思い返せば、俺は類さんのこと何も知らない。
episode10
「おやすみ。ショウにゃん。」
類さんにそっと頭を撫でられながら、ゆっくり瞼を閉じる。
一瞬にして、視界が暗闇になる。当たり前だけど、それだけで不安になる。
夜は昔から嫌いで、静かで何処か寂しくなる。まあ、そんなことはどうでもいいけど
今は、あの麻衣ちゃんの従兄弟?について考えよう…。
偶然目が合ったとき、懐かしい感じがした。何処かで会ったような…。それも、親しかった気がする。同級生で、黒髪でかっこいい…多分モテるー…。
「ん〜〜…。見つからない…。」
多分、俺の学校にはいないのか…?だとしたら、何処で会ったんだ?
一体、何がきっかけで…
ガタン、ゴトンッ!
「!?」
深く考えていると、ドアの向こうで物音がした。
リビングから寝室まで結構距離あるのに、聞こえるってことは相当大きい物音だ。
何かあったのかな…。類さんのことだし、皿割ってたりしてー…?!
不安になり、ドアを開け、忍び足で廊下を進む。
もしバレたらまたベッド送りだし。そっと…ね…。
ケガがないといいけど…
そして、そっとリビングを覗く。
すると、そこには見知らぬ男性がいた。
類さんぐらいの歳で、見るからにチャラそう…類さんと親しそうだけど、友達?なのかな。
「久しぶりに来た〜。やっぱり、お坊ちゃんなんだな〜」
ニヤニヤしている友達に対して、類さんは少しイラついた様子だった。
「急に来るな。ったく、来るなら連絡しろ。迷惑なんだよ、毎回。」
え!?類さん!?声が全く違う!!別人みたい…。
「いいじゃ〜ん。んで?そのショウにゃんって子は?」
まずい…!
「今は寝室で寝てる。絶対邪魔するなよ、もしお前のせいでショウにゃんが起きたらお前を○す。」
怖っ!
「ひぃ〜、怖い怖い!…っていうか、類いつまでショウにゃんを預かってるつもりなの?」
…!…確かに、それは気になる。
ずっとここに居座るわけにはいかないし、いずれは離れるつもり。高校ぐらいかな?離れるとしたら…。義務教育が終わるまで。じゃ長すぎるから…ん〜…。
「そんなの、考えたこと無かった。」
え。
「え?普通は思うだろ、預かったときから」
「ううん。だって、ショウにゃんはずっと一人だったし、小学生にして失う者が多すぎた。あの子を手放すわけにはいかないって思ったんだ。」
類さん…
「…まあ、確かにな。少なくとも、俺たちよりは孤独かもな。」
「だからショウにゃんには俺がいるって伝わるまで、離さないつもり。それに、大好きな人と離れるのは絶対に嫌。」
うっ…///そんな率直に言われると…///
「…ふ〜ん…。」
「なあ、ホントになにしに来たんだよ…さっさと教え…」
「それってさ…」
類さんの言葉を遮る。
「類にとっては預かってるつもりだろうけど、周りからみたら、誘拐じゃない?」
「え?」
「だって、あくまでおじいさんに認めてもらったってだけで、ショウにゃんのご両親には何も言ってないんでしょ?」
でも、俺の両親はとっくに…
「ショ、ショウにゃんのご両親はえっと…他界してて…」
「そうだろうけど。…もう一度考えてみたら?この判断が本当に正しいのか。今日はそれを伝えに来た。」
…!俺は類さんと一緒にいたくているのに。他の人にはどうしてこうも伝わらないんだ…。
「…それを決めるのはショウにゃんであってお前じゃない。勝手にあれこれ首をつっこむな。さあ、帰った帰った!」
類さんは友達を追い払うように背中を押した。でも何処か、寂しそうだった。
友達が帰り、リビングは静まりかえった。
俺はベッドに戻り、天井を見上げる。
類さんのことは何も知らない。ただ推しに似ているってだけで、なんでこんなにも愛してくれているのか…。
「わかんないよ…。」
考えていると、ドアの向こうから足音が聞こえた。
類さんか…!?
慌てて目をつぶる。
ガチャと音がし、目の前に気配を感じた。すると、そっと頬に手が触れた感覚がした。
冷たくて、大きい。間違いなく類さんの手だ。
「ショウにゃん…何でだろ。今すっごく不安なんだ。ショウにゃんは僕といることが幸せだって言っていたけど、なんかモヤモヤする。」
そっと囁かれる。透き通っていて、眠気をより誘う。
「多分、それは笑くんに対してだと思うんだ。違う感情があるような気がする。でも、それに気づいたら、だめなんだ。」
違う感情…?
聞きたいけど、聞けない。
「…ショウにゃん、大好きだよ?だから、これ以上、触れない。」
すると俺の頬に冷たい雫が落ちた。
泣いてる?類さん、泣いてるの?何で?どうして?俺のせい?
ねえ、教えてよ。教えてくれなきゃ、
わかんないじゃん…。
「!ショウにゃん…?」
気がつけば、類さんに抱きついていた。
「教えてよ、類さん。大好きなんでしょ?」
「ショ、ショウにゃん…!?///」
「わかんないよ。俺、類さんのこと、何も知らない。だから、教えて。」
「…ショウにゃん…。」
類さんのことが、大好きなのかも…。
そう、思えたから。
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