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「湊!!」
悠真の声が遠くで聞こえる。
胸が締めつけられるように痛い。
息を吸おうとしても、うまく吸えない。
「先生!! 誰か来てください!!」
屋上の扉が勢いよく開き、看護師たちが駆け寄ってくる。
「湊くん、聞こえる!? 大丈夫だから、ゆっくり息をして!」
酸素マスクがつけられ、ストレッチャーへ乗せられる。
薄れていく意識の中で見えたのは、泣きそうな顔をした悠真だった。
「ごめん……。」
かすれた声でそう言うと、悠真は何度も首を横に振る。
「謝らないで……お願いだから……。」
その言葉を最後に、俺の意識は闇へ沈んだ。
◇
「……湊。」
誰かが名前を呼んでいる。
ゆっくり目を開けると、見慣れた病室の天井が視界に映った。
腕には点滴。
胸には心電図のコード。
「目、覚めた?」
担当医が静かに笑う。
「発作だよ。今は落ち着いてる。でも、しばらくは安静にしよう。」
「……はい。」
医師は少し言葉を選ぶように黙った。
「無理は禁物だ。君の心臓は、想像以上に頑張っている。」
その言葉の意味は、痛いほど分かっていた。
先生が病室を出ると、部屋は静まり返る。
その静けさが、やけに苦しかった。
コンコン。
控えめなノックが響く。
「……入って。」
ゆっくり開いたドアの向こうには、悠真が立っていた。
「……。」
何も言わない。
いつもの笑顔もない。
ただ、じっと俺を見つめている。
「ごめん。」
先に口を開いたのは俺だった。
「せっかく屋上行けたのに。」
悠真はゆっくり近づく。
そして、ベッドの横に立った。
「怖かった。」
小さな声だった。
「目の前で湊が苦しそうに倒れて……何もできなかった。」
その声は震えていた。
「もう……会えなくなるかと思った。」
ぽろっ。
一粒の涙が床に落ちる。
その瞬間、胸が締めつけられた。
「悠真……。」
「ごめん。」
今度は悠真が謝る。
「泣くつもりじゃなかったのに。」
慌てて涙を拭う姿が、苦しかった。
俺は誰かを悲しませたくなくて、人と距離を置こうと決めた。
なのに。
結局、悠真を泣かせてしまった。
「……だから言ったんだ。」
「え?」
「関わらないほうがいいって。」
静かな病室に、その言葉だけが響く。
悠真は少しうつむき、何も言わない。
やっぱりこれでいい。
俺から離れたほうが、悠真は傷つかずに済む。
そう思った、そのときだった。
「嫌だ。」
はっきりとした声。
俺は思わず顔を上げる。
「湊が離れろって言っても、俺は離れない。」
「……なんで。」
「だって、友達だから。」
その一言が、胸の奥にまっすぐ届いた。
「苦しい日も、笑える日も、一緒にいたい。」
「……。」
「だから、一人で全部抱え込まないで。」
もう限界だった。
ずっと我慢していた涙が、視界をぼやけさせる。
「……怖い。」
声が震える。
「死ぬのが、怖い。」
初めて口にした本音だった。
悠真は何も言わず、ただそっと俺の手を握る。
温かかった。
そのぬくもりだけで、張りつめていた心が少しだけほどけていく。
だけど二人はまだ知らない。
この出会いには、もう一つの大きな秘密が隠されていることを――。
コメント
6件
うわ、ちょっと共感できるとこあった
ううん…もう、読んでるこっちまで息が苦しくなったよ。湊くんが「死ぬのが怖い」って初めて零した瞬間、じんときた。悠真くんが「友達だから」って離れないって言ってくれるのが、本当に救いで。でもラストの“もう一つの大きな秘密”、完全に心臓掴まれたよ…!続きが気になりすぎる。蒼音さん、繊細な心情描写が本当に上手で、胸がぎゅっとなりました。