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#怪異
阿炎快空
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#ダークファンタジー
阿炎快空
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阿炎快空
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——はい! という訳でね。
ちゃんナギは残念な結果になっちゃいましたけど、修君達は無事に元の世界に戻ってこれたということで。
安心したー、ってリスナーも多いんじゃあないでしょうか。
——おやおや?
何か言いたそうだね、そこの君。
なんで今更、小粋なトークでお馴染みの、このMr.CHAOSがしゃしゃり出てくるのかって?
まあまあ、細かいことはどうでもいいじゃない。
てゆーか、みんなが物語の全貌を知ることができたのは、この僕のおかげなんだから。
もっと感謝してくれてもいいくらいなのよ?
いや、マジだって!
修君の主観でカバーしきれないところは、僕の視点をみんなに共有させてあげてたんだから!
時間を遡ったり、人物の内面を覗き込んだり——そう、文字通り『神の視点』ってやつをね。
え?
いきなりメタなことを言うな?
そもそも、お前はホントに神なのかって?
フフ——それこそどうでもいいことだよ。
どう答えたところで、それが真実かなんて君らには判断できないんだから。
さてさて。
この後、修君達の後日談がエピローグとして語られるのですが——その前に一つ、触れておかねばならない件が残っています。
ずばり、魔女のその後について。
オーケー、オーケー、わかってますって。
「さっき燃やされて死んだだろう」って言うんでしょ?
でもあの時、拝み屋の彼女も意味深に呟いてたよね?
悪名高い〝宵闇〟の最後にしては、少々呆気ない気がした——って。
実のところ、彼女の勘は正しかった。
魔女は全員の裏をかき、あの場からの逃亡に成功していたんだ——
鴉達に裏切られ、体を啄まれているまさにその時。
周囲に飛び散った黒豹の血痕の一つが、ドクン、ドクンと脈打ち始めていた。
血液が凝縮し、黒く変色する。
米粒よりも小さなその塊は、蚤のような見た目へと形状を変化させた。
燃やされる黒豹の体には構わず、ぴょんぴょん飛び跳ねながら移動する。
目指す先は、横たわるオーマの死骸だ。
修に箒を渡し、最後の役目を終えた蔓が、地面を這って、ゆっくりとオーマの口の中へと戻って行く。
蔓が完全にしまわれ、『森』への入り口が閉ざされる寸前——蚤は一際大きくぴょーんと飛んで、オーマの口の中へと消えていった。
『森』へと逃げ込んだ蚤は、徐々にその体を肥大化させた。
やがて、黒猫へと変身し終えた蚤——いや、〝宵闇〟の魔女は、くそっ、と苛立たしげに悪態をついた。
間一髪だった。
手下達に裏切られた瞬間、魔女は自分の敗北を悟った。
そして素早く、目的を勝利から逃亡へと切り替えたのだ。
魔女は飛び散る血液に、自らの魂を移した。
肉体の交換と同様、普通であればそんなことは不可能だ。
しかし、不死の黒猫の肉体と、〝宵闇〟の魔女の才能——その二つが、再び不可能を可能にしたのだ。
とは言え、魔女はその魔力の大半を削られ、黒猫の体は骨と皮だけの貧相なものと成り果てていた。
サビ猫の『森』は主の死を受けて、急速に枯れ始めていた。
『森』に入るのは初めてだったが、魔女は慌てなかった。
あんな餓鬼共が抜け出せたのだ。
自分が脱出できない筈がない。
魔女は目を凝らし、魔力の残滓を探した。
修達が箒で移動した軌跡が、うっすらと見える。
魔女は背中に蝙蝠の羽を生やすと、空へと舞い上がった。
力なくふらふらと飛びながら、修達の辿ったルートを遡る。
(まずは棲家に戻って、魔力と体力を回復しなければ……覚えてろよ……餓鬼共も、拝み屋も、鴉共も……全員八つ裂きにして、蜥蜴共の餌にしてやる……!)
激しい憎悪を原動力に、魔女は紫の霧の漂う、自らの『森』へと辿りついた。
息を切らしながら羽を体内にしまい、ゼイゼイと息をつく。
長年保管していた『肉の実』はすっかり腐ってしまっていたが、贅沢は言っていられない。
何粒か食べると腹が膨れ、魔力もそこそこ回復した。
(少し眠ろう……疲れで、頭が回りゃあしないよ……)
まどろみの中、魔女は昔を思い出していた。
あれは、彼女が完璧な不死の方法を躍起になって探し求めていた頃のことだ。
魔女はとある、城壁に囲まれた都市を訪れた。
その都市の神殿には、迷えるものを導くという壊れたラジオが祀られていた。
研究に行き詰まっていた魔女は、馬鹿げているとは思いつつ、半ばやけくそで祈りを捧げてみた。
すると周囲の時間が止まり、ラジオの向こうから謎の声が語りかけてきたのだ。
声の主はいろいろ無駄口を叩いたが——要点を纏めると、内容は次のようなものだった。
不死を望むなら、黒猫と肉体を入れ替えろ。
そうすれば、寿命や病気、事故で死ぬことはない。
不便はあるだろうが、無限の時間を味方につければ、やがては改善もできるだろう。
ただし、用心すること。
世の中には「不死者」と呼ばれる存在を殺す為の、特殊な武器や魔術も存在するからだ。
『まあ逆に言えば——それらにさえ気をつければ、君は望み通り〝永遠〟を生きることができる。この僕が保証するよ』
(こんな所でアタシは終わらない……幸い、ここには私の蒐集した、魔力を秘めたコレクションが山ほどあるんだ……落ち着いて考えれば、ここから出る方法なんていくらでも——)
と、魔女がそんなことを考えた、ちょうどその時だった。
魔女の体を、光が照らした。
驚いて飛び起きると、すぐ近くの空間に裂け目のようなものが広がり、白い光が漏れ出ていた。
後退りする魔女の目の前で、裂け目は静かに閉じていった。
(今のは——『森』の出口!?)
魔女は口を広げ、いつもやるように口と『森』とを接続した。
それに呼応し、再び目の前に裂け目が広がる。
(そうか——さっきは、アタシのここから出たいという思いに反応したのか——まさか、こんな簡単な脱出方法があるとはねえ——)
魔女はニヤリと笑うと、裂け目へと一目散に飛び込んだ。
そして——それがいけなかった。
この時、魔女の頭は朦朧としており、明らかに考えが足りていなかった。
自らの『森』へ迷い込んだ猫が、広げた口から脱出する——自分の中から外へ出るという矛盾。
それは猫にとって、絶対に犯してはならない禁忌だったのだ。
視界が白に染まる。
体が引き伸ばされる感覚と共に、光のトンネルの奥へ奥へと吸い込まれていき——やがて魔女は勢いそのままに、黒猫の口から射出された。
「!?」
周囲には何もない、ただただ真っ白な空間が、どこまでも広がっていた。
空気抵抗のない虚無を、体が真っ直ぐに進む。
「オエエッ!?」
背後で、魔女を吐き出した黒猫の声が響く。
(な、何だいこりゃ!?)
焦る魔女の体が、空中でピタリと静止した。
慌てて手足をばたつかせる魔女の喉の奥から、何かが競り上がってくる。
「オエエッ!?」
魔女の口から新たな黒猫が勢いよく飛び出し、やはり空中で静止した。
自分と同じ、痩せこけた貧相な姿。
更にその黒猫の口からも、また新たな黒猫が飛び出していく——
「オエエッ!?」
「オエエッ!?」
「オエエッ!?」
「オエエッ!?」
「オエエッ——……」
増殖の連鎖を唖然として眺めていた魔女の体に、突如として強い重力が襲いかかった。
「ひつ——」
物凄いスピードで、下へと引っ張られる。
必死に上を見上げると、自分の吐いた黒猫も、一瞬遅れて後に続いているのがわかった。
その前方の猫も、更にその前方の猫も——次々と落下が連鎖する。
果てしない虚無の中を落ちながら、魔女はついに、自らの意識を手放した。
——どれくらい経っただろう。
一瞬の気もするし、随分長いこと気を失っていた気もする。
時間の感覚がやけに曖昧だった。
あいも変わらずの一面真っ白な空間で、魔女は目を覚ました。
先程と違うことと言えば、ちゃんと地面らしきものが存在することだろうか。
唸りながら上体を起こした魔女は、ぎょっとして身を固くした。
目の前には、五メートル近い距離をあけて自分の吐き出した猫がおり、その更に先にも、そいつの吐いた猫がおり——そんな光景が、延々と続いていた。
しかも、先程とは違い、動きにタイムラグもない。
全員同時に目覚めたらしく、魔女が動くと、前方の猫達も寸分違わぬ動きを見せた。
恐る恐る振り返る。
やはり一定の間隔をあけて、黒猫達が背後を振り返っていた。
完璧なまでの模倣——否。
(こいつらは、アタシ——全員、紛うことなきアタシなんだ!)
魔女はすぐさま蔓を伸ばし、目の前の猫を飲み込もうとした。
慌てて間違いを正そうとした。
しかし、届かない。
消耗した魔女が、体外に伸ばせる蔓の長さ——その射程範囲の少し先に、前後の猫達は居た。
近寄ろうとしても、相手は遠ざかってしまう。
当然だ。
こちらが動けば、向こうも動くのだ。
「だ、誰か——誰かあ、助けとくれえ!」
無駄と知りつつ、天を仰いで叫ぶ。
無限に増殖した己の声が、辺りに響き渡った。
——てなわけで、魔女はあらゆる世界から隔絶された次元に閉じ込められてしまいましたとさ、チャンチャン。
飢餓感はあるけど、不死だから死ぬこともできない。
時に自分を傷つけ、時に自分を喰らい——それでもやはり、死ねやしない。
当然、魔女もやがては狂気に陥る。
でも、時間ってのは残酷でね。
数百年も経つと——ふと、頭が正気に戻る瞬間もあったりする。
そして、全てを思い出し、泣き喚き、自らを傷つけ、再び壊れる。
正気と狂気の境を彷徨いながら、魔女はこの先も〝永遠〟という牢獄に囚われ続けるんだ。
え?
いやいや——僕の関与は、あくまで最初のアドバイスだけ。
結局のところ、全ては彼女自身の選択の結果さ。
ま、これも因果応報ってやつかな?
知らんけど(笑)
——ん?どうしたの、ディレクター?
あ、もうそんな時間?
えー、名残惜しいですが、サヨナラの時間が迫ってきてしまいました。
本日は、こちらのナンバーを聴きながらお別れしましょう。
天界に住む天使達の可愛らしい歌声と、哀れな魔女の絶叫とが生み出すケミストリーは必聴です。
エンジェルラダー聖歌団 feat.〝宵闇〟の魔女で、『嗚呼、この残酷で美しき世界』。
お相手は私、Mr.CHAOSでした。
See you !
コメント
1件
このエピソード、「ちゃんナギは残念な結果」っていう一文で一気に引き込まれましたね…。魔女がまさか血液に魂を移して逃げるとは思わなかった。あの不死の特性をこう使うのか、と。で、結局「自分の中から外に出る」という矛盾にハマって無限増殖の末に虚無の空間に閉じ込められる——因果応報とはいえ、なかなか残酷な末路です。Mr.CHAOSの軽妙な語り口が、その救いのなさを際立たせていて、読後感が深く残りました。最後の聖歌隊と絶叫のコラボBGMもシュールで笑っちゃいました(笑)