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勘弁して欲しい……。
此処のところ、よく私物が無くなって困っている。
シャーペンやノート、ペットボトルはまだ良い。
消耗品だし。
――水泳キャップまで無くなるなよ。
お陰で合同練習では、向こうの高校の名前入りの予備を借りて恥かいたじゃん。
「十夜(とおや)、眠いのか?」
浅黒く日焼けした眼光鋭い親友の夏樹(なつき)が俺の顔を覗き込む。
「……うん」
電車のつり革に掴まりながら、俺は練習で疲れたからうとうと半分夢の中だ。
それを夏樹が心配げに見守る。
「次から人が多くなるから寝たら迷惑かかるぞ」
「――うん」
100メートルプールについはしゃいでしまった。
なんで泳いだ後って眠くなるんだろ。
うん、しか言わない俺に夏樹は溜め息を吐く。
夏樹の心配は的中し次の駅で人がいっぱい乗ってきた。
冷房が効いていた電車内が急にもわっと熱気に包まれる。
鮨詰め状態になりながらも電車に揺れる。
隣にいたはずの夏樹も遠くに流されたようだ。
うとうとする目の前には窓の外。
海に浮かぶ入道雲。
蝉の声を聞きながら額から流れ出る汗。
そんな時だった。
「――んっ」
何かが尻をなぞる。
細い……指先?
さわさわと尻の割れ目を探すように動く。
傘かもしれないしと身を捩ると、ピタリとそれもついてきた。
離れない。
って。
――ええ!?
大変です。
もしや、
俺、痴漢されてるのか?
びっくりして後ろを振り向きたいのに、
人と人の間で身動きがとれない。
くっそ。
「わっ」
前のファスナーが引っ張られてる。
もう眠気なんて吹っ飛んだぞ。
「触ってんじゃねー!」
大声を出すと、両側に密着していた人たちが少し俺を見ようと距離を取った。
その隙にと慌ててその手を掴もうと後ろに手を伸ばすが、手は離された。
逃がすまいと掴んで引きちぎったのは、
――ボタンだった。
「くっそ!」
「十夜どうした!?」
「ん? 十夜先輩!?」
「蒼空、どうした?」
車内はすぐに水泳部の声でパニックになった為に、部長が次の駅で皆に降りるように指示した。
「おい、十夜……」
「何?」
夏樹に腕を引っ張られ、さっきの場所から移動し夏樹と入り口の間に挟まれた。
夏樹は何故か俺から目線をそらし、照れ臭そうに耳元で囁く。
「ファスナー、開いてる」
「!!!!?」
「悪い。見えた」
「あ、いや、ありがとう」
さっきファスナーを下ろされた時、ちょっと掴まれた気がしてぞくっとしたんだ。
まじであれはやばかった。
「もしかして……触られた?」
「あ、いや、その……」
辺りを見回す限り、サラリーマンのおっさんやら他校の男子とかしか乗ってない。
女性は一人もいない。
つまり俺は男に触られた事になる。
そんなの言えるかってんだ。
「その握ってるの何?」