テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
同年代の男子は嫌い.すれ違いざまにブスだのキモいだのと….学校の女子だって嫌い.カーストが酷くて私みたいなヲタクは肩身が狭い.
その点2次元は良い.キャラに命を吹き込む声優だって.おじさんだけどイケメンで,おちゃめで可愛くて.あんなイケボで甘い言葉を囁かれてみたいとすら思う.
そういえばもくたおじさん,よく見たらイケオジよな.
そもそもなんで,野菜を取りにくるようになったんだろう….
「おじさんなんでいるの??」
学校から帰宅中,じいちゃんの作業場の前に菊田の車が停まっているのを見た🌸.
鞄を自宅に放り投げ,ビニールハウスに直行した.
「🌸おかえり.ちょっと挨拶しにきたんだよ.」
「挨拶??」
「って,制服も靴も汚れるぞ.着替えてきな.」
「はーい.」
「そんで,アイス買いにいこう.」
「やった!!すぐ着替えてくる!!」
🌸は足取り軽く自宅に戻る.
「おじさーん.準備できた,よ….」
ビニールハウス出入口の引き戸を開けると,着替え途中の上半身裸の菊田と鉢合わせ.
「すまんすまん.すぐ行くから車のところで待ってな.」
「うん….」
言われるがまま車の前で待つ間,余計なことを考えないように🌸は首を横に振った.
「ねぇ,挨拶って??」
移動中,忘れないうちに話題を振る.
「来月から県外に単身赴任なんだ.」
「そうなんだ.野菜送ろっか??」
「それおやっさんにも言われた.長期休暇の時に取りに行かせてもらうよ.」
「そっか….」
そこで会話は途切れたが,まだ🌸が浮かない顔をしているのを横目に見る菊田.
不意に,あの時みたいにブレーキを踏む衝撃から🌸を庇い,手をハンドルに戻そうとした時.
「おじさんのこと好きだから,しばらく会えないのは寂しいな….」
と言いながら🌸は胸先にある菊田の手に自分の指を絡めた.
その言葉・仕草に加え,自分を見つめる目の奥に焦がれるようなものを感じた菊田は,驚きつつも.
「ちょっと遠回りしよう.」
と,もうすぐでアイスを買うお店に着くところを通りすぎていった.
「タバコ吸っていい??」
「良いよ.」
海岸線の駐車スポットに車を止めて,一服深く煙を吐き出す.
「タバコ,嫌じゃないの??」
「お父さんとお母さんが吸ってるから気にしない.」
「そっか.」
「◯◯さんはタバコ嫌なの??おじさんよくベランダで吸ってるし.」
「嫌ではないけど,部屋に臭いがつくのはダメだって.」
「そうなんだ.◯◯さんも県外に行くの??」
「今は行かないかな.3年くらい続くなら話し合わないと….」
「単身赴任の期限決まってないんだ.」
「うん.こっちとあっちを行き来して仕事の橋渡しをする役を仰せつかったものの,わざわざ単身赴任する必要あるんかね.」
「それたぶん単身赴任って言わない気がする.」
「だよなぁ….」
ほどほどに短くなったタバコを灰皿に入れて.
「🌸はさ,好きな子とかいないの.」
「女子校だよ??いるわけないじゃん.それに2次元しか興味ない. 」
「じゃあさっき俺のこと好きって言ったのは??」
「…年上の男の人は別だよ.もくたおじさんは好き.背高いし声もイケボだし,優しいし.」
「“優しい”か….」
菊田はゆっくり身を乗り出して.
「こんなことされてもまだ,俺のこと優しいって思ってくれるか??」
と覆い被さるようにして🌸の唇を奪ってみる.
「◯◯さんにも,こんなことするの??」
と🌸はいたずらっぽく口角をあげた.
「やれやれ.とんだおませさんになっちまって….」
菊田は🌸の頭を撫でて.
「まだまだ俺のかわいい姪っ子ちゃんでいてくれよ??」
そう言って🌸を見下ろす菊田の顔はどこか恍惚としていた.そして.
「またな.勉強頑張って.」
「うん….」
何事もなかったようにアイスを買い,挨拶を終えて帰る菊田を見送ったその夜.
「(おじさんもあんな顔するんだ….)」
🌸は,唇の感触を思い出しながら,疼く身体を慰めるのだった.