テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#timelesz
いちごみるく
16,246
2,177
2,132
#紅一点
いちごみるく
1,365
続き
北斗side
シャワーの音が静かに部屋に響いている
北斗はソファに座ったままぼんやりテレビを眺めていた
でも内容は全然頭に入ってこない
視線だけがなんとなく動いているだけ
テーブルの上には〇〇が途中まで食べていたおにぎり
開きっぱなしの通販画面
脱ぎっぱなしのカーディガン
全部生活感がありすぎて、もうこの空間に〇〇がいるのが当たり前になっていることを実感する
北斗「……半年か」
小さく呟く
最初は期間限定のつもりだった
ストーカー被害が落ち着くまで
それだけのはずだったのに、気づけばもうすぐ半年
今では〇〇が帰ってこないと落ち着かないし、家に静けさしかないと逆に変な感じがする
北斗はスマホを手に取る
ロック画面には今日の不在着信履歴
結局あの時、声が聞きたかっただけだったのかもしれない
そしてまた廉のことを思い出す
“まだやり直したいって言ってくれてる”
北斗「……」
胸の奥が重い
廉はちゃんと“好き”って言える
行動もする
待ってるだけの自分とは違う
北斗は後ろにもたれながら目を閉じる
〇〇はきっとまだ廉のことを嫌いになれてない
今日の話し方で分かった
北斗「……奪われたくねぇな」
思わず零れた本音
でも次の瞬間、自分で苦笑する
北斗「何様だよ」
ただの同居人
ただの仲間
それ以上じゃない
でも、昼間みたいに傷ついてる顔を見た時
“守りたい”しか頭になかった
風呂場から小さく物音が聞こえる
北斗は無意識にそっちへ視線を向ける
北斗「……ほんと振り回される」
呆れたみたいに呟くくせに、その顔は少しだけ優しかった
しばらくしてシャワーの音が止まる
北斗はスマホを見ていたふりをしながら、無意識に洗面所の方へ意識を向ける
ガチャ。
ドアが開く音
〇〇「ふぃー……」
北斗は視線を上げる
〇〇は髪を軽くタオルで拭きながらリビングへ戻ってくる
そして北斗の視線が止まる
〇〇「なに?」
北斗「……いや」
〇〇はもう新しく届く予定のものじゃない、前から持っていたゆるめの部屋着を着ている
でも風呂上がりで頬が少し赤くて、髪もまだ濡れていて、いつもより柔らかい空気になっている
〇〇「見すぎなんだけど」
北斗「見てねぇ」
〇〇「絶対見てた」
北斗「気のせい」
〇〇は笑いながら北斗の隣へどさっと座る
シャンプーの匂いがふわっと近づく
北斗「髪乾かせ」
〇〇「あとでー」
北斗「今」
〇〇「めんどくさい」
北斗「風邪ひく」
〇〇「北斗お母さん?」
北斗「違う」
〇〇はソファにもたれながらぼーっと天井を見る
〇〇「今日つかれたー……」
北斗「知ってる」
〇〇「なんか色々ありすぎた」
北斗「……」
少しだけ空気が静かになる
昼間のことを思い出したのか、〇〇の声が少し落ちる
でも次の瞬間
〇〇「でも北斗いたからいっか」
北斗「……は?」
〇〇「なんか安心したし」
さらっと言って笑う〇〇
北斗は数秒固まる
北斗「……そういうこと普通に言うな」
〇〇「え?」
北斗「なんでもない」
北斗は視線を逸らしながら小さくため息をついた
〇〇「はーいはい」
〇〇は面倒くさそうに立ち上がる
北斗「絶対やる気ないだろ」
〇〇「あるもん」
北斗「嘘つけ」
〇〇は洗面所からドライヤーを持って戻ってくる
そのままソファに座り直してスイッチを入れる
ブォォォ、と音が部屋に響く
〇〇「んー……」
半分眠そうな顔で適当に髪を乾かし始める
北斗はその様子を横目で見ながら呆れた顔をする
北斗「雑すぎ」
〇〇「乾けば一緒」
北斗「女子終わってんな」
〇〇「失礼」
でも数分後
〇〇の動きがどんどん遅くなる
ドライヤーを持つ手までふらふらしている
北斗「……おい」
〇〇「んー?」
北斗「寝んな」
〇〇「寝てない……」
完全に寝そうな声
北斗は深いため息をつくと、〇〇の手からドライヤーを取る
〇〇「え」
北斗「貸せ」
〇〇「自分でできるし」
北斗「できてねぇだろ」
北斗はそのまま〇〇の後ろへ回る
そして慣れた手つきで髪を乾かし始める
〇〇「……」
北斗「なに」
〇〇「いや」
〇〇「普通に慣れてるなって」
北斗「半年もいたら慣れる」
〇〇「ふふ」
温風が優しく髪を揺らす
〇〇はそのまま少しずつ力を抜いていく
北斗「寝るなよ」
〇〇「……ん」
返事がもうほとんど眠っている
北斗はそんな〇〇を見ながら小さく笑う
北斗「ほんと手かかる」
でも声はどこか優しかった
北斗は〇〇の髪を指で軽く整えながら乾かしていく
〇〇はソファに沈み込むみたいにもたれたまま目を細めている
〇〇「……ねむ」
北斗「知ってる」
〇〇「今日長かった」
北斗「朝からいたもんな」
〇〇「うん……」
ドライヤーの音が静かに続く
北斗は濡れているところを確認しながら丁寧に風を当てていく
〇〇「北斗美容師いけるんじゃない?」
北斗「行かねぇよ」
〇〇「上手」
北斗「適当言うな」
〇〇「ほんとだもん」
眠そうに笑う〇〇
北斗はその顔を見て少しだけ視線を逸らす
北斗「……動くな」
〇〇「はーい」
でも数秒後にはまた少し傾く
北斗「だから寝んなって」
〇〇「起きてるぅ……」
全然起きてない声
北斗は呆れながら〇〇の頭を軽く支える
〇〇「……ん」
北斗「ほんと危なっかしい」
〇〇「北斗いるから大丈夫」
北斗「……」
また無自覚にそんなことを言う
北斗は小さく息を吐きながらドライヤーを止める
北斗「はい終わり」
〇〇「おー」
〇〇はゆっくり顔を上げる
乾いた髪がふわっと揺れる
北斗「ちゃんと乾いてる?」
〇〇「うん」
北斗「ならいい」
〇〇はそのまま北斗の肩に少しだけ寄りかかる
〇〇「ありがと」
北斗の肩が一瞬固まる
〇〇はもう半分眠っているせいか全く気にしていない
北斗「……重い」
〇〇「ひど」
でも離れようとはしなかった
〇〇は北斗の肩に寄りかかったままぼんやり天井を見る
〇〇「ねえ」
北斗「なに」
〇〇「最近どうなの」
北斗「何が」
〇〇「恋愛」
北斗「……急だな」
〇〇「だって北斗って前好きな人いるって言ってたじゃん」
北斗は少しだけ動きを止める
確かに前、勢いで“いる”とは伝えてしまっている
でも相手が誰かまでは言っていない
“なんか放っておけない人”
“振り回される”
そのくらいしか話していなかった
〇〇「結局どうなのかなって」
北斗「別にどうもなってねぇよ」
〇〇「えー」
〇〇は眠そうな顔のまま少し笑う
〇〇「進展なし?」
北斗「ない」
〇〇「ご飯とか行かないの?」
北斗「行かない」
〇〇「連絡は?」
北斗「……まあする」
〇〇「へぇー」
〇〇は少し楽しそうになる
〇〇「どんな人なんだっけ」
北斗「……」
〇〇「なんか前言ってたよね」
北斗「うるさい」
〇〇「えー気になるじゃん」
北斗は小さくため息をつく
北斗「……振り回してくる」
〇〇「ふふ」
北斗「無自覚で」
〇〇「それ大変だね」
北斗「大変」
〇〇「でも好きなんでしょ?」
北斗「……まあ」
〇〇は少しだけ笑って北斗を見る
〇〇「珍しいね」
北斗「何が」
〇〇「北斗がそんなになるの」
北斗「そう?」
〇〇「うん」
〇〇はクッションを抱えながら首を傾げる
〇〇「その人幸せだね」
北斗「……は?」
〇〇「だって北斗めっちゃ優しいじゃん」
北斗「別に」
〇〇「好きな人には絶対大事にするタイプじゃん」
北斗は言葉に詰まる
目の前の本人にそんなことを言われるのが一番きつい
〇〇「ねえ写真とかないの?」
北斗「あるわけねぇだろ」
〇〇「えー見たかった」
北斗「見せねぇよ」
〇〇は残念そうに笑う
北斗はそんな〇〇を見ながら小さく息を吐いた
本人だけが何も気づいていなかった
〇〇「……ねむ」
北斗「さっきからずっと言ってる」
〇〇「もう限界かも」
北斗「だったら寝ろ」
〇〇は北斗の肩に寄りかかったままぐだぐだしている
北斗「ほら立て」
〇〇「やだ」
北斗「なんでだよ」
〇〇「動きたくない」
北斗「ガキか」
〇〇「今日いっぱい頑張ったもん」
北斗「知ってる」
〇〇はそのまま目を閉じかける
北斗「だからここで寝るなって」
〇〇「……ベッドまで連れてって」
北斗「自分で行け」
〇〇「えー」
北斗「“えー”じゃねぇ」
〇〇は不満そうに口を尖らせる
でも数秒後にはまた眠気に負けそうになっている
北斗は呆れながら立ち上がる
北斗「ほら」
〇〇「……ん」
北斗に手を引かれて〇〇もしぶしぶ立ち上がる
〇〇「ふらふらする」
北斗「寝そうだからだろ」
〇〇「今日長かったぁ……」
北斗「はいはい」
二人はそのまま寝室へ向かう
部屋は暗くて静か
〇〇はベッドを見るなりそのまま倒れ込む
〇〇「むり……」
北斗「着替えくらいちゃんとしろ」
〇〇「してるもん……」
北斗「ギリな」
〇〇は布団に顔を埋めながら小さく笑う
北斗も反対側へ腰を下ろす
〇〇「ねえ」
北斗「なに」
〇〇「今日いてくれてありがと」
北斗「……」
〇〇「助かった」
北斗は少しだけ目を伏せる
北斗「別に」
〇〇「またそれ」
北斗「寝ろ」
〇〇「はーい」
〇〇は安心したみたいに布団へ沈み込む
北斗はそんな横顔を静かに見つめていた
寝室の灯りは落ちていて、部屋の中は静かだった
〇〇は布団に横になりながらスマホをいじっている
北斗は隣で目を閉じかけていたが、ふと〇〇のスマホ画面が視界に入る
北斗「……」
そこに映っていたのはツーショット写真
〇〇と男
しかもかなり距離が近い
北斗は少しだけ目を細める
〇〇は全く気づかずスクロールしている
北斗「……誰」
〇〇「ん?」
〇〇はスマホから顔を上げる
北斗「今の」
〇〇「あーこれ?」
〇〇は普通にスマホを見せてくる
そこには最近撮ったオフショット
次のドラマで共演する若手俳優との写真だった
〇〇「今度共演する子」
北斗「子って」
〇〇「最近人気だよね」
北斗「……ふーん」
〇〇はまた画面を見る
そこにはスタッフが撮った自然な笑顔の写真
肩が近い
距離感も近い
北斗「それどこで撮った」
〇〇「今日」
北斗「今日?」
〇〇「休憩中」
北斗「……」
北斗の返事が少し減る
〇〇はそれに気づいて笑う
〇〇「なに」
北斗「別に」
〇〇「嫉妬?」
北斗「違う」
〇〇「えー絶対そうじゃん」
北斗「違ぇって」
〇〇は楽しそうにスマホを抱える
〇〇「でもこの子めっちゃいい子だよ」
北斗「……へぇ」
〇〇「背高くて顔小さくて」
北斗「もういい」
〇〇「なんで?」
北斗「知らねぇ」
〇〇は完全に面白がっている
北斗は視線を逸らして布団へ沈む
〇〇「北斗不機嫌ー」
北斗「なってない」
〇〇「分かりやす」
北斗「寝ろ」
〇〇「ふふ」
〇〇は笑いながらスマホを閉じる
でも北斗はしばらく天井を見たまま動かなかった
ーーーーー
夜中。
ふと北斗は目を覚ます
静かな寝室
隣にあるはずの気配がない
北斗「……?」
ぼんやりしたまま隣を見る
〇〇がいない
北斗はゆっくり体を起こす
時計を見ると深夜2:47
北斗「どこ行った……」
まだ眠気の残るまま寝室のドアを開ける
するとリビングの方だけ小さく灯りがついていた
北斗はそのまま静かに近づく
そして目に入った光景に少し止まる
〇〇がダイニングテーブルに突っ伏して寝ていた
北斗「……何してんだよ」
テーブルの上にはノート
カラーペン
開きっぱなしの料理本
スマホ
ぐちゃぐちゃに散らばっている
北斗は近づいてノートを覗き込む
そこには色分けされた文字
『北斗が好きそうなご飯』
『簡単レシピ』
『焦がさない方法』
『包丁ゆっくり』
北斗「……は?」
しかも献立まで書いてある
・生姜焼き
・味噌汁
・卵焼き(黒くしない)
・サラダ
横には小さく
『北斗料理できるからバレないように頑張る』
とまで書いてある
北斗はしばらく黙る
〇〇は昔から壊滅的に料理ができない
包丁で指を切る
卵を黒くする
味噌汁をしょっぱくする
北斗が何度も見てきたレベル
なのに今、必死に勉強した跡が目の前にある
〇〇は完全に力尽きたみたいに机へ顔を埋めて寝ている
カラーペンを握ったまま
北斗「……何してんだよほんと」
小さく呟く声は、呆れ半分、優しさ半分だった
そしてノートの端にもう一つ小さな文字を見つける
『いつも助けてもらってるからたまにはちゃんとしたい』
北斗はその文字を見たまま、しばらく動けなかった
北斗はしばらくノートを見つめたまま固まっていた
丸文字で一生懸命書かれているメモ
北斗「……っ」
思わず口元を押さえる
ニヤけるのを止められない
〇〇は机に突っ伏したまま完全に寝落ちしている
髪も少し乱れていて、カラーペンまで握ったまま
北斗「なにこれ……かわいすぎだろ」
小さく呟いてしまう
そして静かにスマホを取り出す
カシャ。
まず一枚
寝落ちしている〇〇
カシャ。
次はノート
『北斗が好きそうなご飯』
そこをアップで撮る
北斗「……やば」
笑いが止まらない
完全に顔が緩んでいる
さらにページをめくる
『味噌汁 味見3回』
『北斗に生焼けって言われない』
『ちゃんと作れたらびっくりするかな』
北斗「……無理」
耐えきれず小さく吹き出す
こんな時間に、一人で必死に料理勉強して、力尽きて寝落ちしたんだと思うと愛しさが限界だった
北斗はまた一枚写真を撮る
〇〇「……ん……」
少しだけ動く
北斗は慌ててスマホを引っ込める
でも〇〇は起きない
またすぐ静かな寝息に戻る
北斗は安心して小さく息を吐く
そしてもう一度〇〇を見る
北斗「……ほんと反則」
好きがどんどん積み重なっていく
止まる気配なんて全くなかった
北斗は静かに〇〇の隣の椅子へ座る
起こさないようにそっとノートを開く
カラーペンでいっぱい書き込まれたページ
想像以上にちゃんとしていて北斗は少し驚く
北斗「……え」
ページの端に日付が書いてある
二ヶ月前
北斗は目を止める
さらにめくる
一週間後
また次のページ
さらに数日後
北斗「……」
週に二、三回
ちゃんと続いてる
しかも内容まで細かい
『今日は卵焼き失敗』
『焦げた』
『塩入れすぎ』
『北斗普通に食べてくれたけど顔で分かった』
北斗「ふっ……」
思わず笑う
さらにページをめくる
『包丁こわい』
『でも北斗いつも作ってくれるから頑張る』
『いつかちゃんと作りたい』
北斗は完全に言葉を失う
〇〇は昔から超がつく三日坊主
飽き性
面倒くさがり
続かない
それを北斗は誰より知ってる
なのにこれは二ヶ月も続いてる
北斗「……マジかよ」
しかも字を見るだけで、眠い中頑張って書いていたのが分かる
少し雑な日もある
でも全部残ってる
北斗は机に突っ伏して寝ている〇〇を見る
〇〇「……すぅ……」
完全に無防備
たぶん自分がこんな顔で見られてるなんて夢にも思ってない
北斗はまたノートへ視線を戻す
『北斗疲れてる時多いから栄養あるやつ』
『でも急にやったら怪しまれる?』
『練習しなきゃ』
北斗「……っ」
胸がぎゅっとなる
どれだけ不器用でも
どれだけ料理下手でも
それでも自分のために続けてた
北斗は片手で顔を覆う
ニヤけるし、苦しいし、愛しいし、感情が忙しい
北斗「……好きすぎるだろこんなの」
小さく落ちた本音は、寝息に紛れて誰にも届かなかった
北斗はノートをそっと閉じる
起こさないように静かに机の端へ置く
そのあと改めて〇〇を見る
机に突っ伏したまま眠る〇〇
頬に少しだけ髪がかかっている
北斗はゆっくり手を伸ばす
そしてそっと〇〇の頭をなでる
北斗「……頑張ってたんだ」
指先で優しく髪を整える
〇〇は小さく肩を揺らすだけで起きない
北斗「料理とか一番続かねぇくせに」
少し笑う
でも声はとても優しい
北斗はまたゆっくり撫でる
柔らかい髪の感触が手に残る
〇〇「……ん……」
寝ぼけた声が小さく漏れる
北斗は思わず顔を緩める
北斗「起きんなよ」
そう言いながらも撫でる手は止まらない
昼間、泣きそうになっていた顔
ルンルンでバスローブ選んでた顔
眠そうに寄りかかってきた顔
全部頭に浮かぶ
北斗「……ほんとずるい」
好きになればなるほど苦しいのに
こういうところを見るたび、もっと好きになる
〇〇は安心したみたいに小さく息を吐く
北斗はそのまま優しく頭を撫で続けた
北斗はそっと〇〇の頭を撫でたあと、小さく息を吐く
机に突っ伏したままの姿勢じゃ絶対体が痛くなる
北斗は静かに立ち上がると、ソファに置いてあったブランケットを持ってくる
そして起こさないようにそっと〇〇へかける
〇〇「……ん……」
少しだけ動く
でも起きない
北斗「ちゃんとベッド行けばいいのに」
小さく笑いながらブランケットを肩まで整える
その時またテーブルのノートが目に入る
北斗はもう一度ノートを手に取る
表紙には丸っこい〇〇らしい字
『料理上手くなる!!ためのノート』
しかも“!!”までついてる
北斗「……ふはっ」
思わず吹き出す
かわいすぎて無理だった
北斗はソファ横にあったペンを手に取る
少し悩んでから、〇〇が書いていたページの下に小さく書き込む
『卵焼きは火弱め』
『味噌汁は味見一回で塩入れすぎるから気をつけろ』
『包丁は猫の手』
そして少しだけ止まる
北斗「……」
最後に小さくもう一行
『でもちゃんと頑張ってるのはすごい』
書いた瞬間、自分で照れてしまう
北斗「何やってんだろ……」
でも消さない
〇〇が気づいた時どんな顔するのか、少し見たくなった
北斗はノートを元の位置へ戻す
そのあともう一度〇〇を見る
ブランケットに包まれて眠る〇〇は安心しきった顔をしていた
北斗はしゃがみ込むようにしてその顔を近くで見る
北斗「……好きだなぁ」
深夜の静かな部屋に、小さな本音だけが落ちた
北斗は最後にもう一度〇〇を見る
ブランケットに包まれて、机に突っ伏したまま静かに眠っている
北斗「……風邪ひくなよ」
小さく呟いて、そっと髪を撫でる
〇〇「……ん」
寝ぼけた声だけが返ってくる
北斗は少し笑うと静かに立ち上がる
ノートの位置を整えて、テーブルのペンも端へ寄せる
そしてリビングの灯りを少し暗くする
〇〇が起きないように静かに寝室へ戻っていく
寝室へ入ると、さっきまで隣にいた温もりがなくなっているベッドがやけに広く感じる
北斗はベッドへ腰を下ろし、小さく息を吐く
でも頭の中にはさっき見たノートばかり浮かぶ
『北斗が好きそうなご飯』
『いつも助けてもらってるから』
北斗「……反則だろ」
枕に顔を埋めながら小さく呟く
こんなの見せられて平気でいられるわけがない
北斗は天井を見上げる
廉のことを聞いた時は苦しかったのに
今は胸の奥が温かくて苦しい
好きがどんどん積み重なっていく
止めようとしても無理だった
北斗「……寝よ」
そう呟きながらも口元は少し緩んだまま
北斗は〇〇の残り香がする布団へゆっくり沈み込んだ
ーーーーーーーーー
☀️朝。
静かな部屋に突然大きな声が響く。
〇〇「うぇぇぇぇぇ!!!!?」
北斗「っ!?」
北斗は勢いよく目を覚ます
まだ寝起きで頭も回っていない
〇〇「なにこれ!?!?!?」
北斗「……は?」
リビングの方からバタバタ音が聞こえる
北斗は眠そうなままベッドを出る
北斗「朝からうるさ……」
髪もぐちゃぐちゃのままリビングへ向かう
すると〇〇がノートを両手で持ちながら固まっていた
〇〇「え、え、え!?」
北斗「……」
〇〇「なんで書いてあんの!?」
北斗は一瞬で理解する
ノートのアドバイス欄
完全に見つかった
〇〇「北斗!?!?」
北斗「……見えたから」
〇〇「見えたからで書く!?」
北斗「書いた」
〇〇「いやいやいや!!!」
〇〇は顔真っ赤でノートを抱える
北斗はその反応が面白くて少し笑ってしまう
〇〇「しかも“頑張ってるのはすごい”って何!?」
北斗「そのまま」
〇〇「無理!!!恥ずかしい!!!」
〇〇はソファへ崩れ落ちる
耳まで赤い
北斗「夜中机で寝てる方が意味分かんなかったけど」
〇〇「だって……!」
北斗「二ヶ月も続いてんの笑った」
〇〇「見るなぁぁぁ!!」
〇〇はクッションを投げる
北斗は普通に避ける
北斗「料理上手くなる!!ためのノート」
〇〇「読むなぁぁぁ!!!」
北斗「“!!”ついてんのじわる」
〇〇「もうやだ!!!」
北斗は声を出して笑う
久しぶりにこんな楽しそうに笑っている
〇〇は恥ずかしすぎてソファへ顔を埋める
〇〇「最悪……」
北斗「いや」
〇〇「……?」
北斗は少しだけ笑いながら言う
北斗「嬉しかった」
その一言で〇〇はさらに固まった
〇〇「……っ」
顔を埋めたまま動けなくなる
耳まで真っ赤
北斗はそんな〇〇を見ながらまだ少し笑っている
〇〇「やだもう……」
北斗「なんで」
〇〇「恥ずかしいから!」
北斗「別にいいだろ」
〇〇「よくない!」
〇〇はノートをぎゅっと抱える
北斗「しかも普通に勉強してんの偉いし」
〇〇「言わないでぇ……」
北斗「三日坊主のお前が二ヶ月続いてんの感動した」
〇〇「だから言わないでって!」
北斗はまた笑う
〇〇は完全に羞恥で死にそうになっている
でも次の瞬間、北斗がふっと真面目な顔になる
北斗「……ありがとな」
〇〇「……え」
北斗「俺のためにやってくれてたんだろ」
〇〇は目を逸らす
〇〇「……まぁ」
北斗「なんか嬉しかった」
〇〇「……」
北斗「普通に」
〇〇は何も言えなくなる
北斗がこんなに真っ直ぐ言うの珍しくて余計に照れる
〇〇「……だって」
北斗「ん?」
〇〇「北斗いつもご飯作ってくれるし」
〇〇「私何もできないの嫌だったし」
北斗は静かに聞いている
〇〇「だからちょっとくらいちゃんとしたくて……」
北斗の胸がまたぎゅっとなる
北斗「十分ちゃんとしてる」
〇〇「してない」
北斗「してる」
〇〇「してない」
北斗「してるって」
〇〇は恥ずかしそうにクッションへ顔を埋める
北斗はそんな〇〇の頭をぽんっと軽く叩く
〇〇「なに!」
北斗「いや」
北斗「かわいいなと思って」
〇〇「……は!?!?」
今度は完全に停止する
北斗は言ったあとで自分でも少し固まる
リビングが一瞬静まり返った
リビングが静まり返る
〇〇は固まったまま北斗を見る
北斗も数秒遅れて自分の発言を理解する
北斗「……」
〇〇「……今なんて?」
北斗「なんでもない」
〇〇「いや聞こえたけど!?」
北斗「気のせい」
〇〇「“かわいい”って言った!」
北斗「言ってない」
〇〇「言った!!」
北斗は視線を逸らしながらソファへ座る
耳が少し赤い
〇〇はそれを見逃さない
〇〇「……ねえ」
北斗「なに」
〇〇「最近北斗おかしい」
北斗「は?」
〇〇「なんか前より変」
北斗「失礼だな」
〇〇「だって」
〇〇はノートを抱えたまま北斗を見る
〇〇「やたら優しいし」
北斗「前からだろ」
〇〇「いや違う」
〇〇「最近特に変」
北斗「気のせい」
〇〇「違うって」
〇〇はじーっと北斗を見つめる
北斗は居心地悪そうに目を逸らす
〇〇「なんかあった?」
北斗「別に」
〇〇「隠してる?」
北斗「隠してない」
〇〇「絶対なんかある」
北斗は小さくため息をつく
北斗「朝からめんどくせぇな」
〇〇「だってほんとなんだもん」
〇〇「最近距離近いし」
北斗「……」
〇〇「頭撫でる回数増えたし」
北斗「……」
〇〇「あとなんか、たまに顔優しい」
北斗は完全に黙る
図星すぎた
〇〇「ねえ」
北斗「……なに」
〇〇「好きな人とうまくいってる?」
その瞬間、北斗の動きが止まる
〇〇は真剣な顔で見ている
でも本人は全く気づいていない
北斗「……なんでそうなる」
〇〇「だってなんか余裕ある感じする」
北斗「余裕なんかねぇよ」
〇〇「え?」
北斗「……なんでもない」
北斗は顔を覆うように前髪をかき上げる
むしろ余裕なんてどんどんなくなっていた
〇〇「え、なになに??」
北斗「……」
〇〇「なにその反応」
北斗「別に」
〇〇「絶対別にじゃないじゃん」
〇〇はソファの上で北斗に近づく
完全に面白がっている顔
〇〇「えー気になる」
北斗「気にすんな」
〇〇「好きな人関係?」
北斗「……」
〇〇「え、図星?」
北斗は黙ったまま視線を逸らす
〇〇はその反応でさらにテンションが上がる
〇〇「えっなになに!?進展した!?」
北斗「してない」
〇〇「じゃあ両想い!?」
北斗「うるさい」
〇〇「えー絶対なんかあるじゃん!」
〇〇は北斗の顔を覗き込む
北斗は完全に困った顔になっている
〇〇「ねえ教えてよー」
北斗「やだ」
〇〇「なんで!」
北斗「めんどくさいから」
〇〇「えー!」
〇〇はケラケラ笑いながら北斗の腕を軽く揺らす
〇〇「誰ー?」
北斗「言わねぇ」
〇〇「芸能人?」
北斗「……」
〇〇「知ってる人?」
北斗「……」
〇〇「え、知ってる人なんだ!?」
北斗「お前ほんとめんどくせぇ……」
〇〇「えへへ」
北斗は深いため息をつく
でも〇〇は全く止まらない
〇〇「どんな人?」
北斗「うるさい」
〇〇「年上?」
北斗「……」
〇〇「年下?」
北斗「……」
〇〇「えー気になるぅぅ」
〇〇は完全に恋バナモード
でも北斗からしたら心臓に悪すぎる時間だった
〇〇「絶対北斗から好きになったでしょ」
北斗「……まあ」
〇〇「うわ珍しい!」
〇〇「で?かわいい系?綺麗系?」
北斗は数秒黙る
そのあと小さく呟く
北斗「……かわいい」
〇〇「へぇー!」
〇〇「北斗そういうタイプ好きなんだ!」
北斗はその無邪気な顔を見て、頭を抱えたくなった
〇〇「えーかわいい系なんだ」
北斗「……」
〇〇「なんか意外」
北斗「別に」
〇〇「でも北斗って確かに好きになったら甘やかしそう」
北斗「そんなことない」
〇〇「あるある」
〇〇は楽しそうに笑いながら北斗を見る
〇〇「絶対好きな人には優しいじゃん」
北斗「……普通」
〇〇「いや絶対特別扱いするタイプ」
北斗「しない」
〇〇「するってー」
〇〇は完全に面白がっている
でも北斗は笑えない
だって今、その“特別扱いしてる相手”が目の前にいるから
〇〇「ねえその人気づいてるのかな」
北斗「気づいてない」
〇〇「え!?そんな分かりやすいのに!?」
北斗「……」
〇〇「鈍感なんだ」
北斗「かなり」
〇〇「かわいそ北斗」
北斗「ほんとにな」
〇〇はケラケラ笑う
北斗はもう半分諦めた顔になる
〇〇「でもさー」
北斗「ん?」
〇〇「北斗なら普通に告白すればいけそうだけど」
北斗「無理」
〇〇「なんで?」
北斗「……今の関係壊したくないから」
〇〇「うわ」
北斗「何」
〇〇「ガチじゃん」
北斗「うるさい」
〇〇「えー青春だ」
北斗は思わず笑ってしまう
こんなに真横で本人に恋愛相談みたいなことしてる状況が意味分からなすぎた
〇〇「でも応援する」
北斗「……いらねぇ」
〇〇「えーなんで」
北斗「お前に応援されると無理そう」
〇〇「ひど!」
〇〇は笑いながらまたクッションを投げる
北斗はそれを片手で受け止めながら、小さく息を吐いた
好きすぎて、もうどうしようもなかった
〇〇「ねえ」
北斗「なに」
〇〇「今日夜カラオケ行かない?」
北斗「……は?」
急すぎる提案に北斗が止まる
〇〇は楽しそうにスマホをいじりながら続ける
〇〇「なんか急に行きたくなった」
北斗「急だなほんと」
〇〇「樹とか慎太郎とかジェシーとは行ったことあるんだけどさ」
北斗「……」
〇〇「北斗とはないなって思って」
北斗「別に行きたきゃ二人で行けばいいだろ」
〇〇「え、なんかそれ恥ずい」
北斗「なんでだよ」
〇〇「せっかくだからみんな誘お?」
北斗「みんなって」
〇〇「SixTONESとかtimeleszとか」
北斗「人数多」
〇〇「絶対楽しいじゃん!」
〇〇はもう完全に行く気満々
北斗は呆れながらそのテンションを見る
北斗「お前昨日まで落ち込んでた人間?」
〇〇「今日は元気」
北斗「切り替え早ぇ」
〇〇「よし、グループLINEする」
北斗「もう決定なんだ」
〇〇「北斗も来る?」
北斗「誘っといてそれ聞く?」
〇〇「ふふ」
〇〇はスマホをぽちぽち打ち始める
『今日夜暇な人カラオケいこー!』
数秒後。
慎太郎『いく!!!』
樹『急すぎん?笑』
ジェシー『カラオケダイスキ!』
風磨『また急だな姫野』
勝利『仕事終わり間に合えば行く!』
原『行きます!!』
どんどん返信が来る
〇〇「やばめっちゃ集まる」
北斗「行動力えぐ」
〇〇「北斗逃げられないね」
北斗「逃げる気ねぇよ」
〇〇「ほんとにー?」
北斗「お前いるなら行くしかないだろ」
〇〇「え?」
北斗「あ゛ー違う」
〇〇「今なんか言った!」
北斗「言ってない」
〇〇「絶対言った!!」
〇〇はまたケラケラ笑う
北斗は顔を逸らしながら小さくため息をついた
〇〇「え、聞こえなかった」
北斗「……」
〇〇「なんて?」
北斗「別に」
〇〇「いや今なんか言ったじゃん」
北斗「言ってない」
〇〇「言ってたってー」
〇〇はスマホを持ったまま北斗に近づく
〇〇「もう一回言って」
北斗「やだ」
〇〇「なんで!」
北斗「なんでも」
〇〇「気になるぅぅ」
〇〇は完全にしつこい
北斗は視線を逸らしながら小さく息を吐く
北斗「耳悪すぎだろ」
〇〇「だって小さかったもん」
北斗「聞こえなくていい」
〇〇「えー!」
〇〇は不満そうに口を尖らせる
でもすぐまたスマホへ視線を戻す
〇〇「やば、樹も来れるって」
北斗「ふーん」
〇〇「ジェシーもうテンション高い」
北斗「いつもだろ」
〇〇「あと風磨も来るって」
北斗「人数すごそう」
〇〇「絶対楽しいじゃん!」
〇〇はもうルンルンしている
北斗はそんな〇〇を見ながら少し笑う
さっきまで真っ赤になってノート抱えてたのに、もう完全にテンション切り替わってる
北斗「……ほんと忙しいやつ」
〇〇「なにー?」
北斗「別に」
〇〇「最近北斗“別に”多くない?」
北斗「気のせい」
〇〇「怪しい」
〇〇はじーっと北斗を見る
北斗はそれを避けるようにソファへ深く座り直した
この距離感にも、もう慣れてしまっている自分が一番危なかった
ーーーーーーーーー
🌙🌃
夜22:00。
仕事終わり。
それぞれ現場を終えたメンバー達がカラオケ店へ集まってくる。
最初に来ていたのは樹とジェシー。
ジェシー「ねぇ今日オール?」
樹「いや社会人なめんな」
ジェシー「えぇー」
そこへ慎太郎が勢いよく入ってくる
慎太郎「おつかれぇぇ!!」
樹「うるさ」
慎太郎「腹減った!」
ジェシー「それさっきも言ってた!」
ガチャ。
次に北斗が入ってくる
黒マスクにパーカー姿
樹「お、北斗」
北斗「おつかれ」
慎太郎「〇〇まだ?」
北斗「仕事押してるっぽい」
ジェシー「スターだネ〜」
北斗「お前もだろ」
さらに少しして風磨と勝利、原も合流する
風磨「人数多っ」
勝利「久々こういうの楽しみかも」
原「普通にテンション上がるんだけど」
部屋は一気に騒がしくなる
そして数分後。
ガチャ。
〇〇「おつかれぇぇ……」
仕事終わりの〇〇がやっと到着する
全員一気にそっちを見る
慎太郎「きたぁぁ!」
ジェシー「姫野ォー!!」
樹「主役遅いのよ」
〇〇「ごめんってぇ……」
〇〇は疲れた顔のままソファへ倒れ込む
風磨「顔死んでんじゃん」
〇〇「今日やばかった……」
勝利「大丈夫?」
〇〇「とりあえず歌えば回復する」
原「意味分かんないって笑」
北斗は少し離れた場所からそんな〇〇を見る
ちゃんと来たことに、少しだけ安心する
〇〇「北斗ー」
北斗「なに」
〇〇「隣空いてる?」
樹「夫婦かよ」
北斗「違ぇよ」
〇〇「えーいいじゃん」
〇〇はそのまま当然みたいに北斗の隣へ座る
慎太郎「自然すぎんだろその流れ」
風磨「もう慣れたわ」
ジェシー「同棲感スゴイネ!」
北斗「うるせぇ」
〇〇はケラケラ笑いながらマイクを取る
〇〇「よーし歌うぞー!!」
部屋の空気が一気に明るくなった
〇〇「最初なに歌うー?」
慎太郎「盛り上がるやつ!」
ジェシー「嵐とか?」
樹「あーいいね」
風磨「じゃあモンスターいく?」
〇〇「うわ懐かし!」
勝利「絶対盛り上がるじゃん」
原「もうイントロで勝ちだって」
ジェシーが素早く入力する
数秒後。
♪タカタン——
イントロが流れた瞬間、部屋が一気に湧く。
慎太郎「うわぁぁぁ!!!」
〇〇「きたきたきた!!」
樹「これテンション上がるわ」
全員マイクを回しながら歌い始める。
ジェシー「ゆ〜れるグラ〜デーション♪」
慎太郎「街を彩る〜♪」
〇〇「浮かび上がる〜♪」
風磨「謎めいた〜♪」
勝利も原も一緒に歌いながら笑っている。
北斗は少し後ろで座りながらその光景を見る。
でもサビに入った瞬間。
〇〇「モンスターーーー!!!」
慎太郎「うぉぉぉぉ!!!」
ジェシー「ヘイ!!」
カオス。
樹「うるせぇうるせぇ!!」
でも樹も普通に楽しそう。
〇〇はソファの上で立ち上がりそうなくらいノリノリで歌っている。
北斗「危ないから座れ」
〇〇「えへへ」
全然聞いてない。
風磨「〇〇今日テンション高っ」
〇〇「仕事終わったから!!」
原「分かる!!俺も今めっちゃ元気!」
勝利「原ちゃんずっと元気じゃん笑」
ラスサビ前。
ジェシー「北斗も歌え!!」
慎太郎「歌えぇぇ!!」
北斗「は?」
樹「いけいけ」
〇〇「北斗ー!!!」
マイクを向けられる。
北斗「……めんどくせぇ」
とか言いながらちゃんと歌う。
その瞬間。
〇〇「うわ北斗うまっ!!」
原「え、やば」
勝利「普通に聞き入った」
北斗「うるさい」
少し照れたみたいに笑う北斗に、〇〇は楽しそうに笑い返した
モンスターが終わったあとも、カラオケのテンションは全く落ちない。
慎太郎「次なに!?次!!」
樹「お前元気すぎるだろ」
〇〇「先輩縛りしたい!」
風磨「いいね」
ジェシー「じゃあKinKi Kids!」
勝利「うわ絶対盛り上がる」
そこからは完全にお祭り状態だった。
KinKi Kids、V6、NEWS、KAT-TUN、Hey! Say! JUMP、関ジャニ∞、King & Prince、Snow Man、なにわ男子。
イントロが流れるたびに誰かしらが叫ぶ。
〇〇「うわそれ好きーー!!」
慎太郎「きたぁぁ!!!」
原「懐かしっ!!」
ジェシー「イェーーーー!!」
樹「お前ら毎回リアクションでかいのよ」
途中から立ち上がる人まで出始める。
風磨「もうライブじゃんこれ」
勝利「酸欠なる笑」
〇〇はマイク片手にノリノリで飛び跳ねている。
北斗「だから危ないって」
〇〇「だいじょーぶ!!」
慎太郎「〇〇元気すぎ!!」
〇〇「今日だけは無敵!!」
ジェシーが突然バラードを入れる。
ジェシー「次これ〜」
イントロが流れた瞬間。
全員「おぉぉ〜〜」
さっきまで暴れていたのに急にしっとり歌い始める。
樹「情緒どうなってんだよ」
原「カラオケってこういうもんじゃん?」
風磨「確かに」
〇〇も静かに歌い始める。
空気が少し変わる。
その瞬間、北斗はふと〇〇を見る。
歌ってる時の顔。
少し目を細める癖。
マイク持つ手。
楽しそうに笑う顔。
北斗「……」
やっぱり目で追ってしまう。
すると〇〇が歌いながら北斗を見る。
〇〇「北斗も歌って!」
北斗「えー」
〇〇「歌ってよー!」
慎太郎「聞きたい!!」
ジェシー「ホクトォォ!!」
樹「逃がさねぇぞ」
北斗「めんどくせぇな……」
そう言いながらマイクを持つ。
イントロが流れる。
北斗が歌い出した瞬間
〇〇「やっぱうま……」
思わず小さく漏れる。
勝利も原も普通に聞き入っている。
風磨「声ずるいわ」
樹「なんでこいつ普段こんな静かなのに歌うとこうなんだよ」
北斗「うるさい」
でも少しだけ楽しそうに笑っていた
ひと通りみんなで盛り上がったあと、少し落ち着いた空気になる。
樹「次なんか十八番いこうぜ」
慎太郎「おーいいじゃん!」
ジェシー「お気に入り曲ネ!」
風磨「その人っぽいの出るやつね」
原「うわ緊張するかも」
勝利「絶対性格出る笑」
そこから順番に好きな曲を入れていく。
ジェシーは洋楽混じりで盛り上げ、慎太郎は全力系、樹はラップ強め。
風磨は色気ある曲を歌って、勝利は優しいバラード。
原は楽しそうに王道アイドル曲を歌いながら盛り上げる。
そして次。
〇〇「じゃあ次わたしー」
〇〇がマイクを持つ。
さっきまで騒いでいた空気のまま、みんな普通に次の曲を待っていた。
でも。
イントロが流れた瞬間、空気が変わる。
宇多田ヒカルの『First Love』。
樹「おぉ……」
風磨「そっちか」
〇〇は静かにマイクを持つ。
さっきまで大騒ぎしていた人と同じとは思えないくらい空気が違う。
〇〇「最後のキスは〜♪」
その瞬間。
全員少し静かになる
慎太郎「……」
ジェシー「……ワォ」
勝利も原も自然と聞き入る。
〇〇は目を閉じながら丁寧に歌う。
感情を乗せるみたいに。
普段うるさいくらい明るいのに、この時だけ一気に空気を変える。
北斗は無言で〇〇を見る。
北斗「……」
知ってる声のはずなのに、歌ってる時だけ別人みたいだった。
静かで、綺麗で、切ない。
樹「ギャップえぐ……」
風磨「分かる」
原「普通に鳥肌なんだけど」
でも〇〇は歌に集中していて気づいていない。
ラスサビ。
少しだけ感情が揺れる歌い方。
その瞬間、北斗は完全に目を離せなくなる。
歌い終わる。
数秒静かになる部屋。
そして。
慎太郎「うわぁぁぁぁ!!!」
ジェシー「スゴーーイ!!」
樹「いやうっま」
勝利「普通にライブじゃん」
原「やばかったって今の……」
〇〇は照れくさそうに笑う。
〇〇「やめてやめて恥ずい!」
風磨「いつものお前どこ行ったんだよ」
〇〇「なにそれ笑」
その横で北斗だけはまだ少し黙ったまま。
樹「北斗?」
北斗「……え?」
樹「見入りすぎだろ」
北斗「見てねぇよ」
でも耳は少し赤かった
〇〇のFirst Loveで一回しっとりした空気になったものの、数分後にはまたいつもの騒がしいテンションへ戻る。
慎太郎「よし次デュエット!!」
ジェシー「あり!!」
樹「絶対カオスになるやつ」
風磨「誰と誰組む?」
原「もう早い者勝ちじゃん?」
そこからは二人組で曲を入れ始める。
慎太郎とジェシーで盛り上げ曲。
風磨と勝利でしっとり系。
樹と原はノリ重視。
そして。
〇〇「北斗歌おー」
北斗「は?」
〇〇「ほらデュエット!」
北斗「なんで俺」
樹「いやそこだろ普通」
ジェシー「キタキタァ!!」
慎太郎「夫婦コンビ〜!!」
北斗「違ぇよ」
〇〇「いいじゃん!」
〇〇は勝手に曲を入れる。
イントロが流れた瞬間。
風磨「うわそれ選ぶ?」
勝利「絶対合うじゃん」
二人で歌うラブソング系。
〇〇はノリノリでマイクを北斗へ向ける。
〇〇「はい北斗パート!」
北斗「めんど……」
とか言いながらちゃんと歌う。
その瞬間。
慎太郎「うぉぉぉぉ!!!」
ジェシー「イイヨイイヨー!!」
樹「声の相性いいなマジで」
原「普通に強いってこの二人」
〇〇は楽しそうに笑いながら歌う。
北斗も最初は嫌そうだったのに、途中から普通に楽しそう。
サビ。
二人でハモる。
風磨「うわズル」
勝利「めっちゃ綺麗」
〇〇は笑いながら北斗を見る。
〇〇「北斗ちゃんと歌って!」
北斗「歌ってるだろ」
〇〇「声ちっちゃい!」
北斗「お前がデカいんだよ」
でも北斗の口元は少し笑っている。
曲が終わると部屋は拍手と歓声。
慎太郎「よかったぁぁ!!」
ジェシー「カップル感スゴイ!!」
樹「距離感自然すぎんのよ」
北斗「うるせぇ」
〇〇「楽しかったー!」
〇〇は満足そうにソファへ倒れ込む。
その横で北斗も小さく笑っていた。
慎太郎「次なに歌うー?」
ジェシー「もっと盛り上がりたい!」
樹「〇〇なんか十八番もう一個ないの?」
〇〇「えーもうないー」
風磨「嘘つけ」
原「あれあるじゃん」
勝利「あー」
樹「確かに」
〇〇「……なに」
慎太郎「トリセツ」
〇〇「やだ!!」
ジェシー「聞きたい!!」
風磨「〇〇のトリセツ普通に強い」
原「俺も聞きたい!」
勝利「久々に聞きたいかも」
〇〇は顔をしかめる
〇〇「えー恥ずいって」
樹「絶対歌え」
慎太郎「はい決定〜!」
ジェシーが勝手に入れる。
イントロが流れた瞬間。
〇〇「あ゛ーーーもう!!」
みんな爆笑。
風磨「諦めろ笑」
〇〇「最悪なんだけどー!!」
でもマイクを持つと、なんだかんだちゃんと歌う。
しかも途中から普通にノってくる。
〇〇「この度はこんな私を選んでくれてどうもありがとう〜♪」
慎太郎「きたぁぁ!!」
ジェシー「カワイイ〜!!」
原「やば、めっちゃ合う」
〇〇はだんだん調子に乗ってくる。
立ち上がって歌い始める。
樹「出た出た笑」
風磨「始まったわ」
〇〇「急に不機嫌になることがあります〜♪」
歌いながらみんなを指差す。
大盛り上がり。
でも北斗だけは少し静かだった。
〇〇が歌いながらふと北斗を見る。
目が合う。
その瞬間。
北斗「……」
心臓が跳ねる。
〇〇は楽しそうに笑いながらそのまま歌い続ける。
でも北斗はもうまともに見れない。
サビ。
〇〇がマイクを向ける。
〇〇「これからもどうぞよろしくね〜♪」
北斗とまた目が合う。
ドキッとする。
北斗は思わず視線を逸らす。
慎太郎「北斗顔赤くね!?」
北斗「うるせぇ」
樹「分かりやす笑」
ジェシー「北斗照れてる〜!!」
〇〇「え、なんで?」
本人だけ何も分かってない。
北斗は小さくため息をつきながら、もう一度〇〇を見る。
やっぱりかわいかった
トリセツで大盛り上がりしたあと、みんな少し笑い疲れたみたいにソファへ戻る。
樹「いや〇〇強すぎだろ」
〇〇「もうやだ恥ずかしい!」
慎太郎「めっちゃ可愛かった!」
風磨「完全にライブだったわ」
原「普通に動画撮りたかったもん」
〇〇「やめて!?」
ジェシー「次は〜?」
勝利「またソロタイムいく?」
樹「いいね」
そこからまたそれぞれ好きな曲を入れ始める。
盛り上げ曲だったり、バラードだったり。
部屋の空気が曲ごとに変わっていく。
そして。
慎太郎「次北斗じゃん」
〇〇「お、なに歌うのー?」
北斗「……別になんでも」
樹「そういうやつが一番ちゃんと決めてんのよ」
曲名が表示される。
『ドライフラワー』
〇〇「え」
風磨「うわ」
勝利「合うなぁ……」
ジェシー「絶対いい、」
イントロが流れる。
さっきまで騒がしかった部屋が自然と静かになる。
北斗はソファに座ったままマイクを持つ。
目線は画面。
そして歌い始めた瞬間。
〇〇「……」
思わず見入る。
低くて優しい声。
静かな歌い方なのに感情がちゃんと伝わる。
樹もジェシーも静かに聞いている。
慎太郎ですら途中から黙る。
〇〇は北斗を見る。
いつもの北斗と少し違う。
優しくて、切なくて、少し寂しそう。
サビ。
北斗が少し目を伏せながら歌う。
その瞬間、〇〇の胸がなんとなくぎゅっとなる。
〇〇「……」
理由は分からない。
でも、なんか苦しくなるくらい良かった。
風磨も小さく笑いながら聞いている。
勝利は普通に聞き入ってる。
原も「やば……」って小さく呟いていた。
そして曲が終わる。
数秒静か。
慎太郎「……えっぐ」
ジェシー「北斗やばいよ」
樹「なんでこんな上手いんだよ」
風磨「声ずる」
原「普通にライブ来たかと思った」
〇〇だけ少し遅れて口を開く。
〇〇「……なんか」
北斗「なに」
〇〇「切な」
北斗は一瞬だけ〇〇を見る。
その目が合った瞬間、また心臓が跳ねた。
樹「いやマジでよかったわ」
慎太郎「北斗ってこういう曲ほんと合うよな」
ジェシー「普通に聞き入った」
風磨「感情乗せるのうまいんだよな」
勝利「空気変わったもん」
原「なんか映画見たあとみたいだった」
北斗「盛りすぎ」
少し照れたみたいに笑う。
でも〇〇はまだ北斗を見ていた。
〇〇「なんかさ」
北斗「ん?」
〇〇「失恋した?」
全員「はははっ!!」
北斗「してねぇよ」
樹「でも分かるわ」
慎太郎「めっちゃ感情入ってた!」
〇〇「なんかリアルだった」
北斗「うるさい」
〇〇はクスクス笑う。
でも少しだけ気になる。
あんな顔して歌うんだ。
好きな人いるって言ってたし。
もしかしてその人のこと考えてたのかな。
〇〇「……」
なんとなく胸がざわつく。
でも理由は分からない。
その空気を変えるみたいにジェシーが立ち上がる。
ジェシー「次盛り上げようぜ!」
慎太郎「いぇーーい!!」
樹「情緒忙しすぎるだろ」
風磨「カラオケってそんなもん」
〇〇もすぐ笑いながらマイクを取る。
〇〇「よし次騒ぐ!!」
北斗はそんな〇〇を見ながら小さく息を吐く。
さっき歌ってる時、ずっと見られてた。
それだけでまともに心臓が持たなかった
そこからまた部屋のテンションは一気に戻る。
〇〇「次はもう身内曲いこ!!」
慎太郎「きたぁぁ!!」
樹「結局そこな」
風磨「絶対盛り上がるやつじゃん」
原「もうライブ状態だって」
ジェシー「よーし騒ぐぞー!」
まずはSixTONES。
イントロが流れた瞬間。
慎太郎「うぉぉぉ!!!」
樹「はいはい盛り上がっていきましょー」
ジェシー「ヘイ!!」
部屋の空気が一気にライブみたいになる。
マイク回しながら全員で歌う。
〇〇「これ好きーー!!」
風磨「〇〇普通に歌詞覚えてんな」
〇〇「当たり前じゃん!」
勝利「ノリ方完璧なんだけど笑」
サビでは慎太郎とジェシーが立ち上がる。
樹「お前ら絶対座れないよな」
原「いやでもこれは立つ!」
北斗「うるさ……」
とか言いながら北斗も少し笑っている。
そして次はtimelesz。
〇〇「きたぁぁぁ!!!」
今度は〇〇がテンション爆上がり。
風磨「はい本人楽しそうでーす」
勝利「分かりやす笑」
原「〇〇もう顔違うって!」
timelesz曲では〇〇がセンターみたいに歌い始める。
慎太郎「ライブじゃん!!」
ジェシー「盛り上がるー!!」
〇〇はノリノリでみんなにマイクを向ける。
〇〇「歌ってぇぇ!!」
北斗「近い近い」
〇〇「もっと声出して!!」
樹「お前店員かよ」
大爆笑。
途中からもう全員ぐちゃぐちゃ。
ソファの上で跳ねる慎太郎。
踊り出すジェシー。
笑いながら歌う風磨と勝利。
原も完全にテンションが上がってる。
北斗はその騒がしい空間を見ながら少し笑う。
そしてその中心にはいつも〇〇がいる。
〇〇「北斗ーー!!」
北斗「なに」
〇〇「ここ歌って!!」
急にマイクを押し付けられる。
北斗「は!?」
でもちゃんと歌う。
その瞬間。
慎太郎「うわぁぁぁ!!」
樹「はい優勝」
風磨「やっぱ強いわ」
〇〇は楽しそうに笑いながら北斗を見る。
その笑顔を見るたび、北斗の心臓は忙しかった。
気づけば時計は1:00を回っていた。
慎太郎「……え?」
樹「うわやば」
ジェシー「時間早すぎない!?」
風磨「普通に歌いすぎた」
勝利「明日仕事なんだけど笑」
原「でも楽しすぎたって」
部屋の中は完全にライブ終わりみたいな空気。
飲み物は空、みんな少し声枯れてる。
〇〇「やばぁ……」
ソファへ倒れ込む。
北斗「お前一番騒いでた」
〇〇「楽しかったんだもん」
慎太郎「分かる!!」
樹「お前ら元気すぎんのよ」
すると〇〇のスマホが震える。
〇〇「あ、マネだ」
〇〇が電話に出る。
〇〇「はーい」
マネ『そろそろ帰るよー。下着いた』
〇〇「あ、はーい」
電話を切る。
〇〇「迎え来たって」
風磨「もうそんな時間か」
勝利「一瞬だったな」
ジェシー「まだ歌えるのにー!」
樹「お前は元気すぎ」
慎太郎「でもマジ楽しかった!」
原「またやろうよ!」
〇〇「やろやろ!!」
みんな帰る準備を始める。
マイクを戻して、荷物を持って、まだ少し笑いながら話している。
〇〇「喉終わったかも」
北斗「騒ぎすぎ」
〇〇「北斗だって結構歌ってたじゃん」
北斗「お前らが歌わせたんだろ」
樹「でもドライフラワー良かったよな」
慎太郎「分かる!!」
ジェシー「また聞きたい!」
北斗「もう歌わねぇ」
〇〇はそのやり取りを見ながらクスクス笑う。
そのあと全員でエレベーターへ向かう。
深夜テンションでまだ騒がしい。
風磨「絶対次筋肉痛なるわ」
勝利「カラオケで筋肉痛って何笑」
原「飛びすぎた!」
慎太郎「ジェシーが悪い!」
ジェシー「えぇ!?」
店の前でそれぞれの車やタクシーへ向かう。
〇〇「じゃあまたねー!」
樹「おつかれー」
慎太郎「次もっと歌おうな!!」
北斗「今日十分だろ」
〇〇は笑いながらみんなに手を振る。
その横で北斗も小さく笑っていた。
〇〇はマネージャーの車へ乗り込む。
北斗も自然に隣へ座る。
ドアが閉まった瞬間、さっきまでの騒がしさが嘘みたいに静かになる。
〇〇「はぁぁぁ……」
シートへ沈み込む。
マネ「お疲れさま。めっちゃ楽しそうだったね」
〇〇「楽しかったぁ……」
北斗「騒ぎすぎだけどな」
〇〇「北斗も楽しそうだったじゃん」
北斗「別に」
〇〇「出た“別に”」
〇〇はクスクス笑う。
車はゆっくり走り出す。
マネ「みんな元気だねほんと」
〇〇「途中ライブだったもん」
北斗「慎太郎とジェシーが特にうるさかった」
〇〇「でも北斗のドライフラワーやばかった」
北斗「もうその話やめろ」
〇〇「えーなんで?」
〇〇はまだ楽しそう。
〇〇「なんかさ、めっちゃ感情入ってたよね」
北斗「入ってない」
〇〇「入ってたってー」
マネも前で少し笑っている。
〇〇「あとトリセツの時顔赤かった」
北斗「知らねぇ」
〇〇「絶対照れてた!」
北斗「うるさい」
〇〇は声を出して笑う。
カラオケ終わりでテンションがまだ高い。
でも少しして。
〇〇「……ふわぁ」
大きなあくび。
北斗「急に電池切れたな」
〇〇「ねむい……」
マネ「そりゃ一時だもん」
〇〇「今日いっぱい歌った……」
〇〇はそのまま窓にもたれる。
数分後にはもう半分寝かけていた。
北斗はそんな〇〇を横目で見る。
楽しそうに笑って、騒いで、歌って。
そのあと急に眠そうになる。
北斗「……ガキ」
小さく呟く。
でもその目は優しかった。
車の中は静かだった。
〇〇は窓にもたれたまま、もうほとんど寝かけている。
マネージャーも運転に集中していて、会話はない。
その静けさの中で、北斗は今日のカラオケを思い返していた。
ーーーーーーーーー
北斗side
〇〇のFirst Love。
いつもの騒がしさが嘘みたいに静かで、綺麗だった声。
トリセツ歌いながら笑ってた顔。
目が合った瞬間。
ドキッとした自分。
デュエットで自然にハモった時。
隣で笑ってた横顔。
北斗「……」
全部頭に残ってる。
しかも今日はやたら距離が近かった。
隣座ってきたり。
マイク向けてきたり。
笑いながら腕掴んできたり。
本人は何も考えてない。
それが一番たち悪い。
北斗は小さく息を吐く。
ドライフラワー歌ってる時もずっと見られてた。
“切な”って言われた時、一瞬心臓止まるかと思った。
好きな人の前で失恋ソング歌うとか意味分からない。
北斗「……何やってんだろ」
小さく呟く。
でも楽しかった。
めちゃくちゃ。
〇〇が笑ってるだけで空気が明るくなる。
真ん中に自然と人が集まる。
みんな〇〇を見て笑う。
北斗は窓の外を見る。
その中心にいる〇〇を、自分もずっと見てしまう。
北斗「……好きすぎる」
本当にまずいと思う。
同居して。
毎日一緒にいて。
こんな時間まで一緒に笑って。
好きにならない方が無理だった。
その時。
〇〇「……ほくと」
寝ぼけた声。
北斗が見ると、〇〇は寝たまま小さく北斗の腕に寄ってきていた。
北斗「……っ」
心臓がうるさい。
でも〇〇は全く無意識。
北斗は少しだけ困ったみたいに笑って、小さく肩を貸した。
車がマンションの地下駐車場へ入っていく。
マネ「着いたよー」
〇〇「……んぅ」
でも〇〇はまだ半分寝ている。
北斗「〇〇、着いた」
〇〇「……ねむい」
北斗「知ってる」
〇〇は北斗の腕に寄りかかったまま動かない。
マネ「完全に電池切れだね笑」
北斗「騒ぎすぎたから」
北斗は小さくため息をついて〇〇の肩を軽く揺らす。
北斗「起きろ」
〇〇「むり……」
北斗「ガキか」
でも少し笑ってる。
数秒後、〇〇はようやく目を開ける。
〇〇「……帰ってきた?」
北斗「とっくに」
〇〇「んー……」
ぼーっとしたまま車を降りる。
マネ「お疲れ!明日昼からだから少し寝なね!」
〇〇「はーい……」
北斗「おつかれさまです」
二人でエレベーターへ向かう。
深夜1:30過ぎ。
さすがに静か。
〇〇「……たのしかった」
北斗「ん」
〇〇「また行きたい」
北斗「お前喉死ぬぞ」
〇〇「でも楽しかったぁ……」
眠そうに笑う。
エレベーターの中。
〇〇は壁にもたれながら立っている。
そしてふらっと北斗側へ傾く。
北斗「危な」
反射的に肩を支える。
〇〇「ありがと……」
北斗「ちゃんと立て」
〇〇「ねむい……」
完全に赤ちゃん状態。
北斗は呆れながらも、そのまま〇〇を支える。
静かなエレベーターの中で、北斗だけ心臓がうるさかった。
家へ入った瞬間、〇〇は「つかれたぁぁ……」とそのままソファへ倒れ込む。
北斗「風呂入れよ」
〇〇「むりぃ……」
北斗「そのまま寝んなよ」
〇〇「ちょっとだけ……」
そう言いながらクッション抱えて丸くなる。完全に眠そう。
北斗は靴を脱ぎながら小さく笑う。さっきまであんな騒いでたのに、今はもう限界らしい。
北斗「ほら、水」
冷蔵庫から水を取って渡す。
〇〇「ん……ありがと」
眠そうな顔のまま受け取る。
数口飲んでまたソファへ沈む。
北斗はジャケットを脱ぎながら今日のことを思い返す。
カラオケで笑ってた顔。
歌ってた声。
目が合った瞬間。
全部まだ頭に残ってる。
〇〇「……ねぇ」
北斗「ん?」
〇〇「今日たのしかったね」
北斗「そうだな」
〇〇「また行きたい」
北斗「しばらく喉休めろ」
〇〇「えー」
〇〇は眠そうに笑う。
北斗「とりあえず風呂」
〇〇「わかってるぅ……」
〇〇は重そうに立ち上がる。
でも数歩歩いて止まる。
〇〇「……ねむ」
北斗「だから早く入れって」
〇〇「北斗今日めっちゃ歌うまかった」
北斗「今その話?」
〇〇「ドライフラワーよかった」
北斗「はいはい」
〇〇「なんか切なかったし」
北斗「……もういいって」
〇〇「ふふ」
〇〇は満足そうに笑うと、そのまま洗面所の方へ歩いていく。
北斗はその後ろ姿を見ながら、小さくため息をついた。
ほんと、振り回される。
数十分後。
洗面所のドアが開く。
〇〇「はぁぁぁ……生き返った……」
北斗「おせぇ」
〇〇「ちゃんと入っただけ偉くない?」
北斗「普通」
〇〇は髪をタオルでわしゃわしゃ拭きながらリビングへ戻ってくる。
ゆるい部屋着。
まだ少し眠そう。
そのままソファへ座る。
〇〇「次北斗ねー」
北斗「はいはい」
北斗は立ち上がりながら水を一口飲む。
〇〇はぼーっとその後ろ姿を見る。
〇〇「ねぇ」
北斗「ん?」
〇〇「今日ほんと楽しかった」
北斗「まだ言ってんの?」
〇〇「余韻」
北斗は少し笑う。
北斗「じゃあ次は喉治してからな」
〇〇「うん」
北斗はそのまま洗面所へ向かう。
ドアが閉まる音。
〇〇はソファに沈みながら小さく息を吐く。
なんか今日の北斗、いつもより優しかったな。
そんなことをぼんやり考えながら、〇〇はクッションを抱え直した。
北斗が風呂から上がる頃には、リビングは静かになっていた。
北斗「……?」
タオルで髪を拭きながらリビングへ来る。
するとソファで〇〇が寝落ちしていた。
クッションを抱えたまま、小さく丸くなって眠っている。
テーブルの上には途中まで飲んだ水。
スマホだけが小さく音楽を流していた。
北斗はそのまま足を止める。
流れていた曲。
さっきカラオケで歌っていた曲のプレイリスト。
でも今流れているのは、静かなラブソングだった。
〇〇「……すぅ」
完全に寝てる。
北斗は小さく笑う。
北斗「だから寝るなって言ったのに」
でも起こす気にはなれない。
ソファへ近づく。
スマホを手に取る。
画面には音楽アプリ。
そこに並ぶ曲を見て、北斗は少しだけ目を細める。
失恋ソング。
ラブソング。
今日カラオケで歌ってた曲。
〇〇らしいプレイリストだった。
その時、流れてきたサビ。
さっき〇〇が歌っていた時の顔を思い出す。
北斗「……」
心臓がまたうるさい。
ほんと今日ずっと振り回されてる。
北斗は音量を少し下げる。
そのあとソファの背にかかっていたブランケットを手に取る。
そしてそっと〇〇へかけた。
〇〇「……ん」
少しだけ動く。
でも起きない。
北斗はそのまま〇〇を見る。
濡れた髪。
眠そうな顔。
安心しきった寝顔。
北斗「……無防備すぎ」
小さく呟く。
そのあとスマホから流れる静かな音楽を聞きながら、北斗はソファの前へゆっくり座った。
北斗はソファの前に座ったまま、眠る〇〇を見る。
スマホから静かに音楽が流れている。
部屋も暗くて、聞こえるのはその音楽と〇〇の寝息だけ。
北斗「……ほんと自由」
小さく笑う。
数時間前まであんな騒いでたのに、今はもう完全に電池切れ。
北斗「歌って、騒いで、眠くなったらそのまま寝るし」
〇〇「……ん」
北斗「しかも人の心臓だけ無駄に忙しくして」
もちろん本人は何も知らない。
北斗はソファへ軽く頭を預けながら天井を見る。
今日だけで何回ドキッとしたか分からない。
トリセツ歌って笑ってた顔。
First Love歌ってた時の横顔。
ドライフラワー聞いてる時の目。
全部頭から離れない。
北斗「……重症だろこれ」
小さくため息混じりに呟く。
〇〇は気持ちよさそうに眠ったまま。
北斗「こんな近くにいてさ」
北斗「毎日一緒にいて」
北斗「好きになんなって方が無理だって……」
静かな声が部屋へ落ちる。
でも〇〇は起きない。
北斗は少しだけ笑う。
北斗「まぁ、気づくわけねぇか」
そう呟きながら、そっと〇〇の前髪を指で避けた。
北斗は眠る〇〇を見ながら、小さくぶつぶつ呟く。
北斗「……鈍感だし」
〇〇「……」
北斗「距離近ぇし」
北斗「普通に腕掴むし」
北斗「目合うたび笑うし」
小さくため息。
北斗「しかも本人なんも分かってない」
〇〇は気持ちよさそうに眠ったまま。
北斗「好きな人いる?とか聞いてくるくせに」
北斗「お前だよって何回思ったか……」
ソファへ頭を預けながら苦笑する。
北斗「ほんと鈍感」
でも嫌じゃない。
むしろその無邪気さにやられてる。
北斗はそっと〇〇の髪を触る。
北斗「……かわいいし」
言ったあと自分で少し笑う。
誰にも聞かれてないからこそ出る本音。
北斗「これで気づかれてたら終わってる」
〇〇「……んぅ」
少しだけ動く。
北斗は手を止める。
でも〇〇はまた静かに寝息を立て始めた。
北斗「……無防備」
小さく呟いて、北斗はまた〇〇を見つめた。
時計を見ると、もうすぐ2:30。
北斗「……やば」
さすがに寝ないとまずい。
でも〇〇はソファで完全に熟睡している。
北斗「〇〇」
軽く呼んでみる。
〇〇「……んー」
起きない。
北斗「ベッド行くぞ」
〇〇「むり……」
目も開けないまま返事だけする。
北斗は小さくため息をつく。
北斗「絶対そう言うと思った」
しばらく〇〇を見る。
ブランケットにくるまって、安心しきった顔で寝てる。
北斗「……」
数秒迷ったあと、北斗はゆっくり〇〇へ近づく。
そしてそっと肩へ手を回す。
〇〇「……ん」
眠ったまま小さく動く。
北斗「起きろー」
〇〇「ねむい……」
北斗「知ってる」
結局、北斗は〇〇を支えるようにゆっくり立たせる。
〇〇は半分寝たまま北斗にもたれかかる。
北斗「歩ける?」
〇〇「……たぶん」
全然たぶんじゃない。
北斗は苦笑しながらそのまま寝室へ連れていく。
静かな廊下。
〇〇はふらふらしながら北斗の服を掴んでいる。
北斗「子どもかよ」
〇〇「……んー」
もう会話になってない。
寝室へ入る。
北斗はそっとベッドへ〇〇を座らせる。
〇〇はそのままぽすっと倒れ込む。
北斗「だからソファで寝んなって」
〇〇「……ほくと」
北斗「ん?」
〇〇「たのしかった」
眠そうに笑う。
北斗の胸がまた苦しくなる。
北斗「……よかったな」
〇〇は安心したみたいに目を閉じる。
数秒後にはもう寝息が聞こえていた。
北斗はその横で小さく笑って、部屋の灯りを落とした。
ーーーーーーーーー
☀️次の日。
カーテンの隙間から朝の光が入ってくる。
静かな寝室。
〇〇は布団にくるまったまま小さく動く。
〇〇「……ん」
まだ眠い。
昨日寝たの遅すぎた。
隣を見る。
北斗はもう起きていた。
ベッドの端に座りながらスマホを見ている。
〇〇「……おはよ」
北斗「おはよ」
〇〇「ねむ……」
北斗「そりゃ三時前に寝たし」
〇〇はまた布団へ潜る。
北斗はそんな〇〇を見ながら少し笑う。
北斗「今日昼からだろ」
〇〇「うん……」
北斗「起きろ」
〇〇「あと5分……」
完全に子ども。
北斗「それ毎回30分コース」
〇〇「違うもん……」
声がもう眠い。
北斗は小さくため息をつく。
その時。
〇〇のスマホが震える。
〇〇「……んぇ」
北斗「鳴ってる」
〇〇は布団から手だけ出してスマホを探す。
やっと掴んで画面を見る。
〇〇「あ」
北斗「誰」
〇〇「廉」
その瞬間。
北斗の動きが止まる。
〇〇はまだ半分眠そうなまま電話に出る。
〇〇「もしもし……」
廉『おはよ。起きてた?』
〇〇「今起きた……」
廉が少し笑う声。
廉『昨日遅かった?』
〇〇「うん、みんなでカラオケ行ってた」
廉『いいな、それ』
北斗は横で無言のままスマホを見るふりをしている。
でも耳は完全に会話を聞いていた。
廉『今日さ、夜会えたりする?』
〇〇「今日?」
廉『うん。そっち行こうかなって』
その瞬間。
北斗の指がぴたりと止まる。
〇〇「え、ほんと?」
廉『久しぶりにちゃんと会いたい』
〇〇「……」
〇〇は少し黙る。
北斗はその空気だけで胸がざわつく。
廉『無理そう?』
〇〇「いや……大丈夫だと思う」
廉『じゃあ終わったら連絡する』
〇〇「うん」
廉『楽しみにしてる』
〇〇「ふふ、うん」
電話が切れる。
寝室が静かになる。
〇〇「……」
北斗「……」
数秒沈黙。
〇〇はスマホを見ながらぼーっとしている。
北斗は先に視線を逸らした。
北斗「……来るんだ」
〇〇「うん、久しぶりに」
嬉しそうな声。
その一言だけで、北斗の胸が重くなる。
〇〇「どうしよ、部屋片付けなきゃ」
北斗「別に今でも綺麗だろ」
〇〇「えーでもなんか緊張する」
北斗「……」
〇〇はまだ気づいてない。
北斗がどんな気持ちでそれ聞いてるか。
北斗は小さく息を吐く。
北斗「よかったじゃん」
そう言うしかなかった。
ーーーー
夜。
〇〇は仕事を終えて急いで家へ帰ってくる。
時計は20:40。
玄関を開けると、先に帰っていた北斗がソファに座っていた。
〇〇「ただいま!」
北斗「おかえり」
〇〇「やばい時間ない!」
北斗「まだ来てねぇだろ」
〇〇「でも久々だし!」
〇〇はそのままバタバタと部屋を動き回る。
クッション直して、テーブル片付けて、鏡見て髪整えて。
また鏡見る。
北斗「……落ち着けって」
〇〇「無理!」
北斗はそんな〇〇を静かに見る。
嬉しそうで、そわそわしてて、少し緊張してる顔。
全部北斗の知らない顔じゃないのに、今日はやけに胸が苦しい。
〇〇「ねぇこの服変じゃない?」
北斗「普通」
〇〇「普通ってなに!」
北斗「似合ってる」
〇〇「ほんと?」
北斗「……ん」
〇〇は少し安心したみたいに笑う。
その笑顔に北斗はまた目を逸らした。
その時。
ピンポーン。
〇〇「っ」
空気が止まる。
〇〇「き、きた……」
北斗「……」
〇〇は一回深呼吸する。
そして玄関へ向かう。
ドアを開ける。
〇〇「……廉」
廉「久しぶり」
久しぶりに会う廉は、少しだけ大人っぽくなっていた。
〇〇は一瞬だけ言葉が止まる。
でも次の瞬間、嬉しそうに笑った。
〇〇「入って入って!」
すると廉は少し困ったみたいに笑う。
廉「……いや」
〇〇「え?」
廉「さすがに入るのはやめとく」
〇〇がきょとんとする。
廉「好きな人が他のやつと同居してる部屋とか普通に嫌だし」
その言葉に〇〇の動きが止まる。
リビングにいる北斗も静かに目を伏せる。
廉は少し笑いながら続ける。
廉「一階のとこでもいい?」
〇〇「……」
胸が少しだけドキッとする。
廉は昔と変わらない優しい顔で〇〇を見ていた。
〇〇「……あ」
廉「ごめん、なんか」
〇〇「いやっ全然!」
〇〇は慌てて首を振る。
でも心臓が少しうるさい。
廉「行こ?」
〇〇「う、うん」
〇〇は一回だけ後ろを見る。
リビングにいる北斗と目が合う。
北斗「……」
〇〇「ちょっと行ってくるね」
北斗「ん」
短い返事。
でも表情は読めない。
〇〇はそのまま廉と一緒にエレベーターへ向かう。
ドアが閉まる。
静か。
久しぶりに二人きり。
〇〇「なんか変な感じ」
廉「分かる」
廉は小さく笑う。
〇〇もつられて笑った。
一階へ着く。
マンションのラウンジみたいなスペース。
夜だから人も少ない
廉「ここなら落ち着くかなって」
〇〇「うん」
二人並んで座る。
少しだけ距離がある。
でもその距離感すら懐かしい。
〇〇「……久しぶりだね」
廉「ほんとに」
〇〇「元気だった?」
廉「まぁそれなり」
廉は〇〇を見る。
変わってない笑い方。
でも前より少し大人っぽくなった気がした。
廉「〇〇は?」
〇〇「忙しい」
廉「知ってる」
〇〇「え」
廉「普通に見てるし」
〇〇が少し照れる。
廉「ドラマもCMも」
〇〇「……ありがと」
少し静かになる。
でも嫌な沈黙じゃない。
昔、何時間でも一緒にいられた時みたいな空気。
廉「……会いたかった」
その言葉に〇〇の呼吸が止まりそうになる。
〇〇「……」
廉「ごめん、急に」
〇〇「いや……」
〇〇は視線を落とす。
心臓がうるさい。
久しぶりにちゃんと会って、久しぶりにこんな近くで話して。
昔好きだった気持ちまで思い出しそうになる。
廉「でもほんとに会いたかった」
〇〇「……うん」
廉は少し笑う。
廉「なんか安心した」
〇〇「え?」
廉「変わってなくて」
〇〇「……変わったよ」
廉「どこが」
〇〇「わかんないけど」
廉「俺は変わってないと思う」
廉は優しい目で〇〇を見る。
その目が昔と同じで、〇〇は少し苦しくなる。
廉「まださ」
〇〇「……」
廉「好きだよ」
まっすぐだった。
冗談みたいに言わない。
誤魔化さない。
ちゃんと伝える声。
〇〇の胸がぎゅっとなる。
〇〇「廉……」
廉「別れてからもずっと」
〇〇は何も言えない。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
仕事のために別れた。
嫌いになったわけじゃない。
だから余計に、今でも揺れる。
廉「困らせたいわけじゃないんだけど」
廉「やっぱ会うと無理だわ」
廉は少し困ったみたいに笑う。
〇〇はその顔を見て、胸が痛くなる。
その頃。
部屋では北斗が一人、静かなリビングに座っていた。
〇〇は膝の上で手をぎゅっと握る。
廉の言葉が頭から離れない。
好きだよ。
別れてからもずっと。
〇〇「……わたしも」
小さく声が漏れる。
廉「……え」
〇〇はゆっくり廉を見る。
胸が苦しいくらい熱い。
〇〇「好きだよ、今でも」
廉の目が少し揺れる。
〇〇は苦しそうに笑った
〇〇「会ったらだめだね、やっぱ」
廉「〇〇……」
〇〇「忘れられてると思ってた」
廉「無理だった」
廉は少しだけ〇〇との距離を縮める。
でも触れない。
その優しさが余計にずるい。
廉「戻りたいって思ったこと、何回もある」
〇〇の心臓が大きく跳ねる。
廉「今も普通に思ってる」
〇〇は目を伏せる。
もしあの時、仕事がなかったら。
もし別れなくてよかったなら。
そんな“もし”ばかり浮かぶ。
廉「〇〇は?」
静かな声。
〇〇「……わかんない」
廉「うん」
〇〇「でも」
〇〇は少しだけ笑う。
〇〇「より戻すのも、ありなのかなって」
その瞬間。
廉の表情が少し崩れる。
嬉しそうに、安心したみたいに笑った。
廉「……そっか」
〇〇の胸がまた苦しくなる。
好き。
やっぱり好き。
ずっと嫌いになれなかった。
でもその瞬間、ふと北斗の顔が頭をよぎる。
今日の朝。
カラオケ。
ドライフラワー。
優しかった声。
〇〇「……」
なぜか胸が少しざわついた。
〇〇「……でも」
廉「ん?」
〇〇は少し俯く。
嬉しい。
廉の気持ちがまだ自分にあること。
自分もまだ好きなこと。
全部本当。
でも。
〇〇「やっぱり今の仕事も大事にしたい」
廉は静かに聞いている。
〇〇「前よりもっと忙しいし」
〇〇「恋愛と両立するの、やっぱ難しいなって思っちゃう」
あの時別れた理由。
結局そこだった。
会えない。
時間が合わない。
好きなのに余裕がなくなる。
〇〇「また同じことになるの怖い」
廉は少しだけ目を伏せる。
でも否定しない。
廉「……うん」
廉「分かる」
その言葉が優しくて、〇〇の胸がまた痛くなる。
廉「〇〇ほんま頑張ってるもんな」
〇〇「頑張らなきゃだし」
廉「知ってる」
廉は小さく笑う。
廉「だから好きになったんやけど」
〇〇「……っ」
ずるい。
そんな風に言われたら余計揺れる。
でも〇〇は小さく息を吐く。
〇〇「恋愛したい気持ちもあるの」
〇〇「廉といると落ち着くし」
〇〇「普通に戻りたいって思う時もある」
廉は黙って聞いている。
〇〇「でも今の自分、中途半端に戻るの嫌で」
ちゃんと向き合いたい。
でも仕事も捨てたくない。
〇〇「わがままだよね」
廉はすぐ首を振る。
廉「わがままちゃうよ」
廉「〇〇が本気で仕事やってるの知ってるから」
その声が優しすぎて、〇〇は少し泣きそうになる。
廉「俺は待てるで」
静かな声。
廉「〇〇がちゃんと納得できるまで」
〇〇はゆっくり廉を見る。
昔からこうだった。
優しくて、ちゃんと待ってくれる。
だから余計に、簡単に答えが出せなかった。
ーーーーーーーーー
北斗side
北斗は一人、静かなリビングに座っていた。
時計はもう22:00を過ぎている。
テーブルの上には飲みかけの水。
さっきまで〇〇がいた空気だけ残ってる。
北斗「……」
スマホを見ても内容が入ってこない。
結局気になる。
今、廉と何話してるのか。
久しぶりに会って。
好きって言われて。
〇〇もまだ好きだったら。
北斗は小さく息を吐く。
分かってた。
廉が〇〇の中で特別なの。
別れた今でも完全には終わってないこと。
でも実際こうして目の前にされると、普通にきつい。
北斗「……はぁ」
ソファへ深く座り直す。
今日の〇〇、ずっと嬉しそうだった。
服選んで。
鏡見て。
そわそわして。
あんな顔、自分には向けない。
北斗「当たり前か」
苦笑する。
〇〇が好きなのは廉。
自分じゃない。
分かってる。
ずっと。
それでも。
北斗「……好きなんだよなぁ」
ぽつりと漏れる。
こんな近くにいるのに。
毎日一緒にいるのに。
“好きな人”にはなれない。
北斗は頭を後ろへ預ける。
廉はちゃんと伝えられる。
好きだって。
待てるって。
自分は?
北斗「……言えるわけねぇ」
今の関係壊したくない。
同居終わって、距離できて、今みたいに笑えなくなるの怖い。
だから結局、隣にいるだけ。
北斗は静かな部屋を見渡す。
〇〇が笑ってる声がないだけで、こんな静かなんだなと思った。
ーーーーーーーーー
〇〇は廉の前で小さく息を吐く。
落ち着こうとしてるのに無理だった。
久しぶりに会って。
ちゃんと目を見て話して。
好きって言われて。
自分もまだ好きだって気づいて。
感情がぐちゃぐちゃになる。
〇〇「……やばい」
廉「ん?」
〇〇「気持ち溢れすぎてやばい」
廉が少し笑う。
でもその目は優しい。
廉「俺もやで」
〇〇は顔を覆う。
〇〇「なんか会ったら普通に戻れると思ってたのに」
〇〇「全然無理なんだけど」
廉「うん」
〇〇「苦しい……」
廉は静かに〇〇を見る。
昔みたいに近い空気。
でも今は前よりもっと大人で、ちゃんと好きが重い。
廉「〇〇」
〇〇「……なに」
廉「無理に答え出さんでええよ」
その言葉で少し泣きそうになる。
〇〇「でも廉待たせるじゃん」
廉「待つって言うてるやん」
〇〇「でも……」
廉「〇〇が仕事大事なんも分かってる」
廉は少し笑う
廉「俺、そこも含めて好きやし」
〇〇「……っ」
心臓が痛い。
優しすぎる。
好きが止まらなくなる。
〇〇「ほんとずるい」
廉「何が」
〇〇「そういうとこ」
廉は小さく笑ったあと、少し真面目な顔になる。
廉「でも俺は普通に戻りたいって思ってる」
まっすぐな声。
廉「〇〇とまたちゃんと恋愛したい」
その言葉に、〇〇の感情がまた大きく揺れた。
〇〇は息を止める。
廉の言葉が胸に刺さったまま動けない。
廉「〇〇」
静かに名前を呼ばれる。
次の瞬間。
ふわっと抱きしめられる。
〇〇「……っ」
久しぶりの感覚。
懐かしくて、苦しくて、安心する匂い。
廉の腕の中、全部思い出してしまう。
廉「会いたかった」
耳元で小さく聞こえる声。
〇〇の心臓がうるさい。
〇〇「……れん」
廉「ずっと我慢してた」
抱きしめる力が少しだけ強くなる。
廉「でも会ったら無理やった」
〇〇は廉の服をぎゅっと掴む。
涙が出そうになる。
好き。
やっぱり好き。
忘れられるわけなかった。
廉「〇〇」
〇〇「……ん」
廉「またちゃんと好きって言わせて」
〇〇は何も言えない。
でも拒否できない。
むしろ離れたくなくなる。
廉の温度が近すぎて、感情が溢れそうだった。
ーーーーーーーーー
北斗side
北斗は時計を見る。
もうかなり時間が経っていた。
北斗「……長」
最初は気にしないようにしていた。
でも無理だった
〇〇、まだ戻ってこない。
北斗は小さく息を吐く。
ただ気になるだけ。
それだけ。
そう自分に言い聞かせながら立ち上がる。
部屋を出て、一階へ向かう。
静かなエレベーター。
心臓だけ変にうるさい。
北斗「……何やってんだ俺」
でも足は止まらない。
一階へ着く。
ラウンジの方を見る。
その瞬間。
北斗の動きが止まった。
〇〇が廉に抱きしめられていた。
〇〇「……」
廉「……」
静かな空間。
二人だけの空気。
胸が一気に重くなる。
分かってた。
廉がまだ〇〇を好きなこと。
〇〇も揺れてること。
でも実際見るのは、想像以上にきつかった。
北斗「……っ」
息が詰まりそうになる。
〇〇は廉の服を掴んでいた。
拒否してない。
むしろ、その腕の中にちゃんといる。
北斗はその場から動けない。
心臓が痛い。
北斗「……はは」
小さく乾いた笑いが漏れる。
やっぱ無理だ。
好きなやつが他の男に抱きしめられてるの見るの。
北斗は視線を落とす。
でも目を逸らせなかった。
ーーーーーーーーー
〇〇の目から涙が溢れる。
自分でもびっくりするくらい止まらない。
廉「……え、なんで泣くん」
〇〇「わかんない……」
声まで震える。
でも苦しいだけじゃない。
嬉しくて。
安心して。
またこうして廉の腕の中にいられることが。
〇〇「……幸せだなって思った」
その言葉に廉の表情が止まる。
廉「……っ」
〇〇は涙を拭きながら少し笑う。
〇〇「廉といると落ち着くし」
〇〇「やっぱ好きだなって……」
廉が〇〇を見る目が一気に揺れる。
抑えてた感情が全部出るみたいに。
廉「〇〇……」
次の瞬間。
そっとキスされる。
〇〇「……っ」
優しいキス。
久しぶりなのに、全部覚えてる。
涙で視界が滲む。
胸がいっぱいになる。
廉の手がそっと〇〇の頬へ触れる。
廉「……好き」
静かな声。
その光景を少し離れた場所で見てしまった北斗は、完全に動けなくなっていた。
廉は〇〇の涙を親指でそっと拭う。
〇〇はまだ胸がいっぱいで、うまく言葉が出ない。
廉「……泣きすぎ」
〇〇「だって……」
廉は困ったみたいに笑う。
でもその目は優しかった。
そしてもう一度、〇〇をぎゅっと抱き寄せる。
〇〇も自然と廉の服を掴む。
離れていた時間を埋めるみたいに、二人はしばらくそのままだった。
廉「やっぱ好きやわ」
〇〇は胸が苦しくなって、小さく笑いながら涙を拭いた。
〇〇は涙を拭きながら廉を見る。
近すぎる距離。
優しい目。
昔と変わらない空気。
胸がいっぱいになる。
〇〇「……ずるい」
廉「何が?」
〇〇「好きってなるに決まってるじゃん……」
廉は少し困ったみたいに笑う。
その顔を見た瞬間、〇〇はぎゅっと廉の服を掴く。
そしてそっと額を寄せた。
廉「……〇〇」
〇〇は恥ずかしそうに笑う。
〇〇「ほんと好き」
廉はその言葉に目を細めて、〇〇を優しく抱きしめ直した。
その時。
廉のスマホが震える。
廉「……あ」
画面を見る。
仕事関係の電話。
廉「ごめん、ちょっと出る」
〇〇「うん」
廉は少し離れて電話に出る。
廉「もしもし」
さっきまでの優しい空気とは違う、仕事の声。
〇〇はその背中をぼーっと見る。
さっきまで抱きしめられてたのがまだ信じられない。
胸がずっと熱い。
でも。
廉の表情が少しずつ変わっていく。
廉「……え?」
廉「それ、いつ決まったんですか」
〇〇「……?」
空気が変わる。
廉は少し黙ったあと、小さく息を吐く。
廉「……分かりました」
電話が切れる。
廉はしばらくそのまま動かない。
〇〇「廉?」
廉はゆっくり振り返る。
でもさっきみたいに笑えてなかった。
〇〇「どうしたの?」
廉「……海外」
〇〇「え?」
廉「急に決まった」
〇〇の表情が固まる。
廉「しばらく向こう行かなあかんみたい」
静かな声。
〇〇「……どれくらい?」
廉「分からん」
〇〇「……」
さっきまで近かった距離が、一気に遠くなる感覚。
廉は少し苦しそうに笑う。
廉「タイミング悪すぎやろ」
〇〇の胸がぎゅっと痛くなる。
廉「……ごめんな」
〇〇「謝んないで」
廉「でも」
〇〇「廉は悪くない」
廉は〇〇を見る。
好きって気持ちが溢れたまま。
やっと会えて。
やっと素直になれて。
なのにまた離れる。
廉「……今日、会えてよかった」
〇〇の目にまた涙が溜まる。
廉は最後に〇〇の頭を優しく撫でる。
廉「ちゃんと待ってる」
〇〇「……うん」
そして廉はゆっくり離れる。
〇〇はその背中を、何も言えないまま見つめていた。
廉はゆっくり歩き出す。
〇〇はその背中を見つめたまま動けない。
行かないで。
でもそんなこと言えるわけなくて、ただ立ち尽くす。
数歩進んだところで。
ふと、廉が振り返る。
〇〇「……っ」
目が合う。
廉は少し困ったみたいに笑った。
でもその目は優しいまま。
廉「〇〇」
〇〇「……なに」
廉は少しだけ黙る。
何かを堪えるみたいに
廉「ちゃんと寝るんやで」
その一言が廉らしくて、〇〇は思わず笑ってしまう。
涙でぐしゃぐしゃなのに。
〇〇「子どもじゃないし」
廉「いや、放っといたら寝ぇへんやん」
〇〇「……うるさい」
廉は小さく笑う。
その空気が昔と同じすぎて、〇〇の胸がまた苦しくなる。
廉「また連絡する」
〇〇「……うん」
廉「無理すんな」
〇〇は小さく頷く。
廉は最後に少しだけ〇〇を見つめてから、今度こそ歩き出した。
〇〇はその背中が見えなくなるまで、ずっとその場から動けなかった。
北斗は物陰から動けないまま、その光景を見ていた。
廉が去っていく背中。
その場に一人残る〇〇。
さっきまで泣いていた顔。
全部目に焼きついて離れない。
北斗「……最悪」
小さく呟く。
見なきゃよかった。
でも気になって来たのは自分。
〇〇が廉をまだ好きなことも、廉が〇〇を本気で想ってることも、全部分かってしまった。
北斗はゆっくり目を閉じる。
胸が痛い。
苦しい。
でも一番きついのは、〇〇が幸せそうだったこと。
抱きしめられて泣いて。
好きって言われて。
あんな顔、自分には向けない。
北斗「……勝てるわけねぇじゃん」
乾いた笑いが漏れる。
何年隣にいても。
どれだけ好きでも。
〇〇の特別はずっと廉なんだって、改めて突きつけられた気分だった。
北斗は壁へ軽く頭を預ける。
もう部屋戻ろ。
そう思うのに足が動かない。
一人で立ってる〇〇が視界に入るたび、放っておけなくなる。
好きすぎて終わってる。
北斗は小さく息を吐いた。
〇〇はその場から動けないまま、ぼーっと廉がいなくなった方向を見ていた。
涙は止まったのに、胸だけずっと苦しい。
嬉しかった。
でも寂しい。
また離れる。
やっと会えたのに。
〇〇「……はぁ」
小さく息を吐く。
その瞬間。
後ろから足音。
〇〇が振り返る。
〇〇「……北斗?」
北斗は少し気まずそうな顔で立っていた。
〇〇「え、なんで……」
北斗「……遅いから」
〇〇「……」
その一言で、〇〇はなんとなく察する。
どこまで見られてたんだろ。
胸がざわつく。
北斗は〇〇から少しだけ目を逸らす。
北斗「帰んぞ」
〇〇「……うん」
二人並んで歩き出す。
でも空気が静かすぎる。
〇〇は何か言おうとして、やめる。
北斗も何も言わない。
エレベーターへ乗る。
狭い空間。
でも今日はやけに距離が遠く感じる。
〇〇「……北斗」
北斗「ん」
〇〇「ごめん」
北斗「何が」
〇〇「……わかんないけど」
北斗は少し黙る。
そして小さく笑った。
北斗「お前が謝ることじゃねぇだろ」
その声が優しすぎて、〇〇は余計苦しくなる。
北斗は前を向いたまま小さく息を吐く。
北斗「……ちゃんと好きなんだな」
〇〇「……っ」
その言葉に、〇〇の心臓が大きく跳ねた。
でも北斗はいつもの調子みたいに小さく笑う。
北斗「よかったじゃん」
〇〇「……」
北斗「両思いなんだろ」
〇〇は少し困ったみたいに笑う。
〇〇「なんか複雑だけどね」
北斗「まぁお前めんどくせぇし」
〇〇「なにそれ!」
少しだけ空気が軽くなる。
北斗は壁にもたれながら〇〇を見る。
そしてわざと明るく言う。
北斗「俺も頑張るわ」
〇〇「え?」
北斗「好きな人いるって言っただろ」
〇〇「あー!」
北斗「だから俺も頑張れよ!って感じ」
〇〇はその言葉に少し笑う。
〇〇「なにそれ笑」
北斗「お前だけ恋愛進展してんの悔しいし」
〇〇「えぇー北斗絶対モテるじゃん」
北斗「知らねぇ」
〇〇「頑張りなよ!」
北斗「……頑張ってる」
小さく漏れた声。
でも〇〇は気づかない。
〇〇「ちゃんと告白とかしなよ?」
北斗「……」
北斗は一瞬だけ苦笑する。
好きな本人に恋愛相談されて、告白しろって言われる。
ほんと笑える。
北斗「タイミングあったらな」
〇〇「絶対いけるって!」
無邪気に笑う〇〇を見て、北斗はまた小さく息を吐いた。
やっぱ鈍感。
でもその笑顔見たら、嫌いになんてなれなかった。
エレベーターのドアが開く。
二人はゆっくり部屋へ戻る。
玄関に入っても、どこか静かな空気のまま。
〇〇「……なんか疲れた」
北斗「感情ジェットコースターすぎだろ」
〇〇「ほんとにそれ」
〇〇は靴を脱ぎながら小さく笑う。
でもその目はまだ少し赤い。
北斗はそれを見て、胸がちくっとする。
北斗「水飲む?」
〇〇「飲む……」
北斗はキッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けて、水をコップへ入れる。
北斗「ほら」
〇〇「ありがと」
〇〇はソファへ座りながら受け取る。
数口飲んで、大きく息を吐いた。
〇〇「……廉、海外だって」
北斗「聞こえた」
〇〇「そっか……」
また少し静かになる。
〇〇「なんかタイミング悪すぎるよね」
北斗「お前ららしいけど」
〇〇「なにそれぇ」
少しだけ笑う。
でも次の瞬間、〇〇はぽつりと呟く。
〇〇「好きなのになぁ」
その言葉が北斗の胸に刺さる。
北斗「……」
でも北斗は何も言わない。
言えるわけない。
〇〇「北斗」
北斗「ん?」
〇〇「今日ありがとね」
北斗「何が」
〇〇「なんか……そばいてくれて」
北斗は少し目を逸らす。
北斗「別に」
〇〇「その“別に”便利だね」
北斗「うるせぇ」
〇〇は小さく笑う。
その笑顔を見た瞬間、北斗はまた思う。
やっぱ好きだな、って。
コメント
3件
あーだめだー!! 毎回読むたびに心臓が落ち着かない。 私もジェットコースターすぎだろ、!!
美月ゆめかだよ〜🌸 第101話読んだよ!もうね、北斗の気持ちが痛いくらい伝わってきて胸がぎゅううってなった😭💔 ドライフラワー歌うシーン、〇〇に「切な」って言われた時の反応とか、もう北斗の恋心が溢れすぎててこっちまで苦しくなる…。それなのに〇〇は廉くんのことも好きで、しかもあの抱きしめの後のキスシーンは完全に心臓止まるかと思った…!好きな人が他の人に抱きしめられてるのを影から見てる北斗の心情がエグいほどリアルで、感情が忙しすぎる回でした!😭✨ 次回も楽しみにしてるね!