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その時、彼女は2本の薔薇のように言った
「私も君も、鳥籠の中なんだから、世界に2人。だよね」
美しい花には棘があるとはよく言うが。目の前の美しい花は棘ではなく、どこか妖しげで。毒を纏っているように思えただろう
時は20XX年、とある川で心中した、私と彼女。理由こそ色々あるが…それは今は大事ではないので省くこととする。それからどれ程経っただろうか。突如目が覚め、私と共に死んだはずの彼女と目が合う、そして彼女は、鈴がなっているような綺麗な声で軽く笑って言った
「目、覚めた?さっきね、かるーく街を歩いてみたの、でも誰も気づかなかったんだ。私たち、幽霊になったのかもね」
…幽霊、幽霊とは未練や恨みを持った者がなるものだと聞いたことがある。が、私たちにそれらのような感情は全く無いはず。まさか、と思い、咄嗟に口を開こうとするが、それを彼女に止められる
「…大丈夫、私も、君も。そんな感情は持っていなかった。でしょう?」
確かにそうだ、私達は現世に未練なんて無い。なら何故幽霊なんかに…と考えていた所
「まぁまぁ、あんまり深く考えずにさ、どうせなら楽しもうよ〜!」
と、楽観的な彼女に少し安堵を覚える、生前の彼女も楽観的で、どこか飄々としていた。
ニセモノなんかではないようだ。
そうして、彼女が言うままに街に出てみる。確かに誰もこちらに視線を向けなければ、人をすり抜けてしまう。おまけに服屋の鏡にも全く映らない。心なしか、彼女も少し透けて見える程。彼女の言うように、私たちは所謂、幽霊とやらになった、ということだろうか。ハッキリ言って全くの想定外だが…まぁいい、彼女が居るならば。そうして、私と彼女は色んな事をした。電車に乗り遠出をしてみたり。心霊スポットに行って同類を探してみたり、
常世や幽世への行き方を探してみたり。
結局の所、見慣れた現世より、他の見慣れていない場所…常世へと行きたくなってしまうのが人間…いや、元人間の性である。好奇心は死んでも尚機能し続けるとはたまげた物だ。否、感情なのだから当たり前ではあるのだろうが。
永久に変わらぬ物に惹かれるのもまた、私達の性なのだ。
「ねぇねぇ〜、常世って海の彼方にあるらしいよ?早速行ってみよ〜!!」
…という彼女の声が耳に入り、半ば疑いながらも海へ向かってみる事とする。
そうして長い間海の上を浮遊し、進み続けていた所。ふと昔の癖で瞬きをする。そうすると、景色が海からはガラッと変わり、どこか無機質で、光に包まれているような感覚に襲われる。そんな感覚に少し気を取られていると、ある事に気づく
…そうだ、彼女は?
そう思い、少し焦りながら辺りを見渡す。
…いない、見渡しても辺りは光で覆われているだけだ。その事実に気づき、気が狂いそうになってくる
彼女がいない…私1人だけ常世に来てしまったのか、はたまた天国か、状況把握もロクに出来ず、帰り道も分からない子供のように蹲る
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そうして、あの子が私が傍から居なくなったと錯覚して…何年ぐらいかな、多分3年ぐらい、あの子…いや、彼女は完全に精神を壊してしまい、ロクに言葉も発さない人形と化してしまって、私の思い通りとなった。私の事が死ぬ程好きで、狂ってしまった可哀想なあの子。狂ってしまっても私の傍で、生まれ変わらずにずーっとこのまま。私の腕に抱かれていてね。
---・二本の薔薇
この世界にはあなたと私2人だけ