「あ、」
早く帰ろうと大学を出たそこには、彼がいた
飲み会から数日たった今日
今日は結もバイトで、サークルもなかった。
結もいないし帰って本でも読もうかなと思っていた、
「暑いなー、」
みんみんと蝉たちがやかましく鳴く、
暑苦しい夏の午後、
「あ、やっとでてきた」
そう言いながら彼は歩いてきた。
「春、、、くん、?」
「もー待ちくたびれたよ」
「あ、ご、ごめん。どうして居るの?」
「灯待ってたんだよ一緒に帰ろうと思って」
そう言いながら大学を出た瞬間手を引いてきた。
「あの、手、、」
「あ、ごめんね」
「それにしても、今日は暑いねー」
「え、あ、うん」
「、、、」
夏の午後の蒸し暑い沈黙がのしかかる。
私の気持ちと同じように、、、蒸し暑かった
結以外と帰ることなんて無かったから何を話せばいいか分からない、
「あ、そういえば駅前にカフェ、できたらしいですよ?」
「へー、そんなんだ。行ってみよっか」
「え、で、でも私今日財布、忘れちゃって」「俺が奢るから。ね?」
「あ、じゃあ、お言葉に甘えて。」
ちりん、ちりん、と風鈴の音が心地よくなる。
店内に入ると客が疎らに居る。
落ち着いた店内で空調と換気扇の音、時々コーヒーカップとソーサーがぶつかる音だけがした。
席に着き、メニューを開くと色々なスイーツや飲み物が書いてある
「灯は何飲む?」
「んー、と」
正直お腹が空いていないお昼も食べたので胃になにか入る気がしなかった。
「じゃあ、珈琲で、」
「そんだけでいいの、遠慮してない?」
「い、いやいやお腹が空いてないので、」「そ。じゃあ頼むね すいませーん」
彼が定員を呼び注文をしている中、
私はまだ戸惑っていた。
彼は何故私を連れてきたのだろうと、
「灯?」
彼の声で現実に引き戻される
「あ、ごめんなさい。ぼーっとしてて、」
「ううん、僕も突拍子も無く連れてきてごめんね」
「いえ、あのなんで私を此処に?」
「ああ、単純に灯と話したかったんだよ」「え、私と、?」
そこにデザートと珈琲が運ばれてきて、話が中断した。
「まず食べよっか」
「、はい」
珈琲を口に含む口の中に残る、珈琲の苦い味や香りの気配
灯はこの癖のある苦味が好きなのだ珈琲を堪能していると、彼が口を開く
「僕ね、灯と居ると落ち着くんだよね」
彼がそう言って優しそうに微笑む
心の内側に小さな波が打つ
「え、ぁ そう、なんですか?」
「うん、灯と居ると心がぽかぽかするんだ」「え、」
『太陽みたいだね』
「あ、ぇ 」
心が、何故か満たされていく。
こんな私にも、そう、言ってくれる人が居る
この何気ない一言で、今まで生きてきて、味わったことの無い感情の、始まりだった。
瞼に涙を馴染ませて俯く、
透明な二粒の水滴が瞬きと一緒に弾き出された。
「、ふふ 綺麗だね」
春くんの手が私の頬をするりと撫でる
暖かい
彼の、顔が近づく
口が曲がりそうなしょっぱいなみだ。
彼の口が、私の瞼にそっと触れた
「しょっぱいね」
彼が唇をペロッと、舌なめずりをした。
、
、
、
、
、
、
。
「美味しかったね」
「、うん」
帰り道、ぽそぽそと言葉を交わしながら歩く
「ふ、キスのせいで味わからなかった?」「ぇ、あ、いや…わからなかったです、」
「あは。じゃまた今度来ようね、その時は味わって、ね?」
「ぁ、はい」
「じゃあ、僕こっちだから また明日ね」
「はい、又明日、」
、
、
、
、
、
、
気が付くと家の前居た、
無意識に帰っていたようだ
「あれ、私どうやって帰った、?」
悶々と頭を捻ると彼の顔が思い浮かんだ。
、私の瞼に交わした、甘くて、しょっぱい、
瞼のきす。
「わぁぁぁあっ」
思い出すと顔に熱が集まる、
『太陽みたいだね』
彼が言った言葉、
「太陽、か、ふふ。」
心がぽかぽかする。
彼もこういう気持ちだったのかと思うと心が満たされていく、
「早く明日にならないかな、」
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