テラーノベル
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緊張の糸が一気に切れて、思わずぷっと吹き出した。
「あっははは!なにそれ!」
「…笑うなよ。こっちは真面目に、お前の将来とかバランスとか考えて…」
「竜牙さん、そんなこと気にしてたの!?」
「……悪いかよ」
低く、拗ねたような声。
いつもはあんなに頼りがいがあるのに
自分の恋愛のこととなると途端に自信なさげで、信じられないくらい臆病になる。
その破壊的なギャップに、俺の胸がぎゅーっと締め付けられるように熱くなった。
ああ、ダメだ。
好き。めちゃくちゃ好き。
愛おしすぎて死にそう。
「ねえ、俺さ」
俺は身を乗り出したまま、真っ直ぐに竜牙さんの目を見つめ返した。
逸らさせないように、視線で捕まえる。
「竜牙さんの、そういう世話焼きなところも全部含めて大好きなんだよね」
「……は」
「見た目は強そうなのに中身は不器用で、誰にでも優しいくせに自分のことになると極端に自信なくて、大バカがつくほど鈍いところ」
竜牙さんが、完全に彫刻みたいに固まった。
よく見ると、短い髪の隙間から覗く耳の付け根が、ほんのりと赤く染まっている。
うわ、可愛い。
破壊力が凄まじい。
三十路の、自分より一回りもデカい男に対して抱く感想じゃないかもしれないけど
本当に可愛いと思ってしまったんだから仕方がない。
「だから、他の誰かじゃなくて、竜牙さんがいいの!付き合って」
「……慧斗」
「俺、絶対に後悔させないから。竜牙さんのこと、世界一幸せな男にしてあげるから!」
しばらくの間、張り詰めたような、だけどどこか甘い沈黙が続いた。
やがて、竜牙さんは観念したように
胸の奥に溜まっていた空気をすべて吐き出すように、大きく息を吐いた。
それから、本当に参ったな、という風に目元をくしゃっとさせて笑う。
「…そんな風に言われたら、断りずらいな」
「じゃあ……オッケーってこと!?」
「……ほんとに、俺みたいな男でいいなら」
その言葉が、竜牙さんの唇から零れ落ちた瞬間。
俺は弾かれたようにスツールから立ち上がった。
勢い余って、膝がカウンターの端にぶつかった気がするけど、そんな痛みはどうでもいい。
「やったあ!」
「おい、声がデカい……っ」
「ねえ待って、本当に?これ夢じゃないよね?明日起きたら『そんなこと言ったっけ?』とか言わない!?」
「夢じゃない。男に二言はないから安心しろ」
呆れたように笑う竜牙さんの手を、俺はカウンター越しに両手で勢いよく掴んだ。
包み込むように握ったその手は
やっぱり俺の手より一回り以上大きくて、そして驚くほどあったかかった。
「やったー!竜牙さん好き!」
「……っ、分かった、分かったから騒ぐな」
「うわ、何それ。竜牙さん、もしかして今めちゃくちゃ照れてる?」
「照れてない」
「嘘だ、顔赤くない?耳まで赤いよ?」
「……照明と、酒のせいだ」
「竜牙さん、今日一滴も酒飲んでないでしょ」
「あー……うるさい。黙っとけ」
子供みたいに言い張る竜牙さんをからかうと
彼は最後には降参するように、本当に幸せそうに笑った。
その、俺だけに向けられた極上の笑顔を見た瞬間
胸の奥が温かい何かで満たされていくのが分かった。
まだ始まったばかりだけど、たぶん俺
人生で一番最高の恋を掴み取ったと思う。
コメント
2件
これからどんな恋が始まっちゃうんですか!?あらすじに書いてはいるけど早く続きが読みたくて仕方がありません!
#ざまぁ