それではどうぞ
ある暑い夏の日。
俺が絶賛片想い中の彼から一緒に海に行かないかと誘いを受けた。
好きな奴からの誘い。断る理由なんてない。
俺は二言返事を返した。
🇯🇵アメリカさん!
夏という事もあり、分かってはいたが気温が高く、とにかく暑い。
だがそんな蝉の声がこだまする中、お前の声だけが鮮明に聞こえる。
🇯🇵わぁ!見てくださいアメリカさん!あれ!入道雲ですよ!
良い歳にもなってはしゃぐ日本を、俺は微笑みながら見守る。
可愛いな。
ふと、俺は思う。
このまま日本に俺の気持ちを伝えれないだろうか?
俺は裸足になり海に入っている日本に近付く。
🇺🇸日本。
俺がそう呼ぶと、ピクリと身体を震わし、ゆっくりと日本が俺の方を振り向く。
🇯🇵どうしましたか?
屈託のない笑顔を向けられた。
可愛い。
…けど、そんな気持ちが言葉で出るよりも先に、俺の中に別の気持ちが浮上した。
悲しい。
青い夏、暑い今日。
背景に入道雲を携えて俺の目に映る日本は、かつて俺とライバル的存在だった彼奴を思い出させる。
🇺🇸日帝…。
俺はボソッとその名前を漏らす。
最近胸が痛いなとは思っていた。けど、その理由がずっと分からないでいた。
…でも、今分かった。
今は夏。8月。
8月といえば俺が日帝に『トドメ』を刺した月だ。
日本の背景にある入道雲がソレを連想させる。
ポロッ…と、涙が頬を伝う。
日本はそんな俺を見てギョッとする。
🇯🇵ちょっ…大丈夫ですか⁈
俺は駆け寄って来た日本に抱き締めらる。
好きな奴に抱き締めらているのに、嬉しい筈なのに。今はそんな感情が湧かない。
止めどなく涙が流れて来て終止符が付かない。
折角日本に気持ちを伝えようと決めたのに。
結局俺の口から出た言葉は
🇺🇸…ごめん。
それだけだった。
日本は突然俺に謝られて困った顔をしていた。
…まあそうだよな。お前と彼奴は他人だもんな。
俺は俺らしくなくその場にしゃがみ込み、数分は動けないでいた。
日本はそんな俺の背中を優しく撫でてくれた。
嬉しかった。
🇯🇵…落ち着きましたか?
🇺🇸ああ。大丈夫だ。すまないな迷惑をかけた。
俺がそう謝罪をすると、日本は可愛い笑顔をする。
🇯🇵いえいえ。アメリカさんも思い詰める事が沢山あるんですよね。無理せず吐き出してください。
そこからはあまり覚えていない。
あの後何をしたか。
どうやって帰って来たのか。
今一番分かる事は、日本に気持ちを伝えれていないという事。
🇺🇸…まあ伝えるのはいつでも良いか。
俺はそう呟き身体をグッと伸ばす。
🇺🇸…日本にお詫びの団子でも買いに行くか。
俺はガタッと席を立ち、部屋を後にした。
『終』
コメント
1件
いや〜やっぱりこうゆうのもいいですね!最高です!