テラーノベル
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俺には頼れるお父さんがいた
優しくてお母さんのことをずっと愛してて
純粋な優しさで溢れた
そんな人だった。
だけど重い病気にかかってしまった
あの日の夜、俺は喉が渇いたので下へ降りた
するとリビングのドアから少しだけ光が漏れていた
この時間はいつも電気はついてないのに
と俺は不思議に思いその隙間から目を覗かせる、すると
お母さんとお父さんが静まり返った
いつものリビングとは思えないほど
冷えた空気の中で
「仁人になんて伝えるんだ?」
「…わからないわ。もう」
「大丈夫だよ、きっと上手く行くさ」
そんなことを話していた
その日の夜以来お母さんはあまり笑わなくなった
お父さんの寒いギャグに
ゲラゲラと笑うお母さんを見れなくなったのは
幼き俺にとってはとてつもなく悲しいことだった
そもそもお父さんが入院するため、家にいなくなってしまったのも悲しかった。
保育園がお休みの日にお見舞いに行こうと
お母さんが
珍しく笑いながらいってくれた
俺は久々にお母さんが笑ってくれたのが嬉しくて、もちろんついて行った。
車の中で見たあの病院は
でかくてなんだか怖かった。
あんなところにお父さんがいるなんて信じられなかった
少しだけお母さんと繋いでいる手をぎゅっと握って病院内を歩く
どこまでも続く廊下にどこか不気味さを覚えた
何分か歩いた後
お父さんがいる病室についた
お母さんがドアを開けたその先には
少し痩せていたけどいつも通りのお父さんがいた
俺は駆け寄ってお父さんの腕の中に飛び込んだ
お父さんの匂い、お父さんの体温
会えなかった分全部を満たすように
俺はぐっと噛み締めながら腕の中で幸せを感じていた
久々に会えた嬉しさ、けど
少し元気がなさげに見える
俺が満足して離れると
お父さんは隣の人のベットをカーテン越しに指差して
「隣の子とお話ししておいで」
俺は引っ込み思案なので嫌だって言えずに
流されるように
隣のベットの方へ歩く
安心できる家とは違って未知の世界だから
少しの距離も怖く感じる
恐る恐る隣の子のベットを見ると
優しい桃の香りがしたと思えば
俺と同世代くらいの男の子が俺を不思議そうに見つめていた
ばちっと目があってびっくりして逸らしてしまう
そのまま目を合わせられずに黙り込んでいると
「おれ、はやと。きみは?」
そう言って彼は話しかけてくれた
多分ここで話しかけてくれなかったら
俺は一生口を開いていなかったと思う
せっかく話しかけてくれたし、ここはちゃんと自分も返さなきゃと思い
勇気を振り絞って声を出した
「ぼ、っぼくじんと!」
少し張りすぎて大きな声になってしまったが
彼は少し嬉しそうに笑うと
手招きをしてきた
俺は素直に彼の元へ駆け寄って
椅子に座っていいよと言ってくれたので
高めの椅子に座らせてもらった
足が浮くので宙に浮いてる気分になる
ふらふらと独り歩きする足をぼーっと見つめていると
「じんとくんはなんでここにいるの?」
彼に話しかけられて俺は顔を上げる
えっーとなんでここにきたんだっけ?
お父さんの…あ!お見舞いだ!
「おとうさんのおみまい!」
「…そっか」
俺の言葉に切なく笑う彼
どうしたのかな?と俺は純粋に思った
今考えてもわからないけど
いろんな気持ちが混合したんだろう、
なんとも言えない複雑な顔だった
俺と同い年なのに
どうしてこんなに悲しい顔をするのか
当時の俺は不思議で仕方なかった
「はやとくん、いま、かなしいおかおしてる」
「え、あ、ごめん、ね」
申し訳なさそうに謝る彼を見て俺は
どうしてそんなに悲しそうな顔をするのか
何があったのか
色々聞きたいことが思い浮かんだ
でもこの子に質問攻めするのは気が引ける
だからここはお父さんみたいに
優しい言葉をかけようと
お父さんにいつもそう言われて育ってきたから
お父さんは俺に優しくしてくれた
その優しさを次は、はやとくんにしてあげたいと思った
「はやとくん、こっちみて!」
俯く彼にそう言うとゆっくりと顔を上げてくれた
俺なりの優しさをしてあげようと思い
全力の変顔をお見舞いしてあげた
いつもはというか変顔はなるべくしたくないし恥ずかしいけど
それではやとくんが笑ってくれるなら
お安いご用だと思えた
人は笑えば福が来る
みたいなことわざをお父さんがよくお母さんに向かって言っていたから
それをやってみた
俺の顔が彼の目に映る
その時彼は初めて大笑いした
腹を抱えて息ができなくなるくらいにまで
顔が真っ赤になって
そんなに笑ってくれるとは思わなくて
俺もつられて笑った
「ありがとうじんとくん!」
さっきよりも元気な声で話す
顔も子供らしい笑顔で
俺の優しさで喜んでくれて笑ってくれて
俺も嬉しくなった
「またあえる?」
こんな気の合う子に会ったのは初めてだった
初めて話しかけてくれた
初めてちゃんと話せた
初めて俺の変顔で笑ってくれた
だからもう一度会いたいと思った
彼はにっこりと笑って
「うん!あえる!やくそく!」
そう言って小さな小指を俺の目の前に突き出してくる
俺は素直に自分の小指と結びつけて
はやとくんと目を合わせて
「「やくそく!」」
そう2人声を合わせて
約束をした。
また会えるって、約束を
この作品は更新遅めです
それではまた。
コメント
1件
うわあ、これ泣ける……。幼い仁人くんがお父さんみたいに優しくあろうとして、必死の変顔ではやとくんを笑わせたシーン、めちゃくちゃ心にきたよ。「かなしいおかおしてる」ってまっすぐ言える子供ってすごい。お父さんの寒いギャグに笑ってたお母さんのエピソードとか、子供の目線で描かれててすごく沁みた。続きが気になるー!
ゆき
2,481
#💛愛され
みー

3,025