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月Lで ほんわかいちゃいちゃする話です
苦手な方は🔙
部屋には静かに甘い匂いが漂っていた。
テーブルの上に整然と並ぶ数種類のケーキ。その中でも竜崎が今フォークを差し入れているのは、チョコとベリーのムース。
「……やっぱり甘いものには敵わないですね、月くん」
足を椅子の上に乗せて、いつもの姿勢でケーキを頬張る竜崎。その無防備な口元に、月はふと目をとめた。
「本当によく飽きないね。毎日毎日ケーキばかりで…」
「飽きる理由がないです。美味しいですから……それに、頭を使うには糖分が必要なので」
竜崎はそう言って、口元についたクリームをぺろりと舐め取る。その無意識な仕草に、月は少しだけ目を細めた。
「……竜崎。それ、取れてない」
「え?」
月は静かに竜崎の方へ身を乗り出す。竜崎が戸惑って目を見開いたその瞬間、月の指先が竜崎の唇の端に触れた。
「ここ。まだついてる」
「……っ、月くん、指で取るなんて……」
「じゃあどうすればいい? 舌の方がよかった?」
意地悪そうな笑みを浮かべる月の顔が、竜崎の顔に近づく。
距離が、数センチまで縮まった。
竜崎の睫毛が一瞬震えた。警戒のような、あるいは戸惑いのような沈黙。
「な、何を……」
「静かに。動かないで」
囁くような声。
月の指先が、そっと竜崎の下唇をなぞる。
「……甘いね、ケーキより」
それはキスじゃない。でも、キスの一歩手前。
竜崎の呼吸が一つ、浅くなる。
「……月君は、そうやって人を翻弄するのが得意なんですね」
「翻弄してるのはどっちかな」
月は小さく笑って、ようやく身を引いた。
けれどその視線は、竜崎の唇から離れてはいない。
Fin