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4件
続きが楽しみ
ピピピピッ
ガチャッ
「…おはよぉ、おかぁたん」
機械音だけが鳴り響くこの家はどうしても好きになれない。
「学校…行かなきゃなぁ」
…お母さんは小さい頃に病気で亡くなった。
それからお父さんは一人でみこを育ててくれた。
暮らしの為にたくさん働いてくれるから、最近は顔を合わせてもいない。
寂しい。
我儘なのは分かっている。
それでも、学校であった辛いことや嬉しいことを、ご飯を食べながら話したい。
写真立てに映っているみこのお母さんは綺麗で、優しい顔をしている。
ただ、ただ静かに、優しく笑っている。
「行ってきます」
返事もないのに、”行ってきます”なんて言って鍵を閉める。
鍵を閉め、後ろを振り返る前に深呼吸をする。
「よし、演技の時間だ。」
学校は息苦しい。
昔からの引っ込み思案な性格も、少し喋るのが苦手なことも、全てを隠さなければいけない。
「そうだね、」
人とはあまり関わらない。
結局家となにも変わらない。
みこは昔から人との距離感が掴めなくて、いつも遠ざかって、近くから人がいなくなる。
うざいんだって、。
そんなことばかり考えてたら、いつの間にか放課後になっていた。
「帰ろ」
「~~~~~~さい、」
帰り道、
校舎裏から複数人の話し声が聞こえた。
何故か妙に気になって覗いてみたら、痣だらけの子が家に帰らせてくれと不良に頼み込んでいた。
「っ」
…あれ?なんだか勝手に体が動いた。
「なにやってるの?、この子痣だらけじゃん、警察問題だよ」
なんで?なんで、なんで、?怒らせちゃうよ、
怖い、怖い怖い怖い怖いk「大丈夫です」
「…え?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
「この痣は父から貰ったものなので、この人たちは罰を受けるほどの事はしてないです。」
え?え、え、え、え?なに言ってるの?お父さんがこんな痣を?意味がわからない。
「…わ、分かった。」
気づけば不良達は居なくなっていた。
良かったぁ、。
……き、気まずい。
「ねぇ、あ、貴方の名前は?」
「星街すいせい」
「そっか、みこはさくらみこだにぇ」
あ…しまった。
この喋り方、笑われてしまう。
…ッあれ?、何、で?星街さんに笑われてるのに、嫌な笑顔じゃ無い。
優しい顔、、、友達になりたい!
可愛い、嬉しい、不思議だ、この子を変えたい!
本当に不思議だ。
眼鏡は壊れ、前髪もボサボサになっているこの人の笑顔が、一人で寂しかった世界に、人の温もりと希望の光を灯してくれた様に感じた。
「…かわいい!」
あまりに自然に言葉が出た。
変えたい!この子のことを変えたい、!
その一心で話した。
そして、さっき灯された光が大きく広がって、私の背中を押してくれた。
「みこ達、今日から友達ね!」
貴方は、こんなに突然な提案を笑わず、優しく頷いてくれた。
いつもは暗くて寂しいはずの家が、明日を連れて来てくれる、優しくて、暖かい場所の様に思えた。