番外章「雷の子、叫びの空へ 〜ゲズの過去〜」
「強くなれ。誰も頼るな。お前は“選ばれし者”だからな」
父の声は、優しさより“命令”に近かった。
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【1. 雷の村】
ゲズは地球の辺境、“雷の村”と呼ばれる場所に生まれた。
その村では雷の加護を宿す者が数十年に一度、生まれると信じられていた。
その“雷の子”として生まれたのが、ゲズだった。
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【2. 孤独な訓練】
雷の力は幼いゲズの身体には強すぎた。
周囲の人間は彼を“特別”と呼び、同時に“恐れ”た。
子供たちは近寄らず、大人たちは試すような目で見る。
父は愛情よりも訓練を課し、母はいつしか口数を減らした。
父「その力があるなら、誰よりも戦え。誰よりも勝て」
ゲズ「……戦いたくなんか、ないよ……」
その声は届かなかった。
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【3. 初めての暴走】
9歳の時。
雷の力が制御不能となり、ゲズは無意識に村の倉庫を吹き飛ばした。
怪我人こそ出なかったものの、
その日から彼は完全に“化け物”として扱われるようになった。
村人A「近づくな!あいつは呪われてる!」
村人B「雷神の末裔?冗談じゃねぇよ!」
彼の居場所は、もうなかった。
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【4. 母の言葉】
そんなゲズに、ただひとりだけ、静かに言葉をかけた人がいた。
母だった。
母「……ごめんね、ゲズ。
でも、あんたがこの力を乗り越えた時――きっと、本当の“仲間”が現れるわ」
母「強くなれって意味はね、誰かを守れるようにってこと。
独りじゃないって、いつか感じられる日がくるから」
その言葉だけが、ゲズの心に残っていた。
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【5. 村を出た日】
13歳のある夜。
ゲズは村を去る決意をする。
止める者は誰もいなかった。
ただ、星が静かにまたたいていた。
ゲズ(俺は……誰のために生きる?
俺に、意味なんてあるのか?)
その問いに答える声はなかった。
ただ、雷のような運命だけが、彼を導いていく。
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【6. 出会いが、始まりだった】
数年後。
ゲズはリオンと出会う。
力を恐れない、まっすぐな眼差し。
そして、セレナと出会い、“受け入れてくれる誰か”を知った。
ゲズ(……そうか。
あの時の母の言葉、あれは――“未来の仲間”を信じてのものだったんだな)
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そして今――
星の下で、ゲズは静かに目を閉じる。
ゲズ(母さん……ちゃんと、生きてるよ。
俺は、今――独りじゃない)
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