TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

死に場所探して三千里

一覧ページ

「死に場所探して三千里」のメインビジュアル

死に場所探して三千里

1 - 第1話「ジサツ案内人」

♥

29

2022年08月12日

シェアするシェアする
報告する

事件、事故、自殺、病気。

最近になって、様々な人間の「死」を当たり前のようにみるようになった。

物騒な世の中だ。

TVニュースでそのような事件を見ては、「そこに居合わせたのが自分だったらなぁ」という意味の無い妄想をする。

生きるのにはずっと前から疲れている。

ただ、死なない、死ねない。

生きるのも死ぬのも怖い、そんな状態が続いていた。

他人が嫌いか、と言われるとそういう訳でもない。他人を信用出来ない、そんな思考になる自分の方がよっぽど嫌いだ。

でも、今まで優柔不断に生きてきた。

思えば、これは贖罪なのだ。

他人を信じる事が出来ぬという、人間史上最もたる悪徳心を抱いてしまった自分への贖罪。

ずっと、怖がってたんだ。

でも、それも今日で終わり。人生という名の刑期も、今日で終わり。

処刑執行の日だ。

はぁっとため息を吐く。

体重をかけた鉄パイプが、きしきしと悲鳴をあげる。

それを跨いで、下を見る。

下には、たくさんの人間がいる。

驚くだろうなぁ、恐怖だろうなぁ、空から急に、真っ赤な肉塊が降ってきたら。

さぞ、怖いだろうなぁ。

ざまぁみろ、人間。

これが、お前たちの作っている世界なんだ。今更でも気づいて後悔しやがれ。

…こんな思考だから、世界に適応出来ないんだろうな。

まぁ、いい。考えるのはもうやめだ。

「……さよなら、人生」

そう呟いて、そして、僕が夜空に翔ぼうとした、その瞬間だった。

「そこから飛んでも死ねないと思うけど、本当に飛ぶの?」

と、誰もいないはずのビルの屋上に、甲高い声が響きわたった。

「…え」

予想もしなかったその声に、僕はそんな素っ頓狂な声をあげた。

「まずここは、三階建てのビルの屋上よね、それに下は人工芝」

と、僕と同年代くらいであろう少女は続ける。

「人通りもいいし、救助される確率は高い。頭から落ちれば即死出来るとしても、貴方に風の抵抗を凌いでまで方向を調整できる運動神経があるとは思えないけれど」

「………」

急に意味不明なレクチャーをしだすその少女に、僕は開いた口が塞がらない状況であった。

「以上を踏まえて、ここから飛んで死ねる確率は多く見積もって15%。総合評価はEってとこね、それでも、ここから飛ぶ気?」

「……いや、誰だよ」

「おっと、そうね、申し訳ない。私はジサツ案内人のヒスイ。お客様に苦せず、確実に死ねるスポットを提案するのが私の仕事」

「自殺、案内人…?」

「珍しい職業もあったもんでしょ?」

「いやまて、まずなんでお前はここにいる。ここは廃ビルだ、そもそも普通の人間が入ってくる場所でもなけりゃ、足音も何もしていなかったぞ」

「だって私、普通の人間じゃないんだもん」

「…は?」

さらっとそんな事をいうヒスイという少女に、僕はついていけなかった。

「私ね、俗に言う死神ってやつなんだ。死神の、現人神ってところかな」

「死神…?」

「そうそう、だから自殺案内人なんてやってんのよ」

「いや、胡散臭すぎるだろ」

「まぁいい、どうせもう失うものも何もないんだ、ガイド料はいくらだ?」

「ないわよ」

「ない…?タダってことか?」

「えぇ。私は死神。生活の源は死人の魂なの。だから、私はこのガイドにお金を取らない代わりに、死後、魂を貰うの」

「…なるほど、な」

あまりにも胡散臭いが、まぁどちらにせよ死ぬつもりだし、金を取られないんだったらという事で、僕は信じてみる事にした。

金があっても使わないんだけどな。

「まぁ、魂くらいならいくらでもやるよ。」

「お?いいねぇ、わかってんじゃん。まっかせなさい!」

と、在り来りなドヤ顔を浮かべる彼女。

これが人間じゃない、なんてのは信じ難いが、まぁ騙されたとしても失うものはないだろう。

「じゃ、とりあえず私の家に来なよ、ほら、着いてきて」

「お、おう」

僕は終始彼女のテンションに圧倒され、言われるがままついて行った。

こいつあれだな、俗に言う陽キャだな。

なるほど、僕とは真反対というわけだ。

いやまじで、受け身も疲れるからやめてくれ、ほんとに。

この作品はいかがでしたか?

29

コメント

1

ユーザー

物語制作のコツや、アドバイスなど下さるとありがたいです!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚