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限界は、ある日いきなり来た。指が動かないわけじゃない。
集中力が切れたわけでもない。
ただ、
勝つ未来が想像できなくなった。
画面の向こうで積み上がるブロックを見ながら、
俺は初めて思った。
──これ以上やって、意味あるのか?
霧島蓮は、今日も勝っている。
俺は、今日も負けている。
努力しても追いつけないなら、
続ける理由なんて、どこにもないはずだった。
その日は、テトリスを起動しなかった。
久しぶりに早く寝て、
久しぶりに夢も見なかった。
翌日、スマホを開くと
過去の戦績が目に入った。
負けの山。
数字だけ見れば、笑えるくらい酷い。
でも、その中に
ひとつだけ、確かな事実があった。
――俺は、逃げていなかった。
何も挑戦しなかった頃の俺は、
勝ちも負けもなかった。
ただ、何もなかった。
今の俺は、負けている。
でもそれは、
本気でやった証拠だった。
そこで、初めて考え方を変えた。
霧島蓮みたいには、なれない。
全国レベルの才能もない。
なら、
俺なりの勝ち方を探すしかない。
速さを捨てて、安定を取る。
派手さを捨てて、ミスを減らす。
勝てない理由を、
才能のせいにするのをやめた。
負ける理由を、
一つずつ潰していく。
地味で、遅くて、
誰も注目しないやり方。
それでも、
少しずつ結果が変わり始めた。
ランキングは、わずかに上がる。
予選の名前が、見える位置に来る。
俺は気づいた。
勝つためじゃない。
天才になるためでもない。
自分が何者かを知るために、
俺はテトリスを続けている。
だから、
まだやめなかった。