みく「せ、瀬戸くん……?!」
急に抱きしめてきた俺に驚いたように、胸の前に手を出して抵抗しようとする山野は、思っていた以上に非力で、庇護欲が掻き立てられた。
せと「絶対、絶対俺が守る。1人で、とか迷惑かけないように、とか考えんな」
みく「…?」
何を言ったのか理解できない、というような顔で俺の方を見上げる山野は、なにか思いついたように話し出す。
みく「瀬戸くん、ずっと思ってたんだけど。それ、勘違いじゃないかな……」
せと「は?」
みく「や、その……、私のこと、好き、ってやつ?」
目を逸らし、少し赤らんだ顔でそういわれる。今度は俺が何を言ったのか理解できない、という顔で山野を見つめる。勘違い?山野のことを好きな気持ちが?
みく「私が、よく体調崩すから、心配する気持ちと勘違いしてるんじゃないかな、って……」
せと「いやっ、はぁ??」
分かってはいた。山野は俺に興味が無いということは。だとして、ほかの女子との扱いの差に気づいてないとは思わかなった。
養護教諭の吉野?先生がやってきて、授業に出ることを促されたあとも、ずっと頭に残り続けていた。
勘違い、か。そんなわけないんだけどな。だって俺は山野が体調不良になりがちだと知ってから好きになったんじゃなくて、好きになった結果、体調不良になりがちだってことに気づいたわけだし、勘違いする要素、一個もないな。
【みく視点】
もしかして、勘違いじゃない……?
意を決して瀬戸くんに聞いてみた結果、言葉にならない反応をされた。それを聞いて私が思いついた結論は、勘違いじゃない、本当に瀬戸くんは私のことが好きなのかもしれない、ということ。まさか、とは思うけど、ひとつの可能性が頭によぎった。
はてな「やまみーははてなが守るからね!大丈夫、はてながいるから!」
あのはてなの言葉。瀬戸くん本人からその話を聞いていたんだとしたら。あの時、私がトイレに立った後、あの7人が話していたのは噂の話のはず。その話を聞いた上ではてながあの言葉を言ったんなら。私より、他のクラスメイトより交流が深いであろうはてなたちが、瀬戸くんの話を聞いて勘違いじゃなく、ちゃんと”好き”という気持ちを持っていると判断したのなら。
私はとんでもなく失礼なことを言ったんじゃないだろうか。
熱はそれほど高くなかったが、倒れたという事実と、数分気を失っていたこともあって、早退することにした。正直、おばあちゃんに迷惑をかけたくないと思ったけど、
婆「朝から体調悪かったんなら言いなね、ばあちゃんに迷惑とか考えんじゃないよ」
とまぁ心を見透かしたような言葉を言われたので、ここは大人しく甘えることにした。
家に帰ってからも、瀬戸くんに言った言葉を思い返しては、申し訳ないな、と思っていた。
その日の夜、かなりの高熱が出た。明日病院に行くということで、とりあえず今日はゆっくり休むことにした。最近、いつにも増してよく体調を崩す気がする。ストレスで悪くなることもあるらしいし、もしかしたら噂によるストレスかもな、なんて呑気に考えた。
【はてな視点】
瀬戸さんに呼びだされた。まぁ十中八九美紅のことだろうし、倒れたって聞いたし、美紅のことははてなも心配だから応じる。瀬戸さんは、予想外の言葉を放った。
せと「俺はさ、山野のことガチで好きなわけよ」
はてな「はい???」
そんなこと分かりきった話。よく考えたらこの前美紅が真っ青になって保健室に向かった日、昔から体調悪くなりがちとか言ってたの普通に意味わかんないし。美紅のこと気にしてみてなきゃそんな言葉出てこないじゃん。
はてな「な、なに急に」
せと「いや、なんか山野に勘違いって言われたから」
はてな「告ったの?!許されなくない?」
せと「いや許されはするだろ。あとまだギリ告白ではなかった」
ギリ、ね。まぁそれなりのこと言わなきゃそんなこと言われないもんね、そうだよね、昨日も瀬戸さん倒れた美紅のこと保健室に送ったって言ってたし、そんときだよね絶対に。
はてな「で、それをはてなに言ってどうしたいの瀬戸さんは」
せと「どうしたい、まぁはてなは山野と付き合い長いし、解決法みたいなの出してくれるかなって。」
はてな「え、自分で考えろし」
せと「そんな気もした」
なんではてなが瀬戸さんの恋路を応援しないといけないのか。元々はてなはせとみく否定派ですが?まぁでも……
はてな「みくのこと助けようって気が少しでもあるなら、瀬戸さんはちょっと頑張んないと行けないと思う。瀬戸さんの、誰にでも優しい性格が災いしてるとこもあるから。」
せと「……。分かってる」
瀬戸さんは少し目を見開いたあと、真剣な顔付きで返事をした。顔だけはいんだから、この人。
みくを助けるのに、瀬戸さんの協力は必須。それによってみくが瀬戸さんのこと好きになるなら、はてなはなんも言わない。
次の日、美紅は体調不良で休みだった。
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