テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#元カレ
まぁ
15,183
#nagiコン🐈⬛🩷
りー
251
latte
699
#学園
大正
5,257
第四部 春へ
第二十一話 新しい年、新しい不安
「新しい年は、期待だけじゃなく、決めなければならないことも連れてくる。」
一月一日。
新しい年が始まった。
街にはまだ正月の雰囲気が残っている。
初詣に向かう人。
家族で歩く人。
冷たい空気の中に、
少しだけ新しい始まりの匂いがした。
湊は神社の境内で空を見上げていた。
去年の春。
自分はここまで変わるなんて思っていなかった。
写真を撮ること。
友達と笑うこと。
誰かの夢を応援すること。
全部、昔の自分には遠いものだった。
でも。
今は違う。
*
「神崎くん。」
振り返る。
紬がいた。
「明けましておめでとう。」
「おめでとう。」
自然に笑う。
その笑顔を見るだけで、安心する。
「今年もよろしくね。」
「うん。」
短い言葉。
でも。
その一言が嬉しかった。
*
四人で初詣をした。
蓮はおみくじを開いて叫ぶ。
「最悪。」
「何だったの?」
美桜が聞く。
「……秘密。」
「絶対悪いやつじゃん。」
「人生には試練が必要。」
「急に前向き。」
みんな笑う。
湊も笑った。
こういう時間が好きだった。
何でもない会話。
くだらない笑い。
でも。
いつか変わるかもしれない。
そのことを、最近考えるようになっていた。
*
数日後。
学校が始まる。
久しぶりの教室。
冬休みの話で盛り上がる中。
紬が湊に声をかけた。
「放課後、少しいい?」
「うん。」
少し不安になる。
*
放課後。
二人はいつもの写真部の部室へ行った。
紬は一枚の紙を持っていた。
「これ。」
湊が見る。
海外写真学校の資料。
「……。」
「申し込みの時期が近いんだ。」
紬は言った。
湊は静かに頷く。
ついに。
夢が現実になるところまで来ていた。
「すごいね。」
湊は言う。
「本当に行くかもしれない。」
紬は少し笑う。
「うん。」
でも。
その笑顔には不安もあった。
「怖い。」
紬が呟く。
「今までとは違う場所だから。」
「一人で行くから。」
湊は言葉を探す。
「朝比奈なら大丈夫。」
「神崎くんは、そう言うと思った。」
紬は笑う。
「でもね。」
「一つだけ怖いことがある。」
湊を見る。
「何?」
少し間。
「今みたいに、普通に会えなくなること。」
その言葉に。
湊の胸が締めつけられる。
同じだった。
自分も怖かった。
*
帰り道。
二人はいつもよりゆっくり歩いた。
「ねえ。」
紬が言う。
「もし離れても。」
「写真送るね。」
「向こうで見た景色。」
湊は笑う。
「楽しみにしてる。」
でも。
心の奥では別の言葉が浮かんでいた。
行かないで。
言えなかった。
言うべきじゃないと思った。
紬の夢だから。
*
夜。
湊は写真立てを見る。
クリスマスにもらったもの。
中には四人の写真。
笑っている紬。
楽しそうな蓮。
優しい美桜。
大切な時間。
湊は気づく。
自分はいつの間にか。
過去を残したいだけじゃなく。
未来も一緒に見たいと思っていた。
📷 Photo.021『新しい年の約束』
撮影日:1月7日
未来は楽しみなもの。
でも、
大切な人と離れる可能性がある未来は、
少しだけ怖かった。
コメント
4件
そうなんですよ、、 自分の寂しいって気持ちのせいで紬の夢を将来を壊してしまうのは嫌だったんでしょうね、、 だからグッと堪えたんですよねきっと。そうですね!湊の成長も大事なテーマですね! そうですね!人とのつながりや思いを写真に求めるようになったのも大きな変化ですもんね! 楽しみにしててください!いつも本当にありがとうございます!ー
M.Sさん、お疲れさまです。読了しました。 新年の静かな空気と、紬の海外留学の話が重なるタイミングが絶妙ですね。湊が「行かないで」を飲み込むところ、グッと来ました。自分の気持ちより相手の夢を優先するって、簡単なようでできない選択だと思うんです。その一瞬の迷いや葛藤が、地の文の余白からじわじわ伝わってきて、読んでいて胸が苦しくなりました。 あと、四人の初詣のやりとりが自然で、だからこそ「いつか変わるかもしれない」という湊の不安がリアルに響きました。写真立てのエピソードも効いてますね。過去を残したいから未来も一緒に見たい——その変化が湊の成長であり、同時に新しい痛みでもある。構造がしっかりしているなと感じました。 次が気になります。