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天使に恋をした
生きてるうちに誰とも結ばれなかったのはこの為だろう
無謀な恋をした私は愚かだった
こんな私を助けて
エンジェル
「こちら、天国です。貴方様は安土みさかとして立派に生涯を終えました。ここでの生活は貴方様が生前思い描いていたことが強く反映されます。今は姿形がありませんがあちらの扉を潜るとこれからの生活が目に見えてきます。 ここからはお世話係が付くことになっております。転生までごゆっくりと穏やかにお過ごし下さい。」
受付を通り過ぎるとそこには無数の扉があった。その中でも強く光っている扉があった。
「ここが、私の…。」
ドアノブに手をかけて、一歩踏み込む。空白を埋めるように世界が広がっていった。手足の感覚が久しぶりに戻り、空に向かって手を伸ばした。
「ここが私の世界なの。」
「お疲れ様でした。僕が貴方のお世話係です。さあ、こちらへ。」
「あ、はい。」
草原にたった一つの白い屋根の家。清く流れる小川の奥には風車が高く聳え立つ。
「ここが私のお家?」
「ええ。さあ、中へ。」
「お邪魔します。」
家の中に入るとそこには大きなソファとベットがあった。
「なんだか、こじんまりした家ですね。」
「想像が不足しているみたいですね。」
「想像?」
「貴方が思い描くお家はどんなものですか。」
手を引かれてソファに腰をかける。
「さあ、目を閉じて想像してください。」
「(んん。広いお風呂が欲しかったな。足を伸ばせて、ミッドナイトウッドの入浴剤を入れるんだ。そして、若い頃よく着てたワンピース、何着か欲しいな。眺めているだけでもいいの。)」
「さあ、目を開けて下さい。」
「嘘でしょ。信じられない。」
こんなお家に住んでみたかった。こんな老婆でもあの頃の憧れはとめられなかった。 あれ、私。これって。
「10代の頃に戻ってる。」
「基本、死後は貴方が人生の中で一番美しかった姿で過ごします。」
「懐かしいわ。このそばかす。今見ると可愛いじゃない。」
「気に入って頂いたようで…わあ。」
ごろごろがしゃーん。窓の外は大荒れで雷雨だ。
「そうそう。私雷好きだったのよ。」
「なんですかそれ。」
「もしかして怖い?」
耳を塞いで震えたまま動かなくなってしまった。
「ねえ、こっちおいで。」
「え、なんですか。」
次は私が手を引いてソファに二人で座った。
「昔、酷い雷雨の日があったの。その時、こうやって祖母と二人でお話したものよ。」
「すみません。」
「いいの。誰だって苦手なもののひとつやふたつあるものでしょ。」
目に溜めた涙を手で拭う。私より遥かに小さな男の子が愛おしかった。
「貴方のお名前教えて。」
「えっと。僕たち名前ってなくて。」
「じゃあ、エンジェルちゃんって呼ぶかな。」
「エンジェル。ありがとうございます。」
「私のことはみさって呼んで。みんなからそう呼ばれていたの。」
「はい。みささん。」
コメント
1件
ああ、第1話、すごく好きです。「死後に思い描いた世界が現実になる」っていう天国設定がまず綺麗で、そこに老婆が若返って自分を受け入れる場面とか、雷を怖がる天使ちゃんと祖母の思い出を話すみささんの優しさとか、全部が温かくてじんわりしました。「天使に恋をした」ってタイトルも、老婆が天使に抱く愛情として読むとまた違って見えてくる。続き、すごく気になります。