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#工場長
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「さ、チェックインしましょうか」
ちえりさんに言われ、私たちは順番に荷物を預ける。
そのあと保安を通ってカフェで時間潰しをしたあと、搭乗した。
南紀白浜空港行きの飛行機は、少し離れた場所にあるのでバスに乗っての移動だ。
ケアンズに行った時のビジネスクラスは素晴らしかったけど、クラスJのシートでも十分だ。
クラスJは飛行機の前方にあり、前を向いて左側に二席、通路を挟んで右側に三席の配列で、合計二十席ある。
私と尊さんは左側に隣同士で座り、右側に将馬さんと百合さんとちえりさん、小牧さんと弥生さんと大地さんという組み合わせになった。
時間になってエンジンがかかり、私は何度乗ってもドキドキする飛行機に胸をときめかせる。
やがて滑走路まで移動した飛行機は、キュイーン……とプロペラの回転数を速め、進んでいく。
(きたきたきたー!)
グンッと後ろ向きにGがかかったかと思うと、飛行機はグングンと上昇していく。
(あばよ、東京)
私はしばらく眼下の景色を見ていたけれど、やがて高度が安定したあとミステリーの文庫本を読み始めた。
**
一時間少しのフライトで南紀白浜空港に着いた私は、「んーっ!」と伸びをする。
空港は数年前に、愛称が〝熊野白浜リゾート空港〟と決まったそうだ。
いわゆる、中部国際空港をセントレアと呼ぶあれだ。
空港は割とこぢんまりとしていて、二階に出発ロビーと待合、売店とレストランがあり、一階にあるカウンターはJALのみ。
到着ロビーや荷物受取所からは、ガラスを隔ててすぐ外が見えるコンパクトぶりだ。
空港を出たあとはハイヤーに乗り、空港の北側に池田湾があるのだけれど、その近くにある〝とれとれ市場〟に向かう事にした。
十分ほどで現地に着いたあと、まずはお腹が空いているので道路を挟んで向かいにある回転寿司屋さんに入った。
予約はできず、人気のあるお店だから少し待ったけれど、お盆休みとお昼のピークを超していたからか、比較的空いているように思えた。
四人席に分かれたあと、小牧さんがお茶を淹れてくれながら言う。
「さぁさぁ、選んで選んで! お兄ちゃんがご馳走してくれるから、遠慮しないでね。呉服屋さんの常務だから、がっぽり儲けてるわよ。はい、大トロ食べる人~!」
小牧さんが挙手を募るので、私はつい手を上げてしまう。
弥生さんと尊さんも食べるようで、弥生さんがさっそくタッチパネルを操作していた。
「知らない土地の回転寿司って、血湧き肉躍るわよね~」
「分かります!」
弥生さんの言葉に頷くと、無言で握手を求められ、がっしと手を握り合う。
彼女は手早くタッチパネルを操作して自分の分を注文したあと、「朱里さんどうぞ」と渡してくる。
「ありがとうございます」
受け取って少し迷っていると、尊さんが囁いてきた。
「俺が出すから遠慮なく喰え。未練を残すな」
「アイアイサー!」
安心した私は、次々に気になるお寿司をタッチしていき、一杯になると送信し、また次に取りかかる。
「迷いのない手つき、いいわぁ~。人間、食べてこそよ」
小牧さんがお茶を飲んで言い、私は急に恥ずかしくなってペコリと頭を下げる。
「すみません……。こう見えてわんぱくに食べるタイプでして……」
「全然よ~! マジで遠慮しないで! 飲食店を営んでる身としては、沢山食べてくれるお客様が一番輝いて見えるから」
「ありがとうございます~……」
お礼を言った私は、サーモンを全種類制覇するのは礼儀として、尊さんの胸を借りる気持ちで気後れしてしまう高級皿も、「えいっ」とカートに放り込む。
不思議と、いつもは目玉が飛び出るような値段のコース料理をご馳走してもらっているのに、回転寿司になると五百円近くするお皿を頼むのが申し訳なくなる。
「……朱里。ウニ軍艦遠慮してるだろ」
「うっ……」
私はギクリと身を強張らせる。
何せウニ様は千円近くするのだ。
「あとから『食べておけば良かった』って思うぐらいなら、遠慮するなよ。好きな女を腹一杯喰わせる甲斐性ぐらいあるんだから」
「……はい」
私は頷いてウニ様をカートに入れる。
それを聞き、小牧さんと弥生さんが「ひゅ~!」とはやし立てていた。
コメント
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おお、第839話「回転寿司」! 旅先の回転寿司でテンション上がる気持ち、めっちゃ分かるわ~。特に「知らない土地の回転寿司って血湧き肉躍る」って弥生さんのセリフ、ガチで共感した。朱里ちゃんがウニを遠慮してるのを尊さんが見抜いて「好きな女を腹一杯喰わせる甲斐性ある」って言うシーン、渋くてグッときたな。和気あいあいとした旅の空気感が伝わってきて、ほっこりしたよ!