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まふゆが寝ている。それも音もなく静かに。
姿勢良く仰向けになって、手はお腹の前で組まれていて、その体制から微動だにしない。生きているのだろうか。こんなに綺麗に死んでしまうのか。まさか、そんな。だけど、まふゆなら有り得てしまうと思った。
我ながら本当に馬鹿馬鹿しい考えだとは思っている。だけど、不安になってしまった。心臓の音を確かめるべく、胸に手を当ててみる。
──どくり、どくり。
しっかりと心臓は音を刻んでいた。なら安心だ。
「ふぅ……まあ、そりゃあそうよね……」
「……何してるの?」
「うわっ、まふゆ!?」
「…………」
まふゆは胸に当てられた私の手を凝視する。私はそれに気が付いて、急いで手をどかした。
「変態なの?」
「はぁ!?」
「いきなり胸を触ってきてびっくりした」
「ちょ、起きてたならいいなさいよ……」
「別に起きる必要はないと思ったから。いきなり胸を触られるとは思わなかったけど」
「そ、それは、違くて……!」
露骨に被害者ヅラするまふゆ。
確かに触っていたのは事実だが、私には明確な理由があったんだ。理解されないとは思うが……。
「まさか絵名が人の寝ている間にそんなことをする人間だったなんて……」
「あの、違うんだって、まふゆが死んだんじゃないかって、思っちゃって……。それで、確かめてただけ」
「……」
「だから、変態扱いしないでよ。ただ心配してたの!」
「こんなところで死なないけど……」
「まふゆ前ここで消えたいって願って籠もってたでしょ! あと凄い静かで微動だにしないんだもん、びっくりするじゃん!」
「うーん、まあ、そういうことにしておくけど……」
「そうなんだって! もう、こっちは本気で心配したんだから!」
まふゆは首を傾げて、不思議そうに私を見つめた。そらから手が伸びてきて目元を拭われる。
「ん……」
「ごめんね」
「別に……」
目元が少し潤っていたのは、ここだけの話。