テラーノベル
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「ぎゃああああああああああああああああぁ!!! 辰夫ぅおぉおおおおおおおおおおおおおおぉぉ!!!」
私はその場で両手を天に掲げてグルグル回転した。
「さっきからなんなんだよおおおおおおおおおお!!!!!」
息を切らしながら、なおも叫ぶ。
「この有能ドラゴンめえええええええええええええええ!!」
片足ケンケンで前後に跳ねつつ叫ぶ私を、
全員が引いた目で見ていた。
「もっとこうだろ!?
ひぃぃぃ!! 怖いですぅぅぅ!!
サクラ殿ぉぉぉ〜お許しをぉぉぉ!!
って言えよおおおおおおおおおお!!
なんで冷静に状況確認したりぃぃぃ!?
撃破確認してんだよおおおおおおおおおお!!
ムカつくんだよおおおおおおおおおおおおお!!!」
床にダイブ。ゴロゴロ転がる。
「しかもだよぉぉぉ!! しかもだよぉぉぉ!!
その後すましてんじゃねえええええええええええ!!
うわぁぁぁぁぁん!!!」
髪をぐっしゃぐっしゃにかきむしりながら壁ドン連打。
「うわああああああああああああん!!!!!
貫穿撃《ドラゴンスパイン・スラスト》ってなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
床に正座。両拳で床を連打。
「辰夫ぱ〜んち!! ひでぶー!!!
でいいだろうがよおおおおおおおおおおお!!!」
「お姉ちゃんが壊れた!!あははははは!!!!!」
エスト様が涙を流して爆笑している。
「……サクラ、大丈夫……?」
カエデが本気で心配そうな顔をした。
「大丈夫じゃないでしょどう見ても」
ツバキが一歩引きながら言う。
「『魔王、解放される。奈落にて』……っと」
ローザが静かにペンを走らせた。
「ローザ!!今はダメ……死ぬよ?」
ツバキの頬を汗が伝う。
そんな中、辰夫は一歩前に進み、
背筋をピンと正し、
礼儀正しく両手を後ろで組んだ姿勢で、
極めて凛とした声で言い放った。
「……サクラ殿。
竜王として、常に最善の結果を出すのは当然の責務。
怯えて逃げ惑うなど、我が名折れにございます。
よって……本日の戦果、誇りに思う次第」
そして、ほんのわずかに首を傾け、静かに一言付け加えた。
「……それとも、”平時の無能演技” をご所望でしたか?」
辰夫の口角がほんの僅かに上がった。
「それに、先ほどのアーリマン……
サクラ殿の激しい奇行を目の当たりにし、
“我は何と戦っているのだ” という顔をしておりましたゆえ」
一拍。
「精神的に限界と判断し、安楽のうちに送って差し上げました」
「……ッ、待て」
一瞬、息が止まる。
「奇行だとおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!??!?
敵(モンスター)を安楽死させてんじゃねええええ!!!!!」
パァン!!!
私の床パンに加速音が付いた。
私は壁に体当たりした。
バァン!(衝撃音)→ ゴロゴロ転がり二週目突入。
「辰夫さん……
それ、今最高に火に油って知ってて言ってる……?」
辰美がオロオロしながら辰夫の肩を掴む。
「辰美ぃいいいいいいいいいいいいいい!!
お前もだよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
爆炎牙《フレイムファング》!!(キリッ)
じゃねええええええよおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「……え、だって……技名言うのお約束じゃん……」
辰美が若干引きながら答えた。
「技の名前は時に敵より味方を煽るんだよぉおおお!!!
慎重に選べよぉおおお!!!
ムダ様も言ってたんだよぉおおおおお!!!!!!」
ズドム☆(通りすがりのモンスターを瞬殺)
「ピギィッ!?」(モンスターの断末魔)
\\てれれてってってってー♪//
【サクラはレベルが上がりました】(カオス度増加)
「このタイミングでレベル上がるの!?あははははは!!!」
エスト様がお腹を抱えて床を転がりながら爆笑した。
「加えて申し上げるなら、
“辰夫パンチ”という技名は些か品格に欠けるかと」
辰夫が静かに目を閉じ、深呼吸をした。
「我が竜生において、かつてないほど知性を欠いた響きにございますな」
「ぅうううるせえええええええええええええええ!!!!!」
頭上でレベルアップ⤴︎の文字が点滅する中、
私は壁の端を掴んでぶら下がり始めた。
「数千年のスケールで私の語彙力ディスってんじゃねえええええええ!!!!(嗚咽)」
「全員バカだああああああああああああ!!!!(号泣)」
しばらく間があった。
「……全員は少々語弊がございます。
少なくとも我は職務を全うしております」
辰夫がピシッと姿勢を正して一言。
「そして……ご要望とあらば、善処いたします」
辰夫はスゥッと息を吸い込み──
「ふむ……たつお、ぱんち。……ひでぶ。でしたかな?」
鼓膜を震わせるような重低音(イケボ)で真顔のまま呟いた。
「……ふぅ。これで多少は静かになりましたかな?
……後でエスト殿に飴玉でも貰うとよろしいでしょう。
くれぐれも、誤飲にはご注意を」
やれやれ、と大げさに肩をすくめる辰夫。
「あ、飴玉は──」
辰夫がニコ、と笑う。
「噛まずに舐めてください」
「てめぇえええええあああああ!!!!!
違うぅううう!! 余計腹立つわぁああああ!!!!!」
「舐め方まで指導してんじゃねえええええええ!!!」
「………ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」
私は悶絶して前転しながらその場から逃げた。
叫び声がダンジョンに響き渡る。
「……サクラの激オコ、久しぶりに見たねぇ」
カエデがしみじみと言った。
「そうね……ささ、避難しましょ」
ツバキが頷く。
「なんか……安心した」
カエデが笑った。
「うん。私も」
ツバキも、つられて笑った。
天の声:ちなみに第一層に入ってから、まだ100メートルとちょっとしか進んでいない。
第一層はまだまだ序盤。
だが、もう既にこのダンジョンは普通ではなかった。
主にヒロインが。
*
……はぁ、はぁ……っ。
「……ヒロインは優雅に歩くものよ……(肩で息しながら震え声)」
私はボサボサの髪を爽やかに掻き上げて、前を向いた。
「じゃ、行くわよ」
「お姉ちゃん、話が進まなかったよ☆」
エスト様の一言が、ダンジョンにこだました。
(つづく)
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『技の名前は時に敵より味方を煽る。慎重に選べ』
解説:
タッグマッチの中盤。
パートナーのタロスがコーナーに向かって叫んだ。
「いくぞッ! 漆黒断罪オメガ・ジャスティス・バスター∞(インフィニティ)!!」
ムダ様、リングサイドで静かにため息。
「タロス、なあ……お前の技名、敵より俺がダメージ受けてんぞ」
技名カッコつけてんじゃねーよ! なんそれ!?
“∞”て。そんなもん、リングで見えねえ!!
ムダ様は呟いた。
「技名は刃だ。間違った角度で振ると、味方のメンタルを裂く」
その直後、タロスがカウンターを食らいピンチに。
ムダ様が飛び出し、両手を掲げて咆哮した。
「超究極零式無限真理掌(スーパー・アルティメット・ゼロスタイル・インフィニティ・トゥルース・パーム)!!」
──試合は負けた。
◇◇◇
作者です。
勢いで書き殴りました。
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