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すれ違う体温

第12話 - 弱い

2025年04月14日

#NemukoProject

#学パロ

#夢小説

#あもあす勢

#アルジャン

#NP_すれ違う体温

ねむこ💤

【せと視点】

はてな「瀬戸さんの、誰にでも優しい性格が災いしてるとこもあるから。」

はてなの言葉が頭の中をぐるぐると回る。

誰にでも優しい、か。

ハチ「今日休みなの、やまみー」

らん「その呼び方するとはてなに怒られるよ」

ハチ「何でやねん」

せと「まぁ、昨日だいぶ体調悪そうだったしな」

ハチヤマたちと話しながらも、自分について考える。そこまで意識したことはなかった。そんなに優しいか？俺って。

ハチ「瀬戸はねぇ、外面（そとづら）です」

せと「心読むなお前」

ハチ「いや声に出てましたけど！」

らん「わかるなー外面。好きな子にはいいとこ見せたいってなってんだよなー」

せと「そんなことなくない？」

ハチらん「「ありますけど」」

真顔でこっちを向きながら綺麗にハモる2人に、ぐっと眉間にシワがよる。自分でも気づいていなかったことを他人に指摘されるって複雑だな。

そうか、無意識に山野にいいとこ見せようとして、それが全部裏目に出たってことか……いや、ダッサ俺。

隣の空の席を見ながら自分に悪態をつく。いいとこ見せようとして結局その行動が1番好きな人を傷つけて。

らん「瀬戸は自分の顔の良さを自覚した方がいいと思う、本当に。」

ハチ「無自覚イケメンがコノヤロー」

せと「はぁ、？」

別に自覚してない訳じゃない。これまでもそこそこモテてきた自覚あるし、顔良いのかなーとは思ってる。でもそうか、なるほどな〜。まぁ、俺がどれだけ顔が良くて優しくても、それで山野が俺の優しさに漬け込んでるって思考に至るのは意味わからんけどな。

そんな俺の思考をかき消すように、無機質なチャイムの音が響いた。

――

【みく視点】

私は、弱い。

病院の待合室で自分の番が来るのを待ちながらそんなことを思った。なんでかって、自分の体調も管理できないような人間が他の人に迷惑をかけて、さらには瀬戸くんにあんなことを言われたのに失礼な返しをしてしまって。

自分自身がどうしようもなく情けなくて、弱さを突き付けられている。これが体調不良によるマイナスで良くない思考なのはわかっていても、静かな病院の待合室がそんなマイナス思考をさらに加速させる。

このままだと良いことが何もないような気がして、それでも電子画面を見られるほどの気力はなく、雑誌を手に取ってパラパラとめくる。読めても理解できない。頭が回らない。それでも何もしないよりかは幾分もマシだった。

「山野さーん、山野美紅さーん」

診察室の扉から顔だけを覗かせた看護師さんに名前を呼ばれ、雑誌を置いて診察室に入る。

診察を終え、薬の準備を待つ間におばあちゃんに連絡する。薬を受け取って駐車場に出れば、もうおばあちゃんは到着していた。車に乗り込んで、家まで帰る。帰ったあとはすぐに布団に潜って寝る。そんなに動いたわけじゃないのに、思っている以上に体が弱っているのかすぐに眠りについた。

母「美紅〜。ご飯いる〜？」

お母さんの声で薄く目を開ける。ご飯…。グゥ、と控えめにお腹が鳴る。お腹は減っているが普通にご飯を食べる気にもならない。

階段を上がる足音がして、扉が開く。

母「どう？食べれそう？」

みく「お腹は空いてるんだけど食欲ない。」

母「うどんにする？」

みく「うん」

母「じゃあ作って持ってくるから待っててね」

お母さんはどこか吹っ切れたような雰囲気を感じる。私の知らないところで何かあったのかな。

しばらくして、お母さんがうどんを持ってきた。熱すぎず冷たくない、あったかいうどんを啜る。体にぽっかりと空いた穴が埋まっていく、妙な満足感。程よい温度が冷えた心を温めてくれて、安心感に包まれる。

薬を飲んで、スマホを開く。ぐっすり寝てご飯を食べたからか、昼間より頭がクリアで、文字を文として理解できる。

はてな『大丈夫？ちゃんと寝てね！』

みく『まだちょっと熱あるけど朝よりは全然楽だから明日には復活できるかも』

はてな『無理は禁物だからな！噂についてははてな達も動いてるから一人で競うんじゃないぞ！』

みく『うん、ありがとう。心強い。』

はてなは本当に優しい。私の体調だけじゃなくて、噂のことまで。あの件が私の体調に多少なりとも影響がいるのは確かだと思う。別にそれが全てじゃないと思うけど、学校に行きたくないな、と思ってる自分がいることも事実で、”病は気から”という言葉の通りこの気持ちがだるさを引き起こしているのは確か。一人じゃないってわかってるのは本当に心強い。

いつも私の心の支えになってるのは、他の誰でもない、はてなだ。はてながいなかったら、もう私の心はボロボロで何もできなくなっていただろう。

瀬戸くんも、瀬戸くんが体調不良に気づいてくれなかったらもっと倒れることが多かっただろうし、助けられているところは大いにある。

……瀬戸くん、本当に私のこと好きなんだよな。謝らなきゃ、そうだ。学校に行って瀬戸くんに謝らなきゃいけない。

いや、謝るは謝るで失礼なのかもしれない…。

とりあえず今はお風呂に入ってすぐに寝よう。体調の回復が最優先だからね。