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空を舞う、爆撃機が無くなった。銃声も、誰かの悲鳴も聞こえない。
呆然と見上げた空は、酷いぐらいに澄み切って、太陽が輝いている。
重い体をベッドから引きずり降ろして、いつもの革靴に足を踏み入れる。
あぁ、やっと、戦争が終わったのだ。
思いの外体の調子が良い。
これも、戦勝国のドールだからなのだろうか…?
ただ、嬉しい事は無い。戦争なんてものに勝っても負けても、被害は出る。良い事なんて、無いのだ。
そんな事を思考しながら、俺は弟、炎露の部屋へ行く。あいつは今もまだ、部屋の中。
酷く冷たいその部屋の前に腰を下ろす。
ーーギギッ
そんな音が足元から聞こえた。
この木造の家も、そろそろ年季が入り始めた物だ。
薄笑いを浮かべて、ドアの奥で俺の声を聞いてくれているであろう、炎露に話しかける。
「おはよう、炎露。やっと、戦争が終わったぞ。これで、これ以上の犠牲者が出なくなる」
犠牲者が出なくなるのは嬉しい事のはずだ。
なのに、俺の声色は自分でもわかる程悲哀を帯びている。
「俺は、少し出かけるから、ここに飯を置いとくぞ」
炎露はあの日、兄さんが天に昇った日からずっと部屋の中に居る。
確か今日は、今日は主と共にこの国の捕虜になるドイツ第二帝国の化身、ナチス・ドイツとそのドールである津炎を迎えに行く。
別々の黒いワゴン車に、別々の運転手と共に俺と主は分かれてナチス・ドイツのもとへ向かう。
……あそこに行くのはいつぶりだろうか。
懐かしいような、少し寂しいような気もする。
主はナチス・ドイツの事が好きだ。恋愛と言う意味で。
事前に調べさせておいたとおりの道を辿る。
すると、古びて今にも崩れそうな館に辿り着いた。
近くに居たドイツ兵士にこの場所の事を、少し手荒な方を使って尋ねると、この場所の地下にナチス・ドイツと津炎が居る事が分かった。
ただ、兵士達は館の中には入った事が無いらしい。
幾ら部下が尋ねて(拷問して)も吐かなかったのだから、真実なのだろう。
主と二人で、コツコツと靴を鳴らしながら薄暗い階段を降りる。
すると、カビやサビの匂いが漂ってくる。
少し湿気た、嫌な感じ。
牢のような鉄のようなドア。それを主が乱暴に蹴り開けた。