この作品はいかがでしたか?
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─クロスって誰のことですか
一瞬、時が止まったように感じた。先輩はまた驚いたような驚愕したような表情を見せる。
意外と表情豊かなんだな、と今の状況には似合わないほど自分は冷静だった。それから先輩は暫く考えるような素振りを見せる。
『…クロス、ちょっとこっちに来い。』
そう言って手招きするように触手を此方に伸ばす。
俺はその言葉に抵抗することもなく、素直に従った。
「なんでしょ…!?」
グイッと、触手で引き寄せられた。思わずバランスを崩して下になった先輩を怪我させないように床に押し倒す形になる。
まずい。先輩との距離があまりにも近い。このままじゃ───…今すぐ離れなくては。
「あの、先輩すみません。今どきますから…。」
ギュッ。
「せ、先輩!?」
『…クロス。』
先輩が触手で俺を引き寄せて抱きついてきた。お互いの身体同士が密着している…ヤバイ本気で焦ってきた。
「せ、先輩離してください!!」
『……。』
「先輩!!」
『…そんなに』
「え?」
『そんなに嫌なのか?お前はそんなに、俺のことが…嫌いなのか?』
先輩の声は震えていた。
こんな姿初めて見た。いつもの威厳ある姿じゃなくて、そこにいるのは一人のか弱い生き物のようで─、居ても立っても居られなくなって俺はその震える肩を抱きしめた。
『───!!』
始めて抱きしめた先輩の身体は意外にも華奢だった。
『…クロス?』
「……。」
暫く抱きしめていると初めは困惑したようにこちらを見ていたが先輩からも抱きしめ返してくれた。
それは長いようで短い時間。俺達はただ無言で抱きしめ合っていた。…そろそろ先輩も安心しただろうか、と顔を覗くと、いつもの表情に戻っていた。その様子に酷く安心した。
(…良かった。いつもの先輩だ。)
俺は一呼吸吸ってから先輩に話す。
「…先輩のとは嫌でもないし嫌いなんかじゃありません。だから大丈夫です。」
『……。』
子どもをあやすように先輩の頭を撫でる。流石に怒られるかと思ったが意外と抵抗されなかったし、良いということだろう。
『…もういい。』
ペシンと軽く触手で撫でる手をはたかれる。恥ずかしくなったのだろうか。その顔は拗ねるようにそっぽを向いている。
『…なぁクロス、ありがとうな。』
最後の声は小さくって聞き取りづらかったが確かにありがとうと言っていた。…ん?ありがとう?あの先輩がお礼を?
ポカン、と多分アホ面になっている俺を見て先輩は吹き出した
『ふはっ。なんだよその顔!!俺が礼を言うのがそんなに奇っ怪か?』
そう言うと先輩は破顔した。…今日は先輩の色んな表情を見ている気がする。
それにしても、いつもの闇の帝王ならではの邪悪な笑みじゃなくてこんなに純粋な笑顔始めてみた。
「…可愛いな。」
『……は?』
思わず口に出してしまった。怒られるか?
「あっ…す、すみません!!」
「?…あの、先輩──ッ!!」
何も言わなくなった先輩を不審に思い、顔を見ようと下を見ると、そこには顔を真っ赤(青)に染めて隠すように手で顔を覆う先輩がいた。
「はっ…」
その姿を見て思わず連られて顔を真っ赤(紫)に染める。
「せ、先パ─」
『─見るな馬鹿!!』
触手で後ろに押し返された。
「うおっ!?」
尻もちをついた。地味に痛いがそれどころではない。
「先輩!!」
『出てけ…。』
「待ってください!!」
『良いから出てけ!!!!』
無理矢理触手で追い出されて書斎室に鍵がかけられた。
…先輩を怒らせてしまった。結局その後、自分ではどうすることもできなくてその日は帰った。
(明日、また行こう。)
クロスは決意した。
────────────────────
『……明日からどんな顔して会えばいいんだ。』
闇の帝王は嘆いた。
〜to be continue〜
コメント
5件
あああああああああああぁぁぁ続きが気になりすぎる(?)
あ"〜〜〜〜〜〜〜〜〜可゛愛゛い゛ぃ゛い゛( ◜▿◝ ) なにこのかわいいせいぶつもっとやれそしてとうといをみせろ(?)(((は