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Hayato × Jinto
J
勇斗は優しい。
例えば朝、勇斗の方が早いのにゴミを出しておいてくれるだとか。自分がどんなに疲れていても態度に出さないし、先ず相手の心配をするところ。
勇斗から別れを告げられてから早3ヶ月。
最初は俺が気まずくて変な距離を取ってしまう事もあったが、1ヶ月を過ぎた頃には元の距離に戻っていた。
D「で、吉田さんは大丈夫なん?」
J「で、は意味がわからないけど」
リリースイベントに向けてのレッスンでやって来た事務所のスタジオにいた先客がストレッチをする俺に声をかけてくる。
俺がいちばんしたくない話題だ。
メンバー全員察して何も聞いてこなかったし、太智だって…。
D「ほら、嘘でも大丈夫って言えへんやん」
そう言われてしまえば言い返す言葉が見つからず頭を抱えてしまった。
大丈夫ってなんだろう。
何を持って大丈夫じゃない。になるのか。
それすらわからないのに。
J「大丈夫になる為の決断だよ」
D「ふうん…」
自分から質問しておいて、興味の無さそうな反応されムッとするが、聞いてほしがったのはもしかしたら俺なのかもしれない。
D「仁人っていつも終わりを見てるよな」
そう言われてしまえば何も返す言葉が見つからず、咄嗟に開いた口を結ぶことしかできなかった。
太智は間違ってない。
それが苦しい。
H「おはよー、?」
険悪なムードになっている所に現れた勇斗は俺の顔を見て一瞬目を見開いて、困ったように肩をすくめた。
J「勇斗…おはよう」
D「勇斗!」
H「太智、あんまいじめないでやってくれよ」
わざと俺らの間を通って荷物を置きに行く勇斗は、やっぱり優しい。
おれはずっとそういう所が…
D「いじめてへんよ。」
H「……わかってるよ」
勇斗はごめんとひとつ置いて部屋を出ていった。勇斗は多分練習用のPCを取りに行ってて、帰ってきたら練習して…それで…おれは……
やらなきゃいけないこと沢山あるのに、おれがやりたい事はなんだったっけ…
D「!…と!仁人!! 」
真っ青な顔で俯く俺の両手ですくように顔をあげさせたのは太智だった。
珍しく心配そうな表情を隠すことなく、大きく開かれた瞳が夜空みたいにキラキラしていて、それがどうしようもなく悲しい。
そしておれは最低なことを言うんだ。
J「おれ 、だいちのこと…好きになれたら幸せになれたのかな」
D「っ!!そんな事言うなよ!!」
あんなに綺麗だった夜空に一瞬にして雲がかかって大雨が降った。降らせたのは俺だ。
本当に最低だ。
太智の気持ちを知ったのは4ヶ月前。
勇斗と付き合って半年が経つ頃だった。
俺が楽屋で眠りこけている時、頭を撫でる勇斗を知っていた。甘えたくてわざと寝たフリをした時もあった。
そんな事が時たまにある日常の中に1回だけ、いつもより小さい手が俺の頭を撫でて旋毛に暖かい感触。
きす、された…?
勇斗はしない。するとしたら唇だから。
ぐるぐると考えていたらスタッフに呼ばれて離れていく体温。なんで、太智が…。
そこからは「いつから?」という思考しか無かった。
あの優しさは?メンバーだから、同期だから優しかったんじゃなくて、恋愛感情で好きだから?じゃあ…その好きが無くなった時、俺のことどうなるの?
そんなタラレバで俺はおかしくなって行ったんだと思う。
その日から勇斗との関係の “ 終わり ” を考えると無性に怖くなって 、勇斗の愛を試すような行動が増えた 。
例えば俺が出したゴミなのにそのまま放置してみたり 、勇斗がほぼ睡眠0の状態で現場入りした時にわがままいってみたり 、体調が悪いからとドタキャンしてみたり…本当に最低なことをした。
でも勇斗は怒らなかった。
それが益々怖くなっていったんだ。
その反面で 、太智には嫌われないようにと行動している自分がいたのがあまりにも滑稽で可笑しい。
それを知っているはずなのに何も言わない勇斗がわからなくて 、天邪鬼な行動をする自分に対するストレスで声が出なくなったのが3ヶ月と15日前だった。
J『ごめん』
筆談で話す俺を静かに見つめる勇斗の視線が痛かった。俺は加害者なのに、なんで被害者みたいな顔してんだろうか。
H「……ソレは、おれがどうにかすれば治るの?」
カタ、と手が震えたのがわかった。
そしてそれと同時に安心したんだ。
ほら、やっぱりこうなるんだ、と。
J『わからない』
H「……言うから、お願いがある」
J「…?」
H「最後に 、キスだけさせて」
そう言われてあの事件があった日からキスを避けていた事を思い出した。
でもそれだと…と文字を書こうとする手を掴んで、強引に唇を奪われた。
そして泣きながら勇 斗は静かに終りを告げ
おれに声が戻ってきた。
そこしばらくして太智からの熱っぽい視線がなくなったが 、太智は何も変わらなかった。
太智はおれのことを好きでいてくれている。
それがただただ、嬉しかったんだ。
好きの形の多さに気づいた時だった。
それから9年が経って、成功と挫折を繰り返して大人になった俺たちは当時のことを一度も掘り返したことはない。
もうずっとずっと奥、思い出の片隅に重い鍵を付けて置いておく。
そう思っていた。
H「仁人ー、9年前のこと覚えてる?」
J「…は?なに、急に」
H「いや、俺らの黒歴史じゃん?」
勇斗にとって黒歴史になっていたと思うと恥ずかしいやら申し訳ないやらで、変な顔をしてしまう。
H「だからさ、塗り替えようぜ」
J「…?どういうこと?塗り替えるってなに消すんじゃなくて?」
H「消さねぇよ。いや、あんなダッセェ俺忘れて欲しいけど、もう間違いたくないから、忘れたくない。」
J「なん、だよ、それ…」
目の前ある瞳は深い海みたいで、ダサくて弱くてダメな俺を包み込んでくれる。
なんでこんなに
J「俺に優しくすんなよ…」
H「するよ。好きだから。あの日から今もずっと。ガキの俺は嘘つきだったけど、今はもう大人だからさ。信じてくれる?」
もう涙でぐしゃぐしゃで前が見えないけど、はやとがわらう。
日が登ったように眩しくて、誰より暖かい。
H「おれの最後の恋人になって下さい」
この話を××年後の最後のファンミーティングで面白おかしく語られるとは誰も知らない。
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