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どうして、どうしてなんだよ。
どうして分かり合えないんだよ。
どうしていがみ合い続けるんだよ。
理解することを放棄した社会に、
明るい未来なんて訪れないのに。
なぁ、どうしてなんだよ、なぁ。
人目を憚らず、只管に咽ぶ。
余りにも余りにも、酷くて。
この現実が、この世界が。
いけ好かない存在を罵ることが
「真の愛国精神」だとするならば、
俺と菊の関係は、所詮無意味なのかよ。
レイシストの前では、綺麗事なのかよ。
国境を越えて、民族を越えて、
結ばれた絆の何が悪いんだよ。
なぁ、説明しろよ、なぁ。
「私は、無意味だとは思いません」
菊が、震える俺の体を抱きしめる。
怒りと悲しみに震える、俺の体を。
「貴方と仲良くなれて、私は嬉しいです」
ああ、俺だって、俺だって嬉しいよ。
でもあいつらは、悉く否定するんだ。
左翼だと、売国奴だと。
「寧ろ、あんな人達の存在こそ、無意味ですよ」
「そんな人達に壊されるほど、脆い絆とでも?」
うん、うん、そうだよな。
俺だって、そう思いたい。
そう、思わせて欲しい。今だけは。
鳴り響く雷鳴と、土砂降りの雨の中、
俺と菊は傘も差さず、帰路に就いた。
これ以上は何も言わず、ただ手を繋いで。