テラーノベル
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珠李
176
HARUKA
2,207
【其の四:深淵(アビス)の胎動と、最初の事件】基地から遥か遠く、大陸の最南端に位置する大断層。光が完全に遮断された、世界の底なしの裂け目――通称「深淵(アビス)」。そこは、帝国軍ですら決して近寄らない禁忌の領域。その底知れぬ闇の底で、形を持たない巨大な質量が、ドクドクと心臓のように脈打っていた。「……満ちる……時が、満ちる……」深淵の支配者、アビス。世界すべての命、すべての歴史、すべての因果を奈落の底へ引きずり込み、完全なる虚無へ還すことを目的とする絶対的な悪。アビスは、基地の中にいる「最高の苗床(オスクロ)」の魂に、暗黒の毒を送り込みながら、不気味な地鳴りのような声を響かせた。「時(クロノ)を狂わせ、王(レノヴォ)を喰らい、すべてを我が深淵(アビス)へ還そう……」――その日の深夜。突如として、第零基地に、鼓膜を裂くような赤い非常警報(サイレン)が鳴り響いた。「緊急事態! 緊急事態! 第一防衛線が突破された! 敵は……アビスの魔獣群! 各員、ただちに直近の武器を取り、戦闘配置(バトル・ステーション)に就け!!」爆音と共に、基地の外壁が大きく崩落する。暗闇の中から押し寄せる、数千、数万の異形の魔獣たち。血と硝煙、そして兵士たちの悲鳴が、一瞬にして基地の日常を地獄へと変えた。下っ端であるレノヴォとヴァルポは、前線の倉庫で武器の搬出作業に追われていたが、突如として目の前の壁が弾け飛び、巨大な魔獣が咆哮を上げて現れた。「兄貴、危ないっ!!」ヴァルポが叫び、レノヴォを突き飛ばす。絶体絶命の戦場の中で、平凡な下っ端たちの命が、いま、世界の崩壊を告げる大渦へと巻き込まれようとしていた。(第1章・完)
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コメント
1件
読み終わりました! 第1章完ということで、一気に世界観のスケールが広がりましたね。アビスの存在感が圧倒的で、「深淵の胎動」というタイトルがこれからの物語の不穏な予感を煽ってくる。それでいて、下っ端であるレノヴォとヴァルポの視点に戻ってくる構成が、読者として没入しやすくて好きです。いよいよ次から彼らがどう動くのか、楽しみで仕方ないです!