そのあと、麻弥ちゃんから今日の場所の連絡先が来て、その店を確認すると、美咲の店。
前に麻弥ちゃんと一緒に仕事してた時、何回かここに私が連れて来たことあったから、それで選んでくれたのかな。
それから時間になって店に行くと、すでに麻弥ちゃんが中で待っていた。
「麻弥ちゃんごめんね~。お待たせしちゃって」
「いえいえ。私もさっき来たとこなんで全然大丈夫です」
「ならよかった」
とりあえず飲み物だけ注文。
「わざわざお時間取ってもらってすいません。透子さんお忙しいのに」
「麻弥ちゃんと会うの久々だし、私もあれからどうなったのか気になってたしちょうどよかった」
「ホントあの時、透子さんにいろいろ力になってもらえて感謝してます」
「麻弥ちゃんホント頑張ってたもんね~。で、あれからどうなった?ずっと小さい頃から幼馴染の人に片想いしてるって言ってたよね~。その人と発展あったの?」
「はい。実はここだけの話しちゃいますと・・・多分近々婚約することになると思います」
「えっ!ホントに!?すごーい!よかったねーおめでとうー!」
ずっと片想いしてたって言ってた相手とうまく行ったと聞いて、こっちまで嬉しくなる。
「あっ、でもまだ結婚はもう少し先だと思います。相手の人の今の仕事が落ち着いてからって言ってて」
「うんうん。でも、未来の約束あるなんて素敵だよ~」
「でもまだまだこれからその人にもっと好きになってもらいたいんでもっと頑張らないとなんですけど」
「麻弥ちゃんホント前よりもっと可愛くなったから充分でしょ~。その人もそんな麻弥ちゃんに好きになってもらったら幸せだと思うよ~」
「・・・ですかね。そうならいいんですけど」
幸せな報告のはずなのに、一瞬不安そうな曇った表情をしたように見えたのは気のせいだろうか。
「透子さんこそ!前より一段と綺麗になられましたけど、透子さんも密かにそういうお話あったりしちゃったりして」
「いやいや!私はまだ仕事一筋なのは変わってないよ~。でもまぁあの時と違うのは、今は支えてくれる大切な存在がいるってことくらいかな」
麻弥ちゃんとお互いのそういう話をしてた当時は、私は前の恋愛が終わって一人で頑張ってる時で。
だからこそ麻弥ちゃんの片想いして頑張ってる姿がキラキラと眩しく感じたのを今でも覚えてる。
だけど。
今は、樹がいる。
私にとって今は樹が大切な存在として傍にいてくれる。
「そうなんですね~!そりゃそうですよね~。透子さんほどの人がずっと一人だなんてもったいなすぎますもん!私が男性なら絶対放っておかないです」
「私も男なら絶対麻弥ちゃん可愛くてたまんないわ~」
「なら私達両想いですね~!」
「そうだね~」
麻弥ちゃんはこうやって昔から慕ってくれてるのがまた可愛くて。
一人っ子の私にはずっと欲しかった妹みたいな存在。
「その方とご結婚されるんですか?」
「いやいや!そんなのまだ考えたことないよ!」
そう。樹とはまだ出会ってそんなに経ってないし、そもそもまだ普通の恋人同士のようなことさえ数えるくらいしか出来てない。
まだまだ普通に樹と過ごす時間を増やしたい。
結婚なんて、そもそもまったく考えたりしたことなかった。
そっか。
よく考えてみたら、私もうそこそこいい歳じゃん・・。
あまりにも一人が長すぎて、現実から遠ざかる日が長すぎて、そんなことも忘れてかけてた。
だけど。多分。
樹との将来はきっと考えちゃいけない。
正直自分より年下の樹には、私との将来は荷が重すぎる。
だから、いつまで続くかはわからないこの関係をただ今は続けたい・・だけ。
あっ・・・。
ていうか、樹との始まりと何も変わっちゃいないや。
樹と出会った時は、嘘かホントかわからないまま始めた関係。
いつ終わるかわからない、ただその時を楽しむ関係。
だけど、いつの間にか好きになって。
そして今は、ホントの関係だったとしても、将来は考えられない、いつ終わるかわからない関係・・・。
結局今を楽しむだけで、いつ終わっても仕方のない関係・・ってことか。
なんだ・・。
前の恋愛より、もっと寂しい恋愛じゃん。
ようやく本物の恋に出会えたと思ったのに、今だってこの先だって、どうなるかわからない。
そして、樹はこの会社を継ぐ人間。
そもそも私は同じ場所にもいないのかもしれない。
そっか・・涼さんよりも、そんなこと望んじゃいけない人好きになっちゃったのか・・・。
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