:視点戻ります:
俺はそのあとマイキーたちとバイクに乗ってアジトに帰り、片付けをしていた。
その最中に俺のポケットに入った携帯が鳴る。
この着信の形は…メールか。
俺は携帯を取り出して着信を確認した。
…しかし、そこの名前には、あるはずない俺の名前があった。
訳が分からなかったが、携帯がなんか違うことに気づいた。
…誰かと入れ替わってる。マジか。
とりあえず、メールの内容。
俺はそう思ってメールを開封した。
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おい、花垣。お前携帯入れ替わってんぞ。
とりあえず、千冬ってやつがお前に伝言を伝えたからそれだけ言っとく。
「今すぐ帰ってこい」だと。今日は来ちゃまずかったんじゃないか?
とりあえず、用事済ませたら武臣か春千夜か姫に携帯渡せ。
それだけ。
ーENDー
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
…多分ワカくんと入れ替わったよね、これ。
よりにもよってか…。
多分キレていますよね。ごめんなさい。
…じゃなくて!
…千冬が言うなら悪い予感しかしない…。
「マイキー!俺、千冬に帰ってこいって言われたので帰るね!」
そう焦り気味に言うと、マイキーは動かしていた手を止めて、
「じゃあ送る。多分そっちの方が早いから。」
と、言った。
二人でアジトから出ると、マイキーは「お前ん家?」と聞いてきた。
「うん、俺の家だけど…引っ越したから分かるかな?」
そう言うと、マイキーはこっちを向いて言った。
「じゃ、道案内よろしく。」
そう言ってマイキーは前を向きなおし、バブを走らせた。
…確かにマイキーの方が圧倒的に早かった。
運転上手だな…。
俺はマイキーと離れ、千冬と合流した。
「どうしたの?急に呼び出して。」
そう言うと、千冬は押し黙ったが、「…ついてこい。」と、俺を案内し始めた。
俺は千冬に案内されるがままに中庭に出た。
中庭は、いつもは蝶が漂い、凛とした花が咲き誇っているのだが、今日ばかりは違う。
花は無く、蝶もいない。
そこの中心には、絶句するものがあった。
「え…?」
俺は全身から力が抜けた気がした。
理由もわからず、ただただ呆然としていた。
千冬がゆっくりと話し出す。
「本当は、相棒の母さんは、こうなるはずじゃなかった。俺が悪いんだ。」
俺は顔を上げて、千冬を見た。
その次に、考えるより先に手が出た。
その時に、言われたことを思い出す。
母さんが教えてくれた、「常識」を――
「タケちゃん、大丈夫?どこも痛くない?」
そう言って、母さんは俺の頭を撫でてくれた。
「ごめんね、母さんが任務に連れて行ったばっかりに、巻き込んじゃって…。」
俺は「大丈夫だよ、俺、ヒーローだもん!」と母さんに返した。
すると、母さんはクスッと笑って、俺に言った。
「ヒーローなら、母さんや父さんみたいに、意味もなく人を傷つけちゃいけないよ。いい?」
俺は「もちろん!」と笑って返した。
俺はとっさに手を止める。
そして、千冬に「ごめん」と言った。
千冬は、「いいよ」と言って許してくれた。
千冬と俺は立ち上がると、互いに目を逸らした。
その時、千冬が話し出す。
「俺は、まるで悪魔みたいだな。場地さんも助けられない、相棒の母さんも、未来では相棒までも…。」
そう言うと、千冬は泣き始めた。
「…俺は、お前の母さんみたいな、人を思える人にはなれねぇよ…。」
:千冬の一部始終回想:
俺らは、三ツ谷くんとドラケンくんを探し出すためのミッションを遂行していた。
「しっかし、場所が絞れねぇな…。」
山岸くんがそう言ってたくさん貼られた付箋とにらめっこしていた。
「でも、普通に考えてここらへんは無いと思う。発見情報だったりが少ないし。それに、地形的に一人が見つけたらみんな見つけれるはず。」
そう言って、柚葉は垂れてきた髪を耳にかけ、指でその範囲をなぞった。
「いや、意外にあるかもよ?」
いきなり横から声がした。
そこには、いつの間にか立っていた相棒の母さんがいた。
相棒の母さんは「ちょっと失礼。」と俺の隣に入り、少し位置がずれた場所を指差した。
「ここは廃墟が並ぶ「廃墟通り」。ここに二人が仮住宅を持ったとすると…?」
俺は手を叩いて言った。
「普段からいるから怪しまれない!?」
「ちふちゃん正解!えらいえらい。」
そう言うと相棒の母さんは俺の頭を撫でてくれた。
「だから、調べてみる価値はあるってわけ。」
そう言うと、相棒の母さんは持ってた袋からドーナツを人数分出し、
「せっかくだし、食べよ?」
と言った。
俺らがドーナツを食べ終わった後、いきなりドアが開く。
「お前ら、最近怪しい行動が増えたと思ったら、そんな下らんことをしていたのか。」
そう言って、ずかずかと入ってきたのは、巷で「クロ」と言われている相棒の父さんだ。
「クロ」は俺らを押しのけると、柚葉の胸ぐらをつかんで言った。
「お前はここでは最高地位なんだ。行動はしっかり管理し、こういう行動をする際は許可を下ろすこと。」
そう言うと、柚葉を離し、次は俺に向かってきた。
すると、俺の首を絞めて言った。
「武道はどこだ。」
俺は、言いそうになるわけもなく、こう答えた。
「知らないですよ…多分、遊びに行ってます。」
そう答えると、俺は体を投げ飛ばされた。
至るところが痛い。
次は…と当たりそうにしたとき、あいつの動きが止まった。
相棒の母さんが「クロ」を鞭で叩いたのだ。
「いいかげんにしなさい!」
そう、相棒の母さんが叫ぶと、俺らを庇うための「本当の嘘」を吐いた。
「これは、私が認めたことなの。あなたに許可を出しても許さないだろうと思って、ひっそりとOKしたのよ。」
…もちろん、そんなの嘘だ。
俺らは、このメンバー以外に口外していないし、認めてもらってすらいない。
俺達は、驚きで何も言えずにいた。
「…では、お前がすべての罪を被るということだな?レイア。」
そう相棒の母さんは聞かれ、フッと揺らいだ笑いを見せると、言った。
「ええ、そうよ。別に処刑されて晒し首にしても構わないわ。」
そのあと、小声で何か言ったようだが、何と言ったのかは聞き取れなかった。
「…では、処刑は10分後。あと少しの生涯を満喫するんだな。」
そう言うと、「クロ」はその部屋から出て行った。
「「レイアさん!/おばさん!」」
みんなは相棒の母さんの周りに駆け寄る。
俺は、よろけながら立ち上がると、歩いてそこまで向かった。
「…全員集まったわね。じゃあ、私からの遺言を言うから、しっかり聞いときなさいよ?」
みんなは、しゃべるはずもなく、ただ黙っていた。
「まず、ユズちゃん。あなたは本当に偉い子ね。まだなでなでし足りないくらい。これからも、弟くんの面倒と、ここの仕事を両立させて、頑張って。」
「…はい…。」
柚葉はそのことを聞くと、静かに泣き始めた。
「次に、アッちゃん。中学生の時か、「アッくんが美容師になったら、俺が初めての客になるって今日約束したんだ!」って、武道がうれしそうに話してた。だから、お互いに、約束を達成させること。」
「…当然っす…。」
アッくんも、俯き加減にそう答えた。
「マコトくん。最期まであだ名、つけさせてくれなかったわね。まあ、それも一興って感じかしら。これからも、武道の友達でいてね。よろしく。」
「…はい!!!!!」
「声、大きすぎるって…w」
…何気に、この二人は合っていた気もする。
「かずちゃんは…地理だけ得点いいの直しなさい?もうそろそろ先生から何か言われそうよ?それと、眼鏡をよく忘れる癖と、眼鏡を壊す癖もね。…あと、「不良辞典」としての活躍、まだ期待してるわ。」
「…う…ん…。」
山岸くんも、自分の袖で涙を拭った。
長くなりそうなのでここで切ります。すみません。
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