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目が覚めると、見慣れた天井と照明が視界に入った。 頭はガンガンと割れるように痛いし、何より腰から尻にかけて、これまで経験したことのない重だるい痛みが居座っている。
(俺は……いつの間にか寝ちまったのか……)
今、何時だろうか。寝返りを打とうとして、視界いっぱいに瀬名の穏やかな寝顔が飛び込んできて、ドキンと心臓が跳ねた。
「おい……寝てんのか?」
問いかけてみても返事はない。代わりに、規則正しい安らかな寝息が聞こえてくる。
「チッ。気持ちよさそうな顔しやがって……ムカつく」
悪態をつきながらも、理人はモソモソと布団の中に潜り込み、瀬名の懐に収まるようにして身体を寄せた。伝わってくる温もりが、今はひどく心地よくて離れがたい。
『――理人さん……愛してます』
意識が落ちる寸前に投げかけられた言葉が、脳内で何度もリフレインする。じわじわと頬が熱くなるのを感じた。
愛だの恋だの、くだらないと思っていたはずなのに。その言葉が、今は妙にくすぐったくて、温かい。
若くて顔が良くて、都合よく遊べる「セフレ」。 本当なら一夜限りの遊びで終わるはずだった。身体の相性が良すぎるせいで、ズルズルと関係を続けてしまっているだけだ……。そう自分に言い聞かせる。 昨夜の忘年会での女子に対する反応を見る限り、瀬名は他の女とも器用に立ち回れるはずだ。自分だけが特別ではない。そう思うと、胸の奥がズキリと疼いた。
「ん……理人さん……?」
「っ……!」
不意に瀬名が目を覚まし、驚いた理人は慌てて距離を取ろうとしたが、それより早く瀬名の長い腕が伸びてきた。 グイッと引き寄せられ、抱きしめられる。瀬名は理人の首筋に唇を寄せると、跡を残すように強く吸い付いた。
「っ……! 馬鹿、見えるところには……っ」
「大丈夫ですよ。服を着ていれば見えないところに付けましたから」
「そういう問題じゃねぇよ」
理人は眉間に皺を寄せ、瀬名を睨みつける。だが、瀬名はお構いなしにニヤリと不敵に笑った。
「昨夜の理人さん、最高に可愛かったです」
「うるせぇ、黙れ」
羞恥に耐えきれず、上掛けを被ったまま背中を向けると、瀬名は背後からぴったりと重なってきた。理人の鼓動は、もう自分でも制御できないほど速まっていく。
「理人さん……好きです。ずっと一緒にいたい……」
切なげな声で囁き、包み込むように腕を回してくる。
「……会社で、ずっと一緒だろ」
「それでも足りないんです」
「お前なぁ……」
溜息をつきながらも、その腕を振り払うことはできなかった。
「お前みたいな絶倫と一日中一緒にいたら、俺の身体がもたねぇよ」
「でも、好きでしょう? 僕とのセックス」
「……調子に乗んな、クソガキが」
毒づく言葉とは裏腹に、声は甘く蕩けてしまう。理人は瀬名に向き直り、軽く口づけると、その耳元で吐息を漏らした。
「……まあ、嫌いじゃない」
「ふふっ。本当に素直じゃないですね」
瀬名は嬉しそうに笑うと、理人の顔を啄むように何度もキスを落とした。 冬の冷えた朝の空気が、二人の熱にあてられて甘く色づいていく。
「……そういえば、お前。なんで昨夜は髪を上げてたんだ? 女除けのつもりなら、いつもみたいに前髪を下ろしてりゃよかっただろ」
「え? あぁ、あれ……ですか? あんな風にして僕が女性に囲まれていたら、理人さんが少しはヤキモチを妬いてくれないかな、と思って」
「……は?」
予想外の答えに、理人の口から間の抜けた声が漏れる。
「まあ、あくまで希望的観測だったんですけど。まさか、あんなにストレートに嫉妬してくれるなんて……」
「……じゃあ、何か? 俺は最初から、お前の手のひらの上で転がされてたってことか」
「簡単に言っちゃえば、そうですね。嫉妬する理人さん、すっごく可愛かったですよ」
「っ……!」
瀬名はクスリと笑いながら、理人の身体を軽々とベッドに押し倒した。
「おい! お前、また何を……っ!」
「何って……『ナニ』ですけど」
「ふざけんな! 昨日あれだけやっただろ!」
「僕はまだ、足りません」
「この性欲魔人が……っ!」
「褒め言葉として受け取っておきますよ」
「褒めてねぇ!! ……って、おい! 話を聞け……っ!」
朝の澄んだ空気に、理人の切実な叫びが虚しく響く。 瀬名は楽しげに笑いながら、抵抗する理人の唇を再び熱く塞いだ。