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8 - 【完結】『歩くから』

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2025年07月19日

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その日、ぺいんととは仲直りをした。夕暮れ時、久々に遊んで思ったのは、永遠にこれが続いて欲しいってこと。それに、ぺいんとはやっぱり面白い。考えることも、悩むことも、思い出すことも、何もかも。

───もう正直、その日何をしたのか覚えていない。ただがむしゃらに楽しかった。嬉しかった。

あぁ、それと。ぺいんとが学校に来るようにも誘えて、無理のない範囲でぺいんとは学校に来ている。でも、やっぱり持ち前の面白さのおかげかクラスのみんなからは人気者だ。それに俺も、病気は完治して元気に過ごせている。

そして小学5年生の時───しにがみさんとクロノアさんが転校してきて、2人ともクラスに馴染めないようだったけれど、ぺいんとの優しい声掛けで俺たちは友達になることができた。

そんな楽しい日々を送っていたある日。それはぺいんとと学校の帰路についているときだった。


「…なぁ、トラゾー。」

「ん?」


ふとかけられたぺいんとからの声。後ろを振り向けば、ぺいんとはぴたりと足を止めていた。それに気づいた俺もぺいんとの少し前で足を止め、向き合う。

───夕暮れのせいだろうか。ぺいんとが逆光のせいで酷く悲しい顔をしているように見えたのは。


「お前、俺に夢聞いてきただろ?…お前はさ、小説家とかになりたいって夢、叶えなくて良いの?」


どうやら作文に選ばれなくなったのに気づいたのか、ぺいんとは心配そうに声をかけてきた。正直、そんな話をされるとは思ってなくて心臓が大きく跳ねる。

俺はぺいんととは正反対の方向に向き、うーんと悩んだ後、もう一度ぺいんとのほうを見た。

その時、太陽が眩しくてかわからないけれど俺は目を閉じてぺいんとに言った。


「うん。もう叶わないから。」


もう叶わない夢。

俺が、叶うはずだった夢を諦めた理由。

それはね─────────




…………………………




「─────・・・なーいしょ!」


そうわざとらしい口調で言うと、3人は「えぇ〜っ?!」と大きな声で叫ぶ。3人の反応が面白くて、つい笑ってしまう。


「教えろよ〜!」

「はいはい、もう撮影始まるから。」


駄々をこねるぺいんとを宥めるように俺は撮影に気を向ける。もうすでに撮影を始める直前で、ぺいんともしにがみさんもクロノアさんも渋々諦めて撮影を始めた。


「はいおはようございますこんにちはこんばんはぺいんとでございますっ!」


…信じてもらえないかもしれないけど、本当は最後まで話す予定だったんだよ?

俺が夢を諦めた理由を。


「クロノアでございます!」


俺があの時、夢を諦めたのは決して劣等感とか、無力感とか…そんなネガティブな感情で諦めたわけじゃない。

…ただ。

ただ、信じてみたくなったんだ。


「しにがみでございます!」


ぺいんとが言った、あの言葉。

“俺がハッピーエンドに持ってってやるから!”

物語なんかじゃつくれない。アニメなんかじゃ再現できない。小説なんかじゃ言い表せない。

そんな、物語人生を──────



「トラゾーでございます!」



───────歩んでみたくなったんだよ。

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コメント

10

ユーザー

一気読みしてしまった…あまりにも良すぎる!!

ユーザー

と、鳥肌です……倒置法とかでより良い文になっててさすがすぎます!!!「信じてみたくなったんだ」のところでウワァァァァってなりました……!

ユーザー

めっちゃ好きです!終わらせ方神すぎる😭トラちゃん推しだからこれ見つけられてよかったぁ!!

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