テラーノベル
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紙をめくる音がする
「う…」
目を開くと明かりに目が眩む。
そのままぱちぱちと目を瞬かせながら光に目を慣らしていくと周りに人がいるのに気がつく。
「ここ…どこ?」
大事なものをわすれている気がする。
「目を覚ましたんだね。」
後ろ誰かの声。頭がさえてゆく。
鈍っていた。急いで攻撃を…
「わっ。おちついてくれ!私は敵じゃない!」
気の抜けるような声。
「う…ん…」
「うー…」
そして布の擦れる音。
「ああ、他の子も目を覚ましたみたい。情報交換をしよう。」
「それを信じろっていうの?」
「ほら、何事も挨拶から、とか言うでしょう?」
「わあっ!喧嘩かい?怖いからやめてくれよぉ…」
「今争ってもいいことは無いだろう。やめておいたほうがいい。」
「ほら、多数決だよ。少なくとも現状を擦り合わせるのはそちらの方が良い。」
それもそうか、と納得して武器をおろす。
「ふう…どうにかなった…言い出しっぺの法則として、私から自己紹介をしよう。」
くるり、とおどけるように小柄な男が笑う。
「私の名前は鈴風。記憶はあんまり無いね。だけどよろしく!」
「ふむ。覚えていることなども言ったほうがいいのだな。」
「ああ、行動しやすくなる。」
「そうか。…俺は鍾離。ある国の葬儀屋で客卿をしていた記憶と知識はあるが、それ以外はあまり無いな。よろしく頼む。」
俺と同じくらいの背丈の男ーー鍾離が自己紹介をした後、静かになる。
「…も、もしかして次は僕の番かい?…ん、んん、僕はフリーナ!ある国で一番の女優さ!ただ、演技の方法と、ある国で一番の女優だったっていうことしか覚えていないね。」
「そっか…」
少女ーーフリーナの自己紹介を聞き、小柄な男ーーー鈴風が悲しそうな声をあげる。
「次は俺かな。俺はタルタリヤ。覚えていることは家族がいた事、戦うことが大好きなこと、とある寒い国の組織の中の幹部執行官っていうのだったことくらいかな。あと、死んだはずなのになんでかわからないけれど今、動いて声を発しているってこともかな?」
「あ…言われると確かに死んだような気もする…でも…なんで…?」
俺からしてみれば死んでもう戦えないかと思っていたら戦えるようになっていたから嬉しいことだけど、フリーナは恐ろしいことだと感じているようだ。
「つまり、あまり情報は無い、と。」
鈴風が立ち上がりどこかへ行こうとする。
「待て、どこへ行こうとしている」
それを鍾離が引き止める。
「おしまいを探しに。」
「終わりをーーー探しに…?」
鈴風がよくわからない返しをする。
「後日談として永遠に踊らされる、なんて嫌だからね。それに、これが私のやらなければならないことだから。」
よくわからないことを言うその声は、決意の籠もった声だった。
それに、きっと俺の失った記憶も、彼の行く先にある。
そんな感覚を覚え、つい、言葉が口に出る。
「ねえ、俺もそれについて行っていいかな?」
俺の最期を、家族がどうなったかを、この胸にぽっかり空いた穴の正体を知る為に。
彼のおしまいを探す旅についていきたい。
例えそのエンディングが、バッドエンドだったとしても。
「いいよ。人が増えても、やることはおんなじだからね。」
彼はそう言いながら、わらっている。
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