テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
扉が開く。
暗い部屋に、外の光が流れ込む。
セブンが先に入る。
クールキッドがその後ろ。
エリオットも続く。
「……暗いな」
「そのままでいい」
セブンは短く言う。
靴を脱ぐ音。
小さな足音。
クールキッドはすぐに部屋の奥へ行く。
慣れている動き。
「にいに、こっち」
「はいはい」
エリオットがついていく。
部屋はシンプル。
余計なものは少ない。
ただ——
一角。
PCが置かれている。
電源は落ちている。
でも、存在感がある。
セブンの視線が一瞬だけそこに行く。
「……」
クールキッドは床に座る。
積み木を持ってくる。
「つむ」
ぽつりと言う。
セブンは少しだけ眉を寄せる。
またそれか、という顔。
でも何も言わない。
クールキッドが一つ置く。
もう一つ。
少し歪む。
でも気にしない。
三つ目。
ぐらつく。
倒れる。
カラ、と音。
「……」
クールキッドはそれを見ている。
そして。
何も触れていないのに——
近くの小さな機械。
古いタブレット。
画面が、ふっと点く。
エリオットが気づく。
「……ん?」
さらに。
PC。
電源を入れていないはずなのに。
小さく、起動音。
セブンの目が変わる。
一瞬で。
空気が張り詰める。
クールキッドの指が動く。
何かをなぞるように。
遊びの延長みたいに。
画面が勝手に立ち上がる。
ログが流れる。
触れていないのに。
「……やめろ」
低い声。
はっきりとした否定。
クールキッドの手が止まる。
振り返る。
「パパ?」
戸惑い。
さっきまでの楽しさが少し揺れる。
PCの動きが止まる。
部屋が静かになる。
エリオットはその一連を見ている。
驚いている。
でも。
怖がってはいない。
むしろ——
少しだけ、目を見開いたまま。
「……すごいな」
ぽつりと言う。
素直な感想。
評価でも否定でもない。
ただ、見たまま。
クールキッドの表情が変わる。
不安が消える。
「……?」
もう一度、手を少し動かす。
でも今度は何も起きない。
セブンが見ているから。
止められているから。
それでも。
クールキッドは満足したように頷く。
「すごい?」
「すごい」
エリオットは軽く言う。
「でも今はやめとけ」
言い方は柔らかい。
否定じゃない。
制限。
クールキッドは少し考える。
それから。
「……じゃあ、これ」
積み木をまた手に取る。
別の遊びに切り替える。
カラカラと音が鳴る。
今度は普通に積む。
崩す。
笑う。
ただの子ども。
部屋の空気が少し戻る。
でも。
セブンは動かない。
視線はPC。
そしてクールキッド。
両方を見ている。
「……」
エリオットが横に来る。
小さく、声を落とす。
「今の」
「……ああ」
「お前のか?」
セブンは一瞬だけ黙る。
「……違う」
短く言う。
「でも、似てる」
それだけで十分だった。
エリオットはそれ以上聞かない。
ただ、もう一度クールキッドを見る。
積み木を崩して笑っている。
無邪気に。
「……なるほどな」
小さく呟く。
セブンは反応しない。
ただ。
ゆっくりとPCに近づく。
電源は落ちている。
でもさっきまで動いていた。
ログは残っている。
確実に。
「……遊び、か」
低く言う。
積み木。
壊す。
繰り返す。
それと同じ。
ただ対象が違うだけ。
「……やめさせる」
短く言う。
決意。
でも。
エリオットは少しだけ肩をすくめる。
「難しいだろうな」
「……ああ」
「だってさ」
クールキッドを見る。
笑っている。
楽しそうに。
「楽しいこと、やめろって言ってるんだから」
セブンは何も言わない。
分かっている。
それがどれだけ難しいか。
そして。
自分がかつて、どれだけ“それ”に夢中だったかも。
「……」
クールキッドがまた崩す。
積み木が散る。
笑う。
その音が、やけに軽く響く。
セブンはそれを見ている。
止めるか。
教えるか。
線を引くか。
まだ決めきれていない。
でも。
「……壊すな」
小さく呟く。
誰にも聞こえない声。
「……制御しろ」
その言葉は。
止めるためなのか。
導くためなのか。
まだ、セブン自身にも分かっていない。
1,865
あめ猫@は?
5,871