駿はまだ落ちない

了解です。では第4話、テーマを 「完全な孤立」 に置き、駿の社会的・精神的崩壊が加速する内容で書きます。

自業自得感を維持しつつ、友人・家族・仕事、全てのつながりが消えていく様を描きます。

「孤立という牢獄」

駿は、朝目覚めた瞬間から、もう誰も自分を気にかけてくれないことを知っていた。

電話は鳴らず、LINEは未読のまま。

メールも届いていない。

通知の音すら、ここ数日聞いていない。

「……全部、俺のせいだ」

ベッドの端に座り、重く垂れた頭を抱える。

鏡に映る顔は、昨日より疲れていて、昨日より暗い。

自分の視線を避け、目をそらす。

昨日の失敗、今日の遅刻、バイトでのミス。

すべて自分が選んだ道。

他人に責められることもない。

自分で作った孤独が、静かに重くのしかかる。

大学に行く決心をした。

しかし、教室に入った瞬間、駿は異様な空気を感じた。

亮や智也は席を離れ、少し距離を置いて座っている。

他の友人たちも、笑い声を消し、ちらりと駿を見ては視線をそらす。

あの時の冷たさ、バイトでの失敗、全てが積み重なって、駿は孤立していた。

教授も、言葉を選びながら注意する。

「駿くん、最近の出席状況はどうなっているのかな？」

返す言葉はない。

いや、返したところで何も変わらない。

もう、駿に味方は一人もいなかった。

胸の奥で、冷たい鉄の塊がさらに重く沈む。

目に光はなく、ただ、孤独だけが広がる。

昼休み、学食で一人座る駿。

周りのテーブルからは、笑い声や話題が聞こえる。

食べ物を口に入れる気もない。

財布の中身も、ほとんど残っていない。

「……全部、俺のせいだ」

空腹も孤独も、言葉にすると軽くなることはない。

胸の奥の穴は深くなるばかりだ。

誰も近づかない。

声も届かない。

自分で築いた壁が、完全に周囲を遮断していた。

バイトでも状況は最悪だった。

店長はため息をつき、他のスタッフは目を合わせない。

客のクレームも重なり、レジのミスは日常茶飯事になった。

「……全部、俺のせいだ」

思わず声に出す。

誰かに聞かせるためではない。

胸の奥で響く穴の音に、自分自身が耐えられなくなったからだ。

商品を落とすたび、数字を間違えるたび、心が少しずつ崩れていく。

謝っても、取り返しても、失った信用は戻らない。

駿は自分で全てを壊したことを、はっきり理解していた。

帰宅途中、雨が降っていた。

傘は忘れた。

濡れたシャツが体に張り付く。

冷たさが、胸の穴に重なる。

体の震えと、精神の崩壊が同時に押し寄せる。

街灯の下で立ち止まり、駿は小さく笑った。

「……俺って、やっぱりバカだな」

自分の愚かさ、自分の弱さ、自分の選択ミス――

すべてが自分に返ってくる。

誰のせいでもない。

完全な自業自得。

そして、孤立は、その結果だ。

部屋に戻ると、現実はさらに荒れていた。

食器の山、洗濯物、郵便物、散らかったノート。

光の差さない部屋で、駿は布団に倒れ込む。

「……誰も助けてくれないな」

言葉にしても、孤独は消えない。

胸の奥で、冷たい水が広がる。

穴は広がり続け、底が見えない。

駿は理解していた。

もう、元の生活には戻れないことを。

友人も、信頼も、仕事の信用も、すべて自分の手で壊したことを。

孤立は避けられなかった。

そして、それが、駿の人生の現実となった。

夜、布団の中で駿は考える。

――俺は、もう、誰とも関われない

――全部、自分で選んだ結果だ

涙も出ない。

声も出ない。

ただ、胸の奥で、孤独が重くうねる。

外の世界では、明日も日常が続くだろう。

学生たちは笑い、店は営業を続け、誰も駿を気にかけない。

その現実に、駿は逆らえない。

胸の穴は深く、暗く、冷たく、広がる。

駿はその穴に身を預け、静かに、自分の孤立を受け入れるしかなかった。

翌朝。

駿は目覚める。

昨日と同じ孤独。

昨日と同じ失敗。

昨日と同じ後悔。

そして、胸の奥で確信する。

――俺は、自分で全てを壊した。

――もう、戻れない。

自業自得の孤立。

それが、駿の新しい日常になった。