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そのじん
吐き出したい。
何もかも。
ぶちまけたくなる。
すんでで思い止まり。
カフェインと一緒に飲み下す。
吐き出す代わりに。
鍵盤と楽器を掻き鳴らして。
その滑稽さに自分自身を嘲笑する。
そんな、自分をコントロールできない時。
気付いたら側には、あの笑顔があったりする。
なぜだか今日は調子が悪くて。
なんだか今日はイライラして。
「………はー…」
事務所の屋上のベンチに腰掛けながら、首を反らして仰ぎ見た青空がこれまた綺麗で、さらにイライラする。
たまにやってくる、この自分の機嫌を自分で取れない時。
何がこんなに気に入らないのか。
何でこんなにイライラするのか。
自分でもよくは理解出来ていない。
でもやっぱり、
気に入らないもんは気に入らないし、イライラするもんはする訳で。
ふと見上げていた空が遮られ、代わりに見慣れた顔が視界を占領する。
「どしたん仁ちゃ〜ん?」
間延びした声を掛け、そいつは笑いながら俺の隣に腰掛けた。
「…なにしに来たんだよ」
「なにしに来たって、そんなん仁ちゃんに会いにきたんやんかぁ」
「うるせぇ、あざとエセ末っ子が」
「ちょっ、ヒドくない?!あざとくしてるつもりないし、エセやなくて末っ子は末っ子やのにぃ」
およよとベンチに身体を倒し、うそ泣きして見せる舜太。きっと、空気を和ませる為にやっているんだろう演技がかった様子を見ていたら、なんだか少しだけ申し訳無くなって、一応謝る。
「…すまんかった」
「ん〜なにがぁ?」
「さっきの。」
「あぁ!5人で会議してたのに、仁ちゃんが突然不機嫌になって無言で出てったからひっどい空気になっちゃったこと謝ってんの?」
「…………嫌みなんソレ?」
「ちがうよぉ!仁ちゃんがあんななるなんて珍しいから、これでも心配してるんさ」
ふざけたように言ってはいるけれど、俺をみる瞳は確かに心配げで。
…これがコイツの良いところ
突然不機嫌になって理由も言わず飛び出しちゃってさ。迷惑以外の何物でもない。
どう考えても扱いづらいだろ、今の俺って。
それなのに。
こいつは気分悪くするどころか、心配してこんなところまで追いかけて来てくれる。
「…………舜太の癖に。」
「あはははっ、クセにってなによぉ〜」
自分に向けられた、昔からずっと変わらない笑顔に一瞬だけ見惚れて。
俺はすぐさま視線を、また空へと戻す。
そう。気付いたらいつも側にあったんだ。
当たり前のように馴染んだモノ。
当然のように染み着いたモノ。
自分には不似合いだと知りつつ。
自分には不相応だと知りつつ。
手放せ無いでいるモノ。
だって、
君は俺に優しすぎるから
君は俺に甘すぎるから
絆されてしまうし、甘えてしまう。
だから、
俺は絶対に、君を手離せない。
end.