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永目side
男性は空き瓶を持った手を思い切り振り上げた。
思うように体が動かず、その空き瓶が頭に当たる。
頭からは血が出ていた。
「お前なんか死ねよッ゛」
その人は反抗する。
でも、上手く体が動かない。
声をあげることしか出来なく、その人の目からは涙が出てくる。
「親父ッ、お願いッ」
それでも、親父と言われる男性はその人に近付き、みぞおちを思い切り殴る。
「ぁ゛あ゛ッ」
「彩を返せよッなあッ」
男性はその人の制服の襟を掴み、上下に揺らす。
「親父ッ落ち着けよッ」
その人は男性の事を突き飛ばし、男性の上に乗る。
「来未ッ!」
「親父ッ落ち着けッ!」
男性はその人、いや、早見の事を空いていた手で叩く。
「お願いッ親父、」
「彩を返せよッ」
男性は早見の声なんて聞かず、ただひたすらに叩き続ける。
「母さんは戻ってこねぇよッ、」
「彩を返せって言ってんだよッ」
早見の頬はりんごのように真っ赤に赤くなっている。
「親父のこと殴りたくねぇから、」
「彩はどこなんだよッ!」
早見は覚悟を決めたように拳を握る。
「母さんは……、もう⋯⋯、死んだんだよッ!」
「彩を返せよッ!お前のせいなんだよッ!」
「黙れよッ」
早見は男性の事を殴った。
「いってぇなぁッ!」
男性は早見の事を押し倒した。
男性は早見のことをひたすら殴る。
「ぁぁ゛ッ、」
「彩を返せッ!」
早見の意識はどんどんと遠のいていく。
早見は周りを見た、
そこには机の上に丁寧に置かれている彫刻刀があった。
早見は、それをしっかりと握り⋯⋯
ぴぴっぴぴっぴぴっ
「はぁ゛はぁ゛」
僕は目覚まし時計を押した。
夢に早見が出てきた。
嬉しい、嬉しいはずなのに、
僕は汗か涙が分からない液体を拭う。
昨日、早見は逮捕された。
道路向こうに行こうとしても、早見はずっと止めてきた。
もし、今見た夢が実際にあった事なら、
「創太ー!朝ごはんー!食べてー!」
お母さんの声が聞こえる。
僕は制服に着替え、ふらつく足で1階に降りた。
「おはよう」
「はい、おはよう」
僕は椅子に座る。
でも、食欲は起きない。
「今日、朝ごはんいらないかも」
お母さんは少し黙った後、口を開く。
「分かったわ、ラップ包んでおくね」
僕は部屋に戻った。
僕の心の中は後悔でいっぱいだった。
最後、喋った時少しでも違和感に気付けば、早見を救えたかもしれない。
救えなくても、支えられたかもしれない。
考えたくないのに考えてしまう。
僕はゆっくりと学校の準備を始めた。
玄関に着き、扉を開ける。
「いってきます」
「これ、おにぎり」
「ぇ⋯」
「今食べなくてもいいから⋯ね?」
「ぁ、うん、ありがとう」
「はい、行ってらっしゃい」
早見にはこうやって優しくしてくれる母親も居ないんだ。
早見を支えられなかった自分にどんどん嫌気が刺してくる。
僕はとことことゆっくり歩く。
気付くと学校に着いていた。
校門を抜けると最初に早見と喋った場所が見える。
僕はそこからすぐに目を逸らし、教室に向かった。
「あ!創太、おはよう」
「ぁ、おはよう、」
「あれ、今日元気なくない?」
友達は僕の不調に気付いてしまった。
「そんなことないよ、大丈夫だから、」
「じゃあ、なんで泣いてるの?」
「ぇ⋯」
僕はそう言うと同時に目尻を触る。
確かに、手は濡れていた。
目から出る水は収まることなくずっと出てくる。
「ほんとに大丈夫か?」
「ぁ⋯、ぃ、や⋯⋯」
喋り方も忘れてしまったのだろうか。
思っていることが口に出ない。
友達は何か言っている、
でも聞き取れない、
「⋯保健室、」
それだけは聞き取れた。
保健室に行かなきゃ、
早見が心配して来てくれるかもしれない、
僕はただ真っ直ぐ、保健室へと向かった。
保健室に着くと、体全体がふわっとした感覚に包まれた。
早見は握りしめた彫刻刀で男性の事を何度も刺す。
赤黒い血が飛び散り、早見の顔にもかかる。
男性は声にならない声を上げる。
でも段々とその声は小さくなっていく。
男性は血を流し、その場から動かなくなっていた。
早見を言葉に表せない目で見ている。
早見は部屋から出て行ってしまった。
僕は早見に向かって、声を上げようとする。
「⋯⋯くん!⋯目くん!永目くん!」
「はっ、はぁ゛っ」
(ここは、)
僕は首を左右に振る。
僕の思っていることを察したのか保健室の先生は口を開く。
「ここは保健室ですよ」
先生の言葉は何も入ってこない。
考えるのはただ1つ。
早見に会いたい、
その言葉が僕の心を支配する。
僕の心の中は後悔と会いたい気持ち、
どうしようもない、
僕が見ていた夢は全て過去。
未来が見えていたら違ったのかな、
「今、見ても遅いんだよッ」