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「確かに、隠してることはあるよ。たくさん……でも、それも結局准の為だから。言う必要がないと思ったんだ」
それは一体どういう言いぶんなのか。
頭が痛かったが、なるべく冷静に考えた。
今日は妙に頭が冴える。彼が隠そうとしている想い、それは非常に鋭利なものだ。
「お前らの事情に……俺も関係があるのか?」
「有るかもしれないし、無いかもしれない」
「真面目に答えろって」
少し強い調子で言うと、逆に創は怒気を含む声で聴き返してきた。
「准、お前はどうなんだよ。人のこと心配してる場合? 俺と玲那の婚約を知った直後に出合い系サイト探しまくって、焦りだしたじゃんか。俺達に全く影響されてないって言い切れるのか?」
横を見ずとも、彼がこちらを向いてるのが分かる。准は謎の焦燥と不安に駆られた。
そして驚いていた。
彼にそこまで見抜かれてたことに。けど今は、そこで動揺してる場合じゃないと思った。
「俺の話はいいだろ。今は霧山との……いや、お前の話をしてるんだよ」
「だからちゃんと話してるって。お前の話は俺の話」
創は呆れたように零すが、理解不能だ。確実に流されてる。
色々と追いつけない速さで進んでるせいで、頭の中で整理できない。
そもそも、何かが抜けてるんだ。
主軸となる大事な部分が抜けている。それが何なのか分からないが、それのせいで混乱してることだけは分かる。
どうして、霧山は愛する恋人より創を選んだんだろう。
本当に好きなら、家のことなんか考えずにその人と生きていけばいいのに。家柄はともかく、結婚すれば親は安心するだろう。
どうして、創は恋人より霧山を選んだんだろう。
結婚なんかする気はないって、学生の時からずっと言っていた。そんな彼が、霧山と婚約したと言うから……てっきり、それだけ彼女のことが好きなんだと思って俺は喜んだのに。
どうして霧山より、俺のことばかり話すのか。
頭がグチャグチャになるけど、その度に再構築されてくような不思議な感覚だった。
俺も考えが甘い。創とは長い時間一緒に過ごした仲だから、心から疑い、責めることができずにいる。
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