えつつも、少しずつ冷静になってきたようだった。
「……でも、まぁ……そっか。目黒、照 のこと……好きなんだな」
真面目な口調に変わった瞬間、心臓がまたぎゅっと締めつけられる。
「……はい」
「……そっか」
ふっかさんは、ふぅっと息を吐くと、優しい目で俺を見る。
「じゃあ……ちゃんと、聞くよ。お前の気持ち」