急に外が騒ぎ出し、立ち上がった呉林姉妹は全速力で外へと出た。私たちも呉林姉妹の後を追うようにと外へと飛び出し、長老とバリエも異変に気付いたようで立ち上がる。
この集落には中央が、長老がいる大き目のコニーデのような天幕。その周辺は大きな広場となっている。更にその周辺には無数の小さな天幕があって村を形成していた。
私の周辺の天幕には、いきなり真っ赤に火を吹いて、傷つき逃げ惑う人たちがいた。大勢の悲鳴や戦いの怒号を聞き、私はカルダの性格が想像以上に残虐なのにまた恐ろしくなった。
駆け付けた呉林姉妹とディオが幾つもの亡骸を避け、倒れ込みそうな女性や子供たちを奥へと必死に誘導していた。
女性や子供たちは必死で村の奥にある森林へと逃げ込んだ。しかし、その森林は猛獣がでるところだった。
ただ、私は呉林が心配だった。
村のあちこちの天幕から武器を持ち出してきた蒼穹の戦士と、角田と渡部、そして私は武器を持ち出し、この騒ぎの張本人たち、得体の知れないたくさんの黒い物体へと駆け出した。
広場や天幕の周辺には何百体もの黒いものがうようよとしている。
よく見ると、この騒ぎの張本人たちは、細目で顔は真っ白だが舌だけ真っ赤の、全身が黒い霧で覆われた者たちだった。持っている血塗れの武器はギザギザの刃のやや大きめの鉈。
「何だあいつら!」
角田が剣と盾を構えて、さっそく一体の黒い霧に向かって行った。
「渡部!」
私の目の前にいる渡部は、数人の蒼穹の戦士たちと持っている槍を思いっきり投げ飛ばしていた。子供たちを無残に切り倒す数体の黒い霧に槍が数本突き刺さり、血を噴き出して跡形もなくなった。
黒い霧数体の女性や子供の殺戮を止めるために、奥の森林まで私は走り出す。周辺の黒い霧にだけ剣を振り回しては、必死に追いかけていた。
「カルダの村が攻めて来たのじゃ!」
長老が叫ぶ声が剣を振りまわす私の耳に届いた。恐らく私たちが居るからだろう。
蒼穹の戦士たちと黒い霧の戦いに、私たちは否応なく参戦することとなった。
私はハチの巣を突いたようなこの場所で、覚醒しようと恐怖でいっぱいの頭で考えていた。ここまで来たのだからと、自分に言い聞かせた。
「はっ!」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!