テラーノベル
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「足崩しな〜疲れるよ?」
堀川さんはノートパソコンの画面を見ながら正座をしている私のことをきにかけそういった。
「はい…」
私は小さな声でそう答える。そういえば突然あることを思い出し、ロッカーの扉を開けた。
「あったあった…」
安堵の声を漏らし私は例のものを取り出し、丸テーブルの上で作業を始めた。
「え!?日高さんこんな物持ってたんですか!はは〜すごいですね〜」
「いえいえ。父に買ってもらったんです。昨年。でも中々使わなかったからよかったです」
私が取り出したのは長方形型の角が少し丸くなったタブレット。白に薄橙色がかかった色。当時の私はなぜか白にハマっておりその色を購入したのだ。それよりもこれはとても高級。最新能技術が使われており、写真などの画像はとても綺麗。高画質なのだ。容量もとても多い。そのため中々重くはならない。当時これは数量限定で売られており限られた人しか買えなかった。そのため売り場は大混雑。そんな環境をくぐり抜け、私の父は買ってきてくれたのだ。そんな事も知らず当時の私は他のことに遊び呆けていた。最近になってこれはレアなものだと知り使っている。当然今は売られいない。非売品だ。
「いや〜俺も欲しかったんですけど貧乏なので変えなかったんですよ。ははは」
「そうなんですね…」
「まっ続けて続けて!」
そう言うと堀川さんは再度顔をノートパソコンに向けた。それに続いて私もそのタブレットで彼のことを調べ始めた。
6:50。私はタブレットに表示されている時間に目を向ける。
「はぁ〜…自販機で飲み物買ってきますけどなにかいります?堀川さん」
私はのどが渇いたため自販機にでも行って飲み物を買いに行くことにした。
「いいの?じゃあブラックコーヒーお願いできる?」
「はい。いいですよ」
私はロッカーから薄ピンクの折りたたみ財布を取り出し、部室を出た。そのまま校舎方面へと行き、中庭へと行った。そこには赤い自販機と白い自販機の2つの自販機がある。そのおかげでバリエーションが豊富で助かる。その時その時にあった飲み物を飲める。私はそこで黒い色の缶のブラックコーヒーと冷たい麦茶を買った。合計270円のため全て現金で払った。最近現金で支払う人は少ないらしい。友人からは「歌蓮現金で払うんだね」と驚かれた。私は一つの缶と一つのペットボトルを抱え、部室へと戻った。夏の日は長い。今6時なのにまだ明るい。冬はこの時間帯だと真っ暗なのに。小学生くらいの時そのせいで迷子になったこともあったものだ。校庭に目を向けると野球部が練習をしていた。その成果が実るといいね。心のなかでそう言う。
ドシン!!
私がそっぽを向いていたら正面から歩いてきた人と肩がぶつかってしまった。幸い持っていた飲み物は無事だ。私は咄嗟にその人に謝った。
「ほんとうにごめんなさい!」
「チッ…ったく前見ろよ」
鳥島とぶつかったときとはうって変わって態度が悪い。まあ私がぶつかってしまったのが悪が……。その人は男子高校生で3年生だと思う。背が高い。顔はこちらに向けずそのまま前へ進んでいった。左手だけズボンのポケットに入れていた。そういえば一瞬だけ見ただけだがぶつかる前はポケットに手を入れていなかったような……。いやいやそんなわけない。私は部室へと戻った。部室へと入る。すると、堀川さんは先程までと違い立ち上がりコピー機とにらめっこしていた。しかし、ノートパソコンや私のタブレットはそのままだった。私はノートパソコン近くにブラックコーヒーの入った黒く輝く缶コーヒーを置いた。私の麦茶はタブレットの近くに。
「どうしたんですか?堀川さん」
私は堀川さんにそう訊(き)いた。
「あ…いや〜さっき会わなかった?背の高い男子高校生。その人にさ〜ぐちぐち言われて」
「会いました!その人とぶつかりましたよ」
「やっぱり…あいつはここの部員なんだけど朝日っていう人。一年の流星君と兄弟関係。あったことないかも知れないけど〜…」
「朝日さんですか…」
「そう。下の名前は泰我(たいが)。彼はここの学校の廃校の危機をなくしてくれた人物。バスケ部だったんだよ。そこのエース。でも全大(全国大会)に出場し、二回戦敗退後不運に交通事故に遭った。そのせいで左足を粉砕骨折、左腕骨折した。とてもバスケができる状況じゃない。それで退部。その後親の勧めによりミス研に入った。まあそんなに来ないけどね〜」
「残念ですねエースで活躍してたバスケをやめることになるなんて…」
「うん。それでリストカットもしてた。左手にね」
私はそのことを聞いて分かった。きっと彼はその傷を隠すため左手をポケットに入れたのだ。
「……でもぐちぐちって?」
「要求が多いんだ。彼が満足するまでやらないとだからさ。バスケのものはなくしてくれだの資料を印刷しろだのね〜」
「それで今は?」
「期末テストの資料が欲しいから印刷してくれってさっきね」
「それぐらい自分でやればいいのに…」
私は誰にも聞こえないくらいの小さな声で言った。
「家庭環境は別になんともないのにね〜」
私は丸テーブルの周りに座った。そして暗いタブレット画面に映る自分の顔を見つめた。朝日さんは決して悪い人ではない。でもバスケができないからってミステリー研究部のみなさんに当たる必要はないと思う。それよりと私はタブレットを起動し、鳥島のことを調べ始めた。
約15分が経ち、先生が「もう帰って」と言ったため私と堀川さんはロッカーから荷物を取り出し部室を出た。夏とはいえどもう辺りは真っ暗。まあ冬よりはマシだが。
「今日はありがとうございます。私の頼みを調べてくれて」
「いいのいいの。今なんてそれくらいしかやることないからさ」
堀川さんはそう当たり前のように笑顔で言った。
「それじゃ俺はこっちだから。それじゃあ日高さん!また明日!」
正門前で私達は別れた。
「はい。また明日」
私は堀川さんに向かって小さく手を振った。それに気付いた堀川さんは笑顔で小さくペコリとした。その後私達はそれぞれの家へと帰った。
家路につきいつもの住宅風景を眺めていた。住宅風景と言っても一種類ではない。私の知らない花が咲いていたり、カラフルな壁色をしていたりなど種類豊富。そのため何回見ても私は飽きない。そんな時後ろから私の両肩をポンと叩かれた。私はストーカーでもいるのかと思い鳥肌が全身にたった。後ろを向けなかった。
「歌蓮。一人だと危ないですよ。俺が付き添いますから学校で待っててくださいよ」
後ろから聞こえたのは聞き覚えのある声がした。きっとあいつだ……。鳥島伊織。
「あの…」
「俺、なんと思われようと歌蓮の味方です」
こいつはなに言ってるんだと思いながらも私はなぜか嬉しく思えた。夜道、女子高生が一人で歩くというのは危ない。一人でもいいからそばにいてほしいと思ったことは何度もある。なぜか…私は初めて彼をいい人なんだと思った。
「……」
「歌蓮?」
「なんでもない」
「そうですか…」
その後、話はしなかかった。沈黙の中二人は自分の家へと帰ったのだ。
「ただいま〜」
私は自分の家である紺色の屋根の家のドアを開け、そう言った。
「今日は遅かったわね。夕飯作ってあるから食べときな」
ぶっきらぼうな声がリビングの方から聞こえた。きっと母だろう。最近母とは仲が悪い。特に喧嘩したとかじゃないけど……。
私は自分の部屋へと入り、制服から部屋着へと着替えリビングへと向かった。父はまだ帰ってこない。当たり前。父の仕事はホテルスタッフ。そこで寝泊まりしているのだから。たまに帰ってくるくらい。
私はリビングへとつくと白いLEDの光りに包まれた長方形のテーブルの周りにある木製の椅子に腰掛けた。目の前には晩御飯と思われる白飯とお味噌汁が置いてあった。あとは焼き魚。その食べ物にラップがけはされていない。そのせいでハエが食べ物につきそうになる。その度私はそのハエを追い払っている。やっと落ち着き「いただきます」と小声で言うと箸を手に取り晩御飯を食べ始めた。晩御飯はいつもと変わらない味がした。
その後私は風呂へ入り自分の部屋へ行きベットの上で横になった。その時ふと私はあることを思い出しスクールバックの中を漁った。
「あった」
掘り出し物のように奥へ奥へといってしまった缶コーヒー。私はそれを手に取り開けた。そして一口コーヒーを飲んだ。
「にっが…」
私はコーヒーの苦みを味わい顔をしかめた。しかし思った以上に苦くはなかった。これだったら飲めるかも…私は先程の苦みを忘れたかのようにもう一口飲んだ。
「うえ〜…」
やっぱり苦かった。しかし、これが飲めるようになったら格好いいなあそう思った。まあその夢はまだまだ遠いいだろう。
コメント
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さいこ〜!!!!✨️💖