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「泣くな」
小さい頃から、ずっと言われてきた。
転んでも。
怒られても。
悔しくても。
「泣くな」
私はそのたびに、涙をこらえた。
だから。
いつの間にか。
私は泣かなくなった。
どんなに悲しくても。
どんなに苦しくても。
ただ笑うだけ。
「強いね」
友達はそう言う。
でも本当は、違う。
ただ。
泣き方を忘れただけ。
ある日の帰り道。
私は公園のベンチに座っていた。
空を見上げる。
なんだか今日は、胸が苦しい。
でも。
やっぱり涙は出ない。
そのとき。
隣に、小さな男の子が座った。
男の子は、顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。
「うわああああん!」
私は少しびっくりした。
「どうしたの?」
聞くと、男の子は言った。
「おかあさんとはぐれたぁ…」
なるほど。
私は周りを見た。
「大丈夫。きっとすぐ見つかるよ」
そう言って頭をなでる。
すると男の子は、まだ泣きながら言った。
「おねえちゃんは、泣かないの?」
「え?」
「ぼく、おねえちゃんだったら泣く」
私は少し笑った。
「私は泣かないよ」
「なんで?」
その質問に、少し考える。
「……強いから、かな」
そう言うと。
男の子は首をかしげた。
「ちがうよ」
「え?」
「ほんとに強い人は」
男の子は涙をぬぐいながら言った。
「泣ける人だよ」
その言葉に、胸がドクンとした。
そのとき、遠くから声が聞こえる。
「ゆうたー!」
「あ!おかあさん!」
男の子は立ち上がる。
走っていく前に、私を見て言った。
「おねえちゃんも、泣いていいんだよ!」
そう言って手を振った。
私は一人でベンチに残った。
空を見上げる。
さっきまでと、同じ空なのに。
なぜか、涙があふれてきた。
止まらない。
ずっと我慢していた分みたいに。
私は思った。
泣くことは、弱いことじゃない。
ちゃんと前に進むために。
必要なことなんだって。
たまには、泣いてもいいのかもしれない。