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ほのかの家の玄関先。制服に袖を通したほのかは、昨夜の光景が頭から離れない。
楓とーーむつるくんが……炎と光に包まれていた。
あれはーー絶対に夢なんかじゃない。
握りしめた手が震える。
「……ちゃんと、確かめなきゃ」
【登校途中・坂道】
登校中、偶然を装って楓に声をかけるほのか。
「おはよう、楓」
「……あ、ほのか。おはよう……」
楓はいつもより明らかに顔色が悪い。唇は血の気を失い、歩く足取りも少しふらついている。
「ちょっと……顔色、やばくない?」
「うん……ちょっとだけ、寝不足なだけ」
それでもほのかの問は止まらない。
「昨日……うちの前で見たの、あれ……楓と、むつるくんだよね?」
楓は驚いたように立ち止まり、口を開こうとする。
でもーー
「う、う……っ……!」
苦しげに腹を押え、しゃがみこむ楓。
顔が真っ青になり、次の瞬間ーー
「ーーっ、ごほ……っ!」
嘔吐音
制服のスカートの裾を必死に押さえながら、地面に膝をつく楓。
「楓っ!?待って、大丈夫……!?」
ほのかが慌てて駆け寄るが、その腕の中で楓は意識を手放し、ぐったりと倒れてしまった!
【保健室へ】
そこへ駆けつけたのはーーむつる。
「……っ、楓!」
楓の体を軽々と抱き上げる。
しかし、制服の内側から、赤黒い染みがにじみ出てくる。
「……まさか、昨日の傷が……まだ塞がってなかったのか」
むつるの腕に、楓の血がつき、シャツの脇腹から背中まで染まっていく。
それでも彼は、楓をしっかりと抱えて走り出す。
ほのかは、その光景をただ見つめていた。
【保健室】
小柄で優しげな女性教師が出迎える。保健室の先生、蒼月先生。
「どうしたの!?まぁ……また出たのね……」
むつるは黙ってうなずき、ベッドに楓を寝かせる
蒼月先生は処置をしながら、小さくつぶやく。
「紫藤先生……最近、無茶ばかり……」
(※彼女は密かに紫藤に想いを寄せてるらしい)
【数時間後︰保健室】
カーテン越しに柔らかな光が差し込む。
「……ん、う……」
楓がゆっくりと目を開ける。
その横でほのかが椅子に座って眠っていた
気配に気づき、ほのかは顔を上げた。
「楓っ……よかった、起きた……!」
しばらく沈黙が流れたあと、楓が口を開く。
「……聞かれてた、んだよね。昨日の……」
「うん。見たし、聞いた。……でも、信じたくなかった」
「隠してて、ごめん……」
「どうして……言ってくれなかったの……!」
泣きそうになるほのか。
楓は、それでも静かに答える。
「……だって、忍者だから。
言っちゃいけない、決まりだったから……」